ファースト・ラブ

ー無性に与えられる愛を君へ・・・ー



「ええ・・・!?48万円、結局、全額払う手続きしちゃったの!?」

ローリィの高級車の中、マリアは驚きながらいい、

「どーしてぇ!?」

目の前に座ってるキョーコに聞く。

「うーん・・・それが・・・。」

そんなマリアにキョーコは苦笑いし、事情説明。

『まあ・・・素人のわりにはよく頑張ったと思うわ、でもね。』

『途中で社長の孫を相手にしたから無効よ!!文句ある!?』

『そうよ!例え「妹を憎む姉」の条件でラストシーンのフローラの最後の台詞までいけたとしてもね!!私達は認めないわ!!文句ある!?よって!!』

『『『絶対無効!!』』』

生徒たちはキョーコにそう言い放っていたが、彼女たちの顔は青白くて完全に負け惜しみにしか見えない。

それとキョーコが素人ではないことを気付いてないらしく、そこらへんのことは言ってこなかった。

(あ・・・あの口だけトリオ~~~!!)

だが、それを知らないマリアはわなわな震えて怒りを覚える。

「まあ・・・いいのよ。分割払いさせてもらえることにはしてくれし。これで『寄生虫』呼ばわりさせないわ。」

元々、本来キョーコは分割払いで養成所に入ることが目的だったため、彼女は納得してるが、

(お姉様・・・)

「ごめんなさい・・・私のせいで・・・。」

しゅん・・・とマリアは自分のせいだと落ち込みだすので、

「い、いいのいいの!!私はスッキリしてるんがら!!いやだわ~~も~~!この子ったらダメね~~子供なのに気遣い症なんだから!!それより、マリアちゃんは自分のこと心配しなさい。」

「え・・・?」

「パパになんてメール返すか決めたの?」

そっちのほうに話しをずらすとマリアは途端に顔を真っ赤にして

「ま・・・まだ・・・/////。」

「あら、どうして?」

「だーーって、何おくっていいのか分からないんだもーーん//////!!」

何を送るのか全くもって考え付かないと告白し、

「パパの情報量が少なすぎるわーー/////!!」

「あ~~ら、そんなのパパだって同じだったはずでしょ?お互い様よ。」

「そ、そうだけど~~/////!!」

「そうだ、いっそ、もう電話にしちゃえば?」

「え!?いきなり電話!?そんなのいや~~!!向こうが出る前に絶対に切るわーー/////!!」

「いやだ!それじゃ、ただのイタ電じゃなーい!!」

マリアの発言にキョーコは可笑しくってたまらなくなる。そんな二人を見てローリィは

(参ったな・・・本当にやってのけてしまった・・・それも)

『もし、マリアちゃんの心のシコリを取ることができたら、養成所に入れてもらってもいいですか・・・!?』

(これから、本格的に演技を勉強したいという人間が芝居を通して・・・ひょっとすると・・・俺が考えているより、彼女は俺の想像をはるかに超えた爆弾になるかもしれん・・・。)

キョーコの才能が開花した時、彼女は業界を大いに揺るがす爆弾になるかもしれないと悟った。

(この子・・・。)

それは奏江も感じており、

『だって、必ずとっさに出てくるのは、いつも聞きなれた台詞のはずでしょ?』

(あなどってたわ・・・!!そうよ、今考えれば、オーデションであの子の演技を見た時から、警戒してればよかったのよ・・・!!所帯臭さに紛らされてたわ!!とぼけた顔してなんて強かな娘なの!!)

「モー子さん!ねーー!どうして、そんな一人でガシガシ行っちゃうの~~!?」

(うるさいわね!!話しかけないでよ!!)

事務所へとついたのが、キョーコの声に完全に無視をして

(今日からあんたは私の敵よーー!!)

一人、事務所の中にへと早歩きで行ってしまった。

「あの人・・・どうかしたの?」

その後ろ姿見ながらマリアはキョーコに聞くと

「さぁ~~わかんない・・・」

(でも、なんか怒ってるのよねぇ~~。)

キョーコは原因など知らないので首を傾げる。

「・・・ねぇ・・・お姉様?」

「!?」

すると突然マリアが自分はお姉さまと呼んだのでキョーコはかなり驚いて自分を指差し、

「あのね、参考までに聞いておきたいのだけど・・・お姉様はお父様とは普段、どんな会話をするの?」

「え・・・!?」

父親など物心がつく前から居ないキョーコが聞かれて、しかも、目を輝かせて答えを聞きたがってるマリアをみると

かなり・・・いや、超がつくほど困り果て、

「ご・・・ごめんなさい・・・私・・・お父さんいないから・・・よくわかんない・・・の。」

えへへと笑って頭掻きながら言うしかなく、

ご・・・ごめんなさい・・・!私ったら知らずに・・・!

「あ・・・ううん。いいのいいの、慣れてるから。」

マリアが謝ったので、キョーコは手を振るが、

「えっと、じゃあ・・・あの・・・あの、お母様とは?

この言葉にだけは、アウトで、まるでこの世の終わりかのような表情をする。

あまりの暗くなったキョーコにマリアとローリィは言葉を失う。

「お・・・お姉様・・・も、もしや・・・お母様まで・・・?」

いないのかと、マリアは本当に困りながらも勇気をだして聞いてみると

「あ・・・ううん・・・母はいるんだけど・・・。」

「そ・・・そっか・・・」

(よかった・・・。)

彼女が微笑んで答えてくれたので、マリアは一安心する。