もしも、ヤッシーが初期設定のままだったら




「あ、キョーコちゃんだ。」


社がキョーコの姿を発見する。

「どうする?声、かけるか?」
「・・・え?」
「なんだ、その反応は・・・。」
「いえ・・・。」
蓮は不審に思った。いつもの彼なら、
『おーい!キョーコちゃーん!!』
と自分から、声をかけて、自分と接触させ、
『いや~、ホント、キョーコちゃんとはよく会うね~運命ぽいね~』
とか、にやにやしながらこちらを見てきても可笑しくないのに。

「・・・社さん・・・。」

「なんだ?」

「変な・・・ものでも食べたんですか・・・?」

「は?ここんとこ、お前と同じ物しか食ってないぞ?」

「た、確かにそうなんですけど・・・。」

コンビニのおにぎりだったり、ロケべんだったり、何も変な物は食べていない。

(なんか、変だ・・・!!)

蓮は心からそう思ったときだった。


「おい、蓮!!」

聞き覚えのある声に、ハッとして目を開ける。

「めずらしいな~、お前は転寝なんて。」

「・・・。」

「なんだよ?」

蓮が自分の顔をじっと見つめているので、社はきく。

「いえ・・・社さんだなって、思って・・・。」

「はぁ!?」

「いえ、気にしないでください。」

なんとなく、社の夢をみていたとは言えない蓮。


(ほっとしたような・・・そうでもないような・・・。)


しばらくの間、蓮は複雑な心境だったという・・・。



もしも、社長が地味になったら


「おー、よく来たな、蓮。」

「はい、おは・・・え!?」

おはようございますと言い、下げた頭を上げて、ローリィをみたときだった。

蓮は驚愕する。

「なんだ?どうした?」

「しゃ・・・社長・・・。」

「だから、なんだ?」

「な、なんか、あったんですか・・・?」

驚愕の理由、それは・・・!!

「うん?何もねぇぞ?俺はいつもどおりだ。」

平然と答えるローリィの格好が、白いTシャツに、ジーンズだったからだ。

「どこがですか!!」

思わずツッコンでしまう蓮。

「いつもの、あの目の離せなくなるような煌びやかな衣装はどうしたんですか!!それじゃなくても、いつもバスローブとか!!」

「お前、俺をなんだと思ってるんだ?」

「尊敬はしてますけど、感謝してますけど、幼いころから、変な社長だと・・・!」

「酷い言いようだな・・・おい。」

「本当のことなんですから、仕方ないじゃないですか!!」

「うむ・・・そんなに変か?」

「はい、変です!日頃の社長を知っていると逆に目立ちます!!」

「そうか~そうか~。」

うんうんと蓮の言葉にローリィは何故か嬉しそうに笑うので、

「・・・なんで、嬉しそうにしてるんですか?」

「いや~最近、椹くんたちが驚かなくて、つまらなかったんだ。だから、逆の方向にいてみようと思ったんだが、当たりのようだな。」

にこにこと笑うローリィに蓮は落胆した。

「・・・つまり・・・確信のためだけに、俺を呼んだと・・・?」

「そうだ。」

きっぱりと言うローリィに蓮はどこかの糸が切れたような気がした。

「・・・俺、忙しいですけど・・・。」

キョーコ如く、『大魔王』になって、ローリィを睨む。

「そんな目で睨んでも、俺は恐くねーぞ?」

「くだらないことで、呼ばないでください!!俺は仕事があるんです!!」

「うんなの、俺だって同じだ。」

「・・・っ。とりあえず、もう用は済んだんでしょう。俺は帰ります。」

「あ~ちょっとまて。」

「・・・まだ、なにか?」

「お前、未だに最上君とは、進んでねぇのか?」

「・・・!?お、おおきなお世話です!!」

蓮は大声でいうと、出て行く。

「・・・アイツ・・・ホント、ヘタレだな・・・。」

ローリィのそんな呟きが、セバスチャンに聞こえたとか聞こえなかったとか。