ファースト・ラブ

ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー


「何!?最上君たちが、マリアを誘い出したって!?なんと、どんな甘い誘惑にも応じなかったマリアを!?」

どうやら、あの豚の着ぐるみの正体はマリアだったらしく、ローリィが天井穴から降りながら言う。

彼の服は蜘蛛の巣だらけで、マリアを探しに天井裏まで行っていたみたいだ。

「一体、どんなネタでマリアを誘い出したんだ!!」

今までどんなので誘い出していたのかは知らないが、誘い出したネタは

「ほら、人型キャンドルもブードゥー人形も安くて1500円はするでしょう?おまけにお香やオイルまで揃えようと思うと出費が、大変なのよ。だから、私、仕方なく行く先々で色んな人に色んないらない物をもらって自分で作るの!」

マリアが座るパイプ椅子の隣にあったもう一つのパイプ椅子に座って笑顔で呪いグッズを話すキョーコ。

「あら、でも私、手作りのほうが断然素敵だと思うわ!!キャンドルもブードゥーもシーズンがあってめんどくさいし、この世に2つと同じものが無いなんて貴重でしょ!?何よりあなたの手がけたものは隅々まで念がこもってて最高だわ~~。」

ぱんっと手を合わせて、マリアも笑い、彼女を褒めて

「いや~~ん。自分でつくったものがこんなに褒められるなんて桂向き以来~~~。」

褒められたキョーコは照れる。もうすっかり仲良しになっている二人である。

(楽しそうね・・・一体、何の話をしているのか私にはさっぱり分からないわ・・・。)

スカーフを再び頭に巻いた奏江は、そんな風景に二人が何について話しているのか分からずにいる。

彼女が呪いグッズと縁がないために。

「ねぇ・・・どう思う?アレ・・・。」

そう言うのは、キョーコ達をみている生徒の三人の中の一人で、彼女はもう一人の生徒に聞く。

「アレって言われても見ての通り、あの子、あのガキを手なずけちゃったみたいよ。」

「・・・ってことはさっき、ちらっと聞いたあの社長との話、本当になるのかしら。」

「入所金・授業料、全面免除でここへ入るって話?」

「そう。」

「ちょっと待ってよ。なんでもう事務所に入れる人間がわざわざこっちへ逆流してくるワケ?どういうつもり!?」

そんな会話を繰り広げると三人はムカつき、

「やっぱり・・・頭にくるわね・・・!!ラブミー部・・・!!」

そう言葉を吐いた。

「私ね。あなたとは一度じっくりお話してみたいと思ったの。」

三人がキョーコにムカついてることなんて知らず、マリアはそう言うと

「え・・・?」

「だって、初めて会った時、感じたんだもの。あなたから、私と同じ波長を・・・。

ふふふ・・・と笑う。そんなマリアにキョーコはどう反応していいのか分らない顔をしたが、

「だから嬉しいわ!あなたが思ってた通りの人で!!」

マリアはパイプ椅子から降り、

「ねぇ!よかったら、あなたの蓮様人形を私に一人譲ってくださらない!?」

キョーコの手に自分の手を重ねておねだりをしてくる。

「どうして・・・?」

あんなものが何故欲しいんだろうと思ったキョーコは聞いたが

「決まってるわ!!蓮様が私の虜になるように、あの蓮様人形に呪力を加えるの!!恋愛成就のお香をたいて・・・!」

《マリアちゃん、結婚しよう。》

《ええ、いいわ。でも、後9年待って。私まだ7歳よ。》

顔を真っ赤にしてマリアの妄想の話を聞いた瞬間、血の気が引いて

(いやだ・・・!!久遠を変態にしたくない・・・!!)

とっさにそう思うが、

(あ、でも、どちらにせよ、本名じゃなきゃ効かないだ。なんだ・・・効くのは本当に敦賀蓮って名前の人間だけだわ。)

冷静になるとほっとする。だが、ここで一つ疑問が浮かび

「でも、マリアちゃん・・・そう言う方面なら、人型キャンドルでもいいんじゃないの?」

(こっちも本名を彫らないと意味ないけど・・・。)

意味がないと分かっていながらも、聞いてみる。キョーコの言う、人型キャンドルというのは、背中に対象者の名前を彫り、復讐から恋愛成就まで、願望に合わせたオイルを塗りこみ、七日間かけて燃やすキャンドルの事。

「ダメよ・・・あんなもの、全然効かないわ。」

聞いてみるとマリアの表情に影ができ、

「何ひとつ現実は変わらなかったわ。きっと、私ひとりの思いじゃ弱いのよ・・・。」

とても悲しい表情で答えた。そんな表情をみたキョーコは

(マリアちゃん・・・)

「でも・・・どんな形であれ、人形に元々強い思念が込められていれば違うと思うの。だから、お願い・・・私に、あなたの力を貸してちょうだい・・・。」

(もしかして・・・?)

あることが浮かんだが、

「マリア。」

そこでローリィが参上し、キョーコの横にへと立っていたーー。