ファースト・ラブ

ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー


その頃、キョーコは事務所でラブミー部の依頼で荷物運びをしていて

「うふふふ。」

(ああ、嬉しい・・・!!今日からラブミー部員は私一人じゃないんだわ~~!!)

機嫌がとてもよく、女性たちに笑われていようが、

(そうよ、これからは!!どんな激しい罵倒も二人で分かりあえるのよ!!ああ・・・この気持ちを分かってくる人がいるなんて・・・!!素敵!!)

二人なら恥ずかしくないと思っていた。けれども、プライドが高いのだろう奏江は、スカーフを頭に巻き、サングラスをつけて荷物運びをしていたが、笑われていることに耐えられなくて、笑ってる女性たちを振り返って睨み、

私はラブミー部員じゃないわよ!!ってさっきから何人にも言ってるのに、もーー!!そんな恥ずかしい名の持ち主はこの子だけよーー!!

キョーコを指差して言い放ったが、

「相方でーす。」

まるで芸人のようにキョーコが奏江を紹介するので、

「相方ですって。」

「やっぱラブミー部、お笑い部門って本当なんだ。」

彼女たちはそう話しながらどこかへといってしまう。

「ち・・・違ぁああああううう~~!!誰か信じて私の心の叫びを~~~!!

そんな彼女たちを見た奏江は座り込んで、頭を抱えながら訴えたが、

無駄よ・・・モー子さん・・・

ふふ・・・ともう既に事を諦めているキョーコは腕組して笑い、

「あなたの叫びなど、人々の胸に触れることもできないわ、この、ラブミーユニフォームの前ではね・・・。」

体を優雅に揺らしてツナギを引き立てながら、

「一瞬でも目に映れば最後・・・人々の脳はこのツナギに侵食されるのよ・・・。」

ええ、誰であろうとね・・・と今まで罵倒されまくったキョーコは語った。

「う・・・う~~~!脱いでやるーー!!」

ついに我慢ができなくなった奏江はツナギを脱ごうとしたが、体がすぐに動かなくなる。

か、体が動かない~~!!プチフリーズ!?いやーー!!何かにとりつかれてるみたいーー!!

とりつかれてるみたいだと奏江はいうが、実際にとりついているのだ。怨念キョーコが。

「ねえ、モー子さん。私たち芸能人になるためには欠けてる気持ちを育てなければいけないのよ?だから、一緒に頑張ろう?

ね?」

「ふ・・・ふん!こ、こんな部に入って何の利益があんのよ!馬鹿にされるわ、笑われるわで、いい事なんてこれぽっちもないわよ!!私は、誰もが羨む輝かしいスター街道を通る予定なのよ!!だから、こんなところに入っても、汚点にしかならないわ!!プライドも許さないのよ!!」

「そ、それは・・・。」

奏江の言葉にキョーコは否定できない。恥ずかしいのは彼女も同じなので。

「この際、多少回り道したっていいわ!事務所に直接アタックしてダメなら、LME直結の養成所に入った上で事務所に引き抜かれデビューという手を狙ったほうが・・・。」

ぶつぶつ言う、奏江にキョーコはある疑問を抱いて、

「ねぇ・・・どうしてそんなにLMEにこだわるの?そんな遠回りしてまで。」

「え゛!?」

聞いてみると奏江はぎく!!とし、

「大手の事務所でデビューしたいなら、アトカキだってあるのに。私は死んでもいやだけど。」

「そ・・・それは・・・。」

答えるのに困っていた頃、椹がキョーコを見かけて

「最上さん!ちょうどよかった!!」

「どうかしたんですか?」

「ちょっと悪いが、今すぐにいってもらいたいところがあるんだ!」

「え・・・?」

椹の言葉にキョーコは首を傾げると彼は今すぐいってほしい場所を話した。

「ええ!?LMEプロダクション付属養成所ーー!?ど、どうしてですか!?」

場所をきいたキョーコは驚いて聞いたが、

「う~ん・・・詳しい事情はよくわからんのだが・・・実はここ数日、毎日のように養成所に現れてはレッスンや舞台稽古の邪魔を

する、ある問題児がいてね・・・それがついに今日、イタズラが過ぎて怪我人を出してしまったらしく、さすがの社長も今度ばかりはビジリと叱るつもりだったんだが、どうにも本人が捕まらなくてね。」

椹は唸って答え、話の中にローリィの話しが出てきたため、

「あの・・・どうして社長さんが・・・?」

またキョーコは聞くと

「ああ・・・その子、社長のお孫さんでね。確かあの子に無理やり張られたプリクラが・・・」

服のポケットから名刺入れを出してキョーコに見せる。それをみたキョーコと奏江はびっくりした。

(この子ーー!!LMEオーディションの時の!!)

なぜなら、プリクラに写った椹のとなりに作り笑いの椹とは対象的に笑顔のマリアが写っていたからだ。

「それで現場から社長直々の電話があって、君に来てもらいたいって・・・この子の事で、どうも頼みたいことがあるそうだ。」

驚いているキョーコたちのその側で椹は言葉を続けたので、え・・・とキョーコと奏江は言いたそうな顔をした。