ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
「なに?彼女がきたって!?」
その頃、社長室で荒い息を立てているローリィ。
どうやら、剣の腕試し中でハンガリーの剣の達人もいる。
「そうか、ついに!!」
(・・・何をしてるのだ。この人は・・・おとなしく自室でこもってると思えば・・・。)
キョーコが来た事を伝えにきた椹はローリィたちをみてそう思う。
「よーーし!!いよいよニューセクションが発動する時がきたぞ!!その名も!!」
ローリィは剣をくるくると回し、鞘にしまい、
「ラグビー部・・・?」
うまく反応できないキョーコは蓮を見てそう発音する。
「・・・違う。ラブ、LO・VE・ME部。」
キョーコが訊き間違たため、蓮は言いなおす。
〔なに・・・?その恥ずかしいネーミング・・・!!〕
それをちゃんと訊いた怨 霊キョーコは噴出し、
〔ちょっと訊いた!?ラブミー部ですってよ!!〕
〔『私を愛せ』!?『私を愛して』って意味よね!?〕
〔一体、なにする部よ~~~~!!バッカみたい~~~!!〕
次々と仲間が笑っていく。
「その部は文字通り人に愛される活動する部だ。その部に入った人間は常に他人に愛される様な心のこもった仕事をしなけ
ればならない。」
〔きゃああああ、やっぱり『私を愛して』よーーー!!〕
〔ラブミー部ーー馬鹿丸出しーーー!!〕
蓮の説明を聞けば聞くほど、怨霊キョーコは笑っていったが、
「なんだか、面白そうですねー。その新しいセクション一体どんな人が入るんでしょ。」
他人事のようにキョーコが笑ってそう言うと
「・・・だから、今、君がやってるのがラブミー部の仕事だよ。」
その蓮の言葉に怨霊キョーコの動きが止まり、キョーコもマヌケた顔をする。
そして、キョーコは今まで椹たちの言葉を思い出してみるとそのマヌケた顔が青くなって自分を指さし
「え・・・?」
「『ラブミー部』はあっさりと切り捨てるには惜しい素材だが、重要なものが欠けている。そういう人材の『欠けている部分』を
育てるために社長が作った。ありがたいセクションだ。その『ラブミー部』の第一号生に選ばれたのが、君だよ。」
引き付けられた真実に思わず荷物をキョーコは落とし、
(ラ・・・ラブミー部!!いやああああああああそんな部員ーーーー!!!)
心の中で果てしなく絶唱する。
「ラブミー部で優れた成績を残すと事務所が前面プロデュース、メジャーデビューするさせてもらえるらしいんだけど。」
「・・・!!いい成績って!?どうやって出したらいいですかーー!?」
「だから、心のこもった仕事をするんだよ。君に仕事を頼んだ人に対して何をどうしたらその人に喜んでもらえるのかとか、
君は常にその人の第一に考えた仕事をこなす。すると相手は君に好感をもってこういうポイントスタンプを押してくれる。って
システムだ。」
そう言いながら、蓮は自分の手のひらにスタンプを押し、キョーコに見せる。
手のひらには『たいへんよくできました、100点満点』と書かれ、ちゃんとデザインされているスタンプが押されている。
「ってことは、つまりそのポイントスタンプをたくさんあつめれば・・・」
(デビューできるーーーー!?)
ようやく頭で理解したキョーコは表情が晴れたが、
「まーーー!!ちょっとあんた何してるのよーー!!私の大事な荷物放り出してーーー!!」
上尾が逆戻りしてきて、その声にやっとキョーコは荷物を落としていたことに気付き、
「え?!あ!!」
「その上、何!?敦賀君に荷物持たせてるってどう言うことーー!?」
「え!?あ!?」
荷物を拾っていたが、蓮に目線を戻す。
「信じられないなんて子なのーー!?最っっ悪!!」
それが上尾の逆鱗に触れたらしく、何かを頬に押された。
「あ。」
頬には『ダメダメです、ー10点』と書かれたスタンプがくっきりと押されていて、
「もう、あなたには頼まないわ!!敦賀君いきましょう!!」
プンスカと怒り、自分の荷物をもっている上尾を見ながら、キョーコはそこに手を当てる。
(え・・・いや・・・そんな・・・)
何がどうなっているのか理解していないのに、頬に当てた手を離してみるとようやく何のスタンプが押されたのかわかった。
(だって・・・荷物は・・・久遠が・・・やさしい微笑みを見せてくれて、それで奪い返すのもなんだから・・・)
手が震えるのをわかりながら、キョーコは蓮をみると彼はにっこりと笑って
「自業自得。自分が受けた仕事は自分で責任もってやらないからだよ。ああいう時はどんなに甘い言葉で手をさし伸ばされ
ても、ちゃんと断らないと。」
なんていいだす。その言葉にキョーコは目を見開き、顔を再び青くして、蓮は
「ま、これからはこれ以上ペナルティーが増えないように心して頑張るんだね。」
そう言いながらキョーコに背をむけ、歩き出す。
キョーコはそんな彼の後ろ姿を見ながら、久遠の狙いが分かったのか、拳を作り、歯切りしてその背を睨みながら
「そう・・・あなたは『そう』くるのね・・・!!じゃあ・・・私は・・・『敦賀蓮』を嫌ってやるーー!!」
最後のほうを社内に声が響くほど、叫んだ。