ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
その箱は幾つもの幾つもの鍵がついていて、決して自分では開けられない開かずの箱。
誰しもそんな箱をもって皆は生まれていく。
そして、もうすぐ、キョーコが持つ開かずの箱が開こうとしていた。
「キョーコちゃん、一体どこにいてんたやけ!?」
旅館へと帰らなかった翌日、ショータローが学校にいっている間を見計らって
キョーコは旅館にへと帰ったが、女将さんに怒られた。
「す、すみません。」
謝る、キョーコ。
「無事でいたからいいものの、一応、私たちはキョーコちゃんをよそ様から預かってる身なやで?
もし、キョーコちゃんに何かあったら、私たちに責任が問われるんや。せやから、こんなことはもうやめておくれ。」
「すみません・・・。でも、私、もうここには帰ってきません。」
「なんやて!?」
「もうここには居られないと思いましたから・・・。」
「なんでそないやこと・・・!!」
「もう、私は子供じゃありません。一人で大丈夫です。だから、もうここには居られません。」
そう言って微笑むキョーコ。その笑みに女将はもう彼女を止めることはできないと悟った。
「・・・それでキョーコちゃんはあの誰もいない家で一人で過ごすつもりなんかい?」
「そう・・・ですね・・・。」
一瞬、キョーコは罪悪感を感じて戸惑った。あそこには帰るつもりはないから。
「そうかい・・・何いっても出て行くんだね・・・。キョーコちゃんの好きにし。」
「ありがとうございます、女将さん。」
お礼をいい、キョーコはぺこりとお辞儀をし、
「それじゃあ、荷物をまとめてきます。」
借りていた部屋にいって、自分の必要品や服などをバックにつめていた。
つめていて、見つけたのは、アルバムで、それを開き、写真を見ると写ってるのは、自分とショータロー。
幼稚園のものから、今までのがずっとある。
それがキッカケでキョーコは記憶の中の思い出を引っ張り出した。
『重い~キョーコ、もってくれよ~。』
遠足の時、ショータローはそう言って、
『うん、いいよ~。』
当時のキョーコは嫌がる様子もなく、彼のリュックを持つ。
彼女は今でも覚えている、あのリュックの重さを!!
(考えてみれば、ああいう時、必ず私は荷物を持たされていたわ。何故、気付かなかったの!?普通は男の子がもってくれるはずでしょ!?その証拠に久遠は私の鞄をいつも持ってくれたわ!はっ・・・!!そういえば、あの時も・・・!!!)
考えれば考えるほど、ショータローが自分勝手でナルシストだと気付いていく・・・!!
(そもそも、私がいじめられていたのは、ショーちゃん・・・いえ!ショータローのせいじゃない!私だけ馴れ馴れしくするから、それで迫害を受けていたのよ・・・!!ああ、それに早く気付いていれば、友達ができたかもしれない・・・!!)
そして、自分のいじめられていた理由に直面した時、キョーコの中で潜んでいた開かずの箱の鍵が一個外れた。
(そして、あいつは私を子分扱いにしてきたのよ!!)
そう思った瞬間、全ての鍵が外れていった。
「くくくくっ・・・・。」
突然、笑い出す、キョーコ。そして、箱の中に居たものが飛び出した。
「おっほほほほほほほ~」
高笑いとともに出てきた、キョーコの怨念の塊。
〔憎い~あの男が憎い~〕
〔可愛さ余って憎さ100倍よ~〕
キョーコの怨念・・・怨霊キョーコがそう発言する。
「馬鹿みたい!!あんな男が好きだったなんて!!でも、もう関係ないわ!!だって私は・・・!!」
世にも怖い顔で言ったところで怨霊キョーコが引っ込み、
(久遠がいるもの・・・。)
さっきの怖い表情はどこにへやら、小さいがま口財布を出して中に入ってるものを見て微笑む。
それは紫かかった碧い石。
『今の、まほうだよ。』
かつて、久遠が自分にくれたもの。それから、キョーコにとってこれはかけがいのないものへとなった。