ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
「二名様、入りマース。」
係りがそう言って、ではお楽しみくださいといいながら、キョーコと久遠を中へと入れた。
「きれーい!」
中に入ったキョーコは目を輝かせた。
何故なら、部屋全体がプラネタリウム風になっていたからだ。
「うん、綺麗だ。」
キョーコの感想に久遠も同感する。
「どうやってやってるのかな?」
「機械を借りてやってるんじゃないのかな。こんなに綺麗なんだし。」
「そっか。そうだよね。」
久遠の説明にキョーコは頷いて、二人は奥にへと進んでいく。
「そういえば・・・」
急に立ち止まる久遠。そのため、頭に?マークをつけてキョーコは首を傾げると
「今まで、付き合いだして俺達デートらしいデートしてなかったね。」
なんていいだす。
「そ、そういえばそうかも・・・。」
確かにデートらしいことはしていなかった為、キョーコは納得する。
「じゃあ、これが恋人同士になって初めてのデートだね。」
微笑んでそう言う久遠。
「そ、そうだね/////。」
キョーコは頬を染めて俯くと久遠の表情が愛しそうに彼女を見つめ、
手をキョーコの頬へと伸ばし、触れる。
そのため、ピクっ・・・と一瞬動いたが、キョーコは自分から顔を上げた。
上げるとそこには熱く視線を送る久遠がいて、
「キョーコ・・・。」
自分の名前を呼ぶ。
それを最後に、久遠はキョーコを見つめたまま、彼女にキスをしようとした。
だが、その瞬間、誰かに引き剥がされる。
驚いて、キョーコは引き剥がした人物を見た時、もっと驚いた。
「ショーちゃん・・・!?」
「・・・!!」
久遠も彼をみて驚く。噂の「ショーちゃん」を見たからだ。
久遠は知っている。彼がキョーコの初恋の相手だと。
ショータローは久遠を良くみて睨んだ後、キョーコの手首をすぐ掴み、
行くぞ!と言って引っ張っていく。
だから、キョーコは痛い、離して!と訴え、
「久遠!」
久遠の救いを求めると久遠はすぐさまにキョーコを捕らえているショータローの腕を掴む。
それもかなり強く。だから、ショータローは痛がって手の力を緩めてしまい、その間にキョーコは彼の手から逃れた。
逃れたキョーコはすぐに久遠の後ろに隠れ、久遠は目で人が殺せるくらいショータローを睨む。
この時、キョーコはショータローが怖いと思っていた。
何故かはよくわからない。だが、本能がいっている。
これ以上、近づくなと。
「・・・っ!」
キョーコに逃げられたショータローは悔しそうにし、
久遠の睨みを見た後、ちっと舌打ちして、どこかに行ってしまった。
「・・・大丈夫、キョーコ。」
さっきの表情はどこへにやら、心配そうに久遠はキョーコのほうを向いて聞く。
「うん・・・。」
手首は痛いが、大丈夫なのは確かなので頷く。
(・・・知らない・・・あんなショーちゃん・・・知らない・・・。)
でも、ショータローの先ほどの行動に恐怖を抱いて、キョーコの不安が募る。
すると温かい何かに包まれた。
「・・・もう大丈夫。もう大丈夫だから。」
その正体は久遠。すっぽりとキョーコを腕の中に収めている。
「うん・・・。」
その温かみに恐怖はとけ、キョーコは安心した。
「でも、もうあそこには帰らないほうがいいな・・・。」
キョーコを抱き締めながらそういう久遠。
「え・・・?」
だから、キョーコは久遠の顔を見ると
「もうあそこには帰らないほうがいい。いやな予感がする・・・君をあそこに帰させたら・・・。」
不安そうに久遠はキョーコを強く抱き締めなおした。
その言葉にキョーコは大丈夫だとは言えなかった。
何故なら、同じ事を感じていたから・・・。
その日、キョーコは旅館には帰らないことにした。
というよりは帰らないほうが得策だと判断した。
「はい、キョーコ。」
そう言って、缶のお茶をキョーコに差し出す久遠。
「ありがとう。」
キョーコはお礼を言って、それを受け取り、手の中に缶を収める。
今、彼女が身を置いている場所は久遠の宿泊しているホテルで、久遠が本名でもう一つ部屋をとってそこにいる。
実家に帰っても、危ないということで、ここにきた。
「キョーコ。」
名前を呼んで、久遠はキョーコの前に膝たちする。
「明後日になったら、俺と一緒に東京にいこう。」
「え・・・。」
「もう、君をここに置いていけない。」
久遠は真顔でキョーコにそういい、キョーコはただ目を瞬きして彼の顔を見つめてるだけ。
「東京・・・?」
「うん・・・それで時がくるまで俺のところに居れば良い・・・。」
「久遠・・・。」
「行こう、キョーコ。東京に・・・。」
その久遠の台詞ははっきり言って駆け落ちの誘いと変わらなかったが、
キョーコは頬を染めるとゆっくりと頷き、その返事に久遠は安堵した表情をして、
頬に手を添えると顔を近づけた。久遠の行動はキョーコは少し驚いたが、ゆっくりと目を閉じ、彼のキスを受け入れた。