もうすぐ小学生になる。
いろいろと準備するものがある中で、
割と最初の方に気になるのが、
ランドセル選び。
印象深い成長イベントの一つだ。
自分が小学生だった頃とは違って、
カラフルな彩りが店頭に並び、
価格控えめなシンプルなものから、
細かく作り込まれた値の張るものまで、
選び始めて、
さまざま見れば見るほど、
何を基準に選べば良いのやら……。
これから書くのは、
今は中高生になる、
うちの子たちが、
もうすぐ小学生になる、
という時の随分前の話。
一生懸命取り組んだものの、
親として、
あまり上手に、
向き合えなかった記憶が残るので、
心の整理も込めて、
振り返る。
特に、
良くなかったなぁ……。
と思うのが、
わが家の女児2人の、
ランドセル選びの事。
上の子の時、
ランドセル選びにおいて、
ひとつだけ、
どうしても譲れないと思っていた条件が、
当時、
話題になり始めていた、
一般的な、
A4クリアファイル対応のものより、
ひと回り大きい、
A4フラットファイル対応のものにする、
ということ。
まだあの頃は、
A4フラットファイル対応サイズは、
少数派だったので、
その条件をクリアしているものの中から、
選ぶことにした。
いろいろと見ていて気になったのが、
『フェリー・デ・エマイユ』の、
いちごモチーフのハートの刺繍がかわいいランドセル。
構造を工夫して、
外寸そのままで、
内寸がA4フラットファイルに、
対応しているところが、
何よりも魅力的だった。
加えて、機能重視で、
シンプルになりすぎるのではなく、
かわいいデザインが両立しているところが、
自分の思い描くイメージに、
よりピッタリだったのだ。
とは言え、
ネットであれこれ探しただけで、
実物を見ることもなく、
購入するのには、
金額も大きく、
失敗したくなかったので、
展示会に行ってみることに……。
当事者の娘を連れて、
家族みんなで、
ルンルン気分で、
ランドセル展示会会場へ向かった。
たくさん並ぶカラフルなランドセル。
このメーカーはどれも刺繍がかわいくて、
次から次へと目移りしてしまう。
それでも、
A4フラットファイル対応のランドセルは、
1シリーズしかなくて、
4色展開。
ピンクが2色と、
ボルドーと、
サックス。
ご時世で、
カラフルに並べられた商品見本を前にしても、
6年間使うものなのだから、
雰囲気に乗せられずに、
長く飽きのこない、
結局は定番が良いんじゃないか。
というのが当時の私の考えで、
定番の赤に近いピンクで、
良いんじゃないか。
というところまで、
私の中では決まっていた。
色は写真じゃわからないこともあるから、
2つあるピンクからは、
実物を見てから決めれば良いや。
そんな感じだった。
一方の娘は、
たくさん並んだランドセルの見本を前に、
最初は、
さぁ、選ぶぞ!!って上機嫌だったのだけど、
親が、
「あぁ、あそこにあるやつかなぁ……」って、
並べられた商品を端から見ることもなく、
目的のものを目指して行こうとしたものだから、
子どもが好きなものを選ぶ体をして、
母親の意見がかなり固まっているのが、
一瞬でわかったみたい。
わざと親が向かおうとしている場所とは、
全然違うところにある、
いろいろなランドセルの試着をせがみ、
次々と背負っては、
「これ好き〜♡」
「これ、かわいい〜!」
みたいな言葉を連発。
本当に心からそれが良いと思っている風でもなく、
親の顔色を見つつも、
親の言いなりにはなりたくないと、
精一杯の抵抗を見せてる感じだった。
試着は、どれでも好きにさせてくれるけど、
買うのはどうせママが決めてるんでしょ。
かなりの時間を使って、
存分に試着をして、
自分が何を言おうとも、
この親は変わらないと悟ってか、
ようやく目的のランドセルの元へ、
近づいてきた。
もう、この娘には、
どんな綺麗事で誤魔化そうとしても通用しないのが、
ひしひしと伝わってきたので、
こちらも直球で結論を伝える。
「ママはこれが良いと思うんだけど」
ほら、決まってるじゃん。
娘が不機嫌そうな顔で、
親が選んだその一点を見つめる。
あまり乗り気でない娘に、
試着させ、感じをチェック。
構造もしっかりしていそうだし、
刺繍などの飾りも丁寧な作りで、
大きな問題はなさそうだ。
「どうかな……?」
娘の機嫌が、
あまりよろしくないのはわかっているけど、
話を進める。
不服そうな態度はありありしているものの、
下手に親に逆らうと、
ランドセルすら買ってもらえなくなるかもしれない。
くらい思ったのかな?
小さく頷いた。
この娘は、もともとこだわりが強い方ではなく、
割と何でも受け入れるタイプ。
普段から、
できる範囲の選択はさせるようにしているし、
親の選ぶものなら大丈夫だろうと、
思ってくれるくらいの信頼関係は、
成り立っていた。
この時の問題点は、
嫌なランドセルを一方的に押し付けられているというよりも、
「あなたはどんなの好きなの?」
みたいな雰囲気で会場入りしておきながら、
たとえ本当に好きなものがあったとしても、
よっぽどのことがなければ、
選ぶ商品は決まっているんだけどね。
という親の態度だ。
なんとなく、
好きに選べる雰囲気に呑まれて、
親の意見を後出しにしたのが失敗だった。
ほらあなたもこれが良いと思うわよね。
なんて、
親が持って行こうとしようとしているのを、
見抜いて、拗れた結果なのだ。
たまたま、
考えていたランドセルには、
あまり違いのない2色のピンクが用意されていて、
私は、二つを見比べて、
こっちで良いんじゃないかと決めかけた時、
娘が、
もう一つのピンクを指さして、
「私はこっちの方が良い」
と言い出した。
本当に、こっちの色の方が良いと思って言っているの?
ささやかな抵抗の続き?
本心は分かりかねる。
ここは素直に受け入れるべき?
「え?本当にこっちに決めちゃって大丈夫?」
娘は頷くけど、
肝心のランドセルの方は見ていない。
「6年間使うものだよ、良く考えてる?」
下を向いたまま頷く。
どうしたもんか……?
困っていると、
パパが、
「色くらい本人が良いってのにしてやりなよ」
と言ったので、
娘の意見で落ち着いた。
娘が本当に、
その色が良いと心から思っていたかどうかは、
最後までわからずじまいのままだったが、
どちらのピンクも綺麗で、
良い色だったので、
揉めるようなことでもなかったのもあるし、
全てがママの思い通りでなく、
本人の意見が一つでも通ったことで、
娘の中では、
納得して済んだ様子だったので、
そこには誰も触れない聖域となった。
一応その後、
帰宅してから、
それまで私が見比べていた、
他のランドセルの情報なんかを、
娘に見せて、
ママが欲しいと思う機能と、
かわいいと思うデザインが両立しているから、
このランドセルが良いと思う。
と言う話をして、
娘も、
あれは確かに可愛かったと、
納得したので、
ネットで注文を済ませた。
それがGW頃のこと。
注文後、入学式ギリギリの3月末まで、
商品が来なかったので、
何かの間違いで届かないなんてことが、
あったらどうしようなんて、
ヤキモキしたが、
予定通りにきちんと届いて、
品物は大満足のクオリティだった。
もちろん、
到着時期ことは注文時に明記されていたことで、
早く届いても、
置き場に困る人もいるから、
そういうサービスなんだと理解はしていたのだけど、
すぐ届かないネット注文は、
無駄にドキドキしてしまうのもどうしようもない。
まぁ、兎にも角にも、
購入時の拗れたやり取りなんかは、
ピカピカのランドセルが手元に届く頃には、
娘の方はあっさり忘れてくれて、
お気に入りのランドセルとして、
6年間大切に使わせていただいた。
6年生の図工の授業で、
卒業を意識して、
『これまで使ってきたランドセルの鉛筆画を描こう』
というのがあって、
かわいい刺繍が絵のアクセントになって、
なかなか良いできで仕上げてきた。
ステッチなどが特徴的だった子は、
描きやすかったみたい。
高学年になってからも何度か、
「やっぱこれかわいいや」
なんて、
ランドセルに満足している様子を、
ふと口にすることがあったので、
購入時の経緯はどうあれ、
最初っから最後まで、
娘にとって大好きな、
自慢のアイテムになってくれたことは、
幸運だった。
ここまでが、上の子の時の話。
本当は、
勢いで下の子の分まで、
書いてしまいたかったが、
すっかり長くなってしまったので、
下の子の時にやらかした、
ひどい話は次に書くことにする。
↑娘が選んだ色。
↑私が選ぼうとしていた色。