性別の異なる子育てだったので、
いろいろなおもちゃとも、
出会ってきた。
今回は、
その中でも、
わが家の中でだけ、
絶大なインパクトを残した、
一つのおもちゃのお話。
もう10年以上前のこと。
今はもう売っていない、
おもちゃの名前は、
『起きろ!朝いち番』
子どもの早寝早起きを促す、
目覚まし玩具。
当時4歳だった息子が、
『太陽戦士』の卵に選ばれて、
『真の太陽戦士』になるべく、
目覚まし代わりの呼び出しを受けて、
早起きして、
約一月の修行のプログラムに取り組んだ。
毎朝、
親がセットした時間に、
呼び出し音が鳴り、
起田朝一(おきたあさいち)司令官からの、
指令が始まる。
「目覚めよ!
太陽戦士チャレンジャー!!」
子どもが飛び起きて、
枕元に置いておいた、
戦士のヘルメットと、
リストバンドを装着して、
リストバンドのボタンを押すと、
一日5分程度の、
プログラムが始まる。
太陽の光を浴びて、
大きな声で1〜10の数を数えたり、
ヒキゴモラー(引きこもりの原因となる怪獣)
などと戦うための、
必殺技を練習する。
毎日指令の内容が変わり、
何日かごとに、
太陽戦士チャレンジャーから、
真の太陽戦士まで少しづつ昇進する。
一つ一つの行動を、
逐一認めて誉めてくれて、
暗号を解いたり、
紋章を集めたりと、
子どもが飽きない工夫がいっぱいだ。
うちの子には効果絶大で、
親にしてみれば、
指令の最後に、
「働かざる者食うべからずだ!」
と、お手伝いを促してくれると、
「僕は太陽戦士だから……」
とか言いながら、
率先して人を助けたり、
きびきびとやるべきことを、
頑張る姿が見れたりして、
ただただありがたいに尽きる状態だった。
司令官の言葉に、
元気よく「ラジャー!!」と返し、
使命感に満ちた瞳で、
てきぱきと動く息子の姿もさておきながら、
起田司令官が、
「今日は太陽の中心に来ている…‥暑い!!」
などと、
あり得ない設定だったり、
数を数えるのも、
ある日、
日本語じゃなくて、
英語やドイツ語で数え始めて、
へぇ〜〜勉強になるかも。
と思ったら、
そのうち、
スワヒリ語だのマダガスカル語だの……って、
ええっっっっっ?!
な展開だったり……。
真剣な子どもの横で、
笑っちゃいけないけど、
堪えようとすればするほど、
ぷるぷると、
腹筋崩壊の日々で、
もう、
楽しくて楽しくて………。
それまでねぼすけだった息子の、
やればできる!
というのを引き出してくれて、
うちでは、
家族を巻き込んでの、
大騒ぎだったのに、
外では、
知る人ぞ知るどころか、
本当に全く知られていないのも、
驚きだった。
朝しか反応しないおもちゃなので、
人にやって見せることもできなくて、
いくら楽しさを伝えようとしても、
否定されることはないけれど、
それ以上の盛り上がりも全くなく、
フラストレーションは溜まるばかり。
もう、こうなったら、
知らない誰かでもいいや!
って思って、
ネットで、
こんなおもちゃあるんですけど、
誰かやってる人いませんか?
って呼びかけたけど、
子どもが真の太陽戦士になるまで、
結局、
やってます〜〜!とか、
やってました〜〜!
って人が一人も現れることもなく、
梨の礫で終わった。
うちは今のところ、
3人とも、
朝は自分で起きて、
学校に行けていて、
その手の悩みを持った事はない。
このおもちゃのおかげ、
とまでは言い切らないけど、
良い時期に、
早起きを楽しいものにしてくれた効果は、
あったと思っている。
早起きってテーマは良いと思うし、
ちゃんとしたおもちゃだったので、
世に知られる事なく、
消えてしまったことには、
残念な気持ちが残る。
子どもにうまくハマるには、
タイミングとか、
与え方とか、
子どもの気質とか、
いろいろあるのかな。
というのは確かにある。
自分も、
このおもちゃと出会ったのは、
見切り品コーナーの投げ売りで、
ダメ元の軽い気持ちだったので、
探して手に入れたわけではなかったから、
たいそうな事は言えない。
けれど、
かえすがえす、
もう少し、
人に知られていても良さそうなのに。
という気持ちは拭えない。
一定数、
需要はあると思うのにな……。
良いと思うおもちゃが、
名品と言われているとは限らない。
このおもちゃを開発した人にとっては、
もしかしたら、
広く知られることのなかった、
失敗作になってしまっているかも知れないけど、
私は、
このおもちゃに出会えて感謝しているし、
諦めずに開発を続けていたら、
日の目を見た日も、
あったんじゃないかと、
思えてならない気持ちは、
昔も今も変わらない。
とてもいろいろと考えられていて、
本当に良いおもちゃだった。
子どもが喜ぶ顔をイメージしながら、
一生懸命情熱を込めて開発してくれた事は、
使えばわかる。
このおもちゃで、
とても楽しい日々を、
送らせてもらいましたよって、
開発に関わった方にでも、
ひょんな事で、
伝わったら良いなと思って、
メッセージを送らせていただく。
古いものなので、
参考まで。