うちの息子が、
幼児だった頃の話。
とにかくじっとしていられなくて、
ちょろちょろ動き回るのが大好き。
道中だって、
大人の横を、
ただ歩いているようなことはなくて、
道の縁に段差があれば、
必ず登り、
飛べそうな距離なら飛んで、
高いところからも果敢に飛び降り、
ぶら下がれるところがあれば、
ぶら下がる。
たとえ、
転んでも、
落っこちても、
うまい具合にころころ転がって、
砂まみれになることはあっても、
不思議とケガはしない。
周りは見えていて、
自分の身が危なくないように、
判断しながら動けているようだったし、
人に迷惑をかけなければ、
押さえつける必要も感じないので、
母は、
こんな子なんだなぁって、
見守る立ち位置だった。
ふとした立ち話などで、
親が立ち止まったところで、
近くでできることを、
常に探して、
動き回っているものだから、
話し相手からよく、
「元気ね〜〜」
って言われる。
必ずしも好意的とも限らないので、
手放しで肯定する返事は合わない。
たまたま車止めのポールに、
ぶら下がっていたので、
「うちの子サルだから〜〜」
と言い始めたのがきっかけで、
この子についての似たようなコメントには、
「うちの子サルで〜〜」
なんて言葉を、
反射的に返すようになっていった。
子どもは自分のことに夢中で、
聞こえていないようで、
実によく聞いている。
しばらくして、
一緒にいる人から、
「元気ね〜〜」
と言われた時に、
息子がすかさず、
「オレ、サルなんだぜ〜〜!!」
と言ったのだ。
とても、
誇らしげに。
彼からしてみれば、
よもや母親が、
人との会話で、
自分のことを誇らしげに語ることが、
躊躇われているなどとは、
夢にも思っていなかったのだろう。
大人が色々なバランスを、
気にかけながら、
会話をしていることなど、
端的に説明することもできず、
とりあえず、
その使い方はちょっと違うと、
止めることしかできなかった。
もっと自由に、
子どもの誇らしいところを、
声高々に、
言い表せたらと思うけど、
人の立場それぞれで、
不用意な言葉で、
嫌な思いをさせるようなことは
本意ではなく、
人の世を、
平穏に歩こうとすることすら、
本当に難しい。
何も知らずに生まれてくる子どもを、
こういう世界に、
馴染ませようとしているんだなぁ、
って思う。
人と繋がることで、
広がる可能性は無限で、
大変な時に支えてくれる手も、
その中にある。
自分でも、
上手くやれているとは思えないから、
スペシャルなことは、
教えてあげられないけど、
少しでも、
居心地良く、
過ごして欲しいな、
って、
願っている。