家族で駅弁大会にハマっていた時のこと。

 

チラシを見ながら、

みんなで、

これが食べたいと希望に印をつけて、

パパと、小学校低学年だった娘が、

買いに行ってくれた。

 

帰ってきた時、

パパと娘のテンションが、

異様に低くて、

 

おろろ?

 

っと思ったら、

 

パパが、

「なんか、変な弁当買っちゃってさぁ……」

と言う。

 

聞けば、

娘が欲しかった弁当が売り切れていて、

代わりを自分で選ばせたのだけど、

それが微妙なのだそうだ。

 

娘は確か、

キャラクターのデザインされた、

可愛い弁当を希望していたはず。

 

たとえそれがなかったとしても、

自分で選んだのなら、

大丈夫なのでは?

と思ったが、

 

パパにそこまで言わせる弁当は、

一体どんなものなんだろう?

と不思議に思った。

 

 

見てみたら、

赤い

『さるぼぼ弁当』だった。

 

『さるぼぼ』

 

ああ、これは知ってるぞ。

 

学生時代に友達から、

お土産で、

さるぼぼの根付をもらったことがある。

 

岐阜県飛騨の民芸品。

 

縁起物ではないか。

 

 

『さるぼぼ弁当』は、

フタがさるぼぼの、

頭と手足の形にデザインされている。

 

パパはきっと、

 

一見見慣れたキャラクターのように見えて、

よく見たら、

小さな子ども向けでもなく、

これ、かわいいか?

って思えてきて、

 

後で娘が、

可愛くないって、

泣くんじゃないか、

 

それを見た私に、

「なんでパパがいながら、

 こんなの買ってきたの?」

くらい言われるとでも思って、

テンションが下がっていったんだろうな。

 

娘も、

そんな様子のパパを見て、

心配な気持ちでいっぱいなんだな。

 

というのが見て取れた。

 

 

中身はもしかしたら、

子ども向けじゃないかもしれないけど、

たくさん並んだお弁当の中から、

娘が選んだのもわからなくもない、

愛らしい感じのデザイン。

駅弁大会に出ている、

その地を代表する立派なお弁当だ。

 

せっかく買い出しに行ってくれたのに、

テンションだだ下がりでもしょうがないので、

 

とりあえず、

気分を変えることにした。

 

「おおっ!!

 さるぼぼではないですか!!」

 

「知ってるの?」

パパと娘の顔が上がる。

 

「知ってる、知ってる。

 昔からある有名な伝統玩具だよ。

 一生に一回は誰でも縁があるんじゃない?

 パパは知らないの?」

 

「知らないよ」

 

「じゃぁ、今知ったね。

 どこかでこんな風に出会うんだよ。

 縁起物だよ!」

 

ようやく、

買い出しという一大任務を無事に終えて、

ホッとした表情になった2人。

 

心配をよそに、

娘はお弁当を完食。

 

さるぼぼ弁当には、

小さなさるぼぼのストラップが付いていた。

 

せっかくなので、

 

いろいろ調べて、

そこから、

 

さるぼぼの里が、

その年の夏の旅行先になった。

 

あそこでさるぼぼ弁当を選んでなかったら、

ここには来てないんだから、

わかんないよね〜〜。

 

楽しい思い出は、

そのまま娘の功績となった。

 

 

ちなみに、

弁当を買ってきた2週間後、

パパが、

 

「乗り換えで降りた駅で、

 物産フェアをやってて、

 さるぼぼが売ってたんだよね。

 今までもあったと思うけど、

 見えてないものなんだと思ったよ」

 

と言ってきた。

 

子どものおかげで、

今まで見過ごしていたようなものが、

見えるようになる。

 

間違いなく、

親の人生も、

豊かなものになっているのだ。