思いがけない訃報が飛び込んできた。
かつて勤めていた広告会社の社長で、大変お世話になった方。
人情に厚くて、人たらしで、笑顔が可愛くて、やんちゃで、豪快で、だけど繊細で。
とてもかわいがっていただいた。
広告業のいろはを教わり、沢山のチャンスをいただき、憧れの人に会わせてもらったり、美味しいものを教えてくださった。
何もかも、仕事になることを教えて下さった。

「お前が男だったらよかったのに」と言われたのは、最高の褒め言葉だったと今でも思う。

連絡を受けて、かつての同僚や後輩たちと久しぶりにコンタクトを取った。
みな、口を揃えて、感謝の気持ちと喪失感を伝えてくれた。
ひとつの時代が終わった、というくらい寂しさが襲ってくる。

仲人もやっていただいたのに、夫の転職により、会えなくなって、それでももう一度お会いしたいと、私は会いに行きたいと何度か思った。
つい先日も、そこにいると聞いた福祉施設の看板を見かけて、お元気かしらと想いを馳せたところだった。

やはり、会いたい人には、会っておこう!
そこで行動に移すかどうか。
やった後悔よりも、やらなかった後悔は哀しい。

本来、お通夜は明日だが、明日は行かれないので、思いきって会いに行くことにした。
黒いストッキングを買いにコンビニへ行くと、社長の好きだった「みそぱん」があった。
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こうした、田舎っぽい昔なつかしいものが社長は好きだった。
会社で、うどんを茹でてみんなで食べたり、筍狩りに行ったり。そんな家庭的な感じの会社に、親しみを感じていたが、これは社長のパーソナリティによるものだったと、今更のように思う。

迷わずみそパンを手に取り、社長宅へ。
私が泣いていて、運転もおぼつかなくなるのを心配してか、父が車で送ってくれた。
数年前には、何度も訪れたなつかしいお宅。
まだ、貼り紙もなく、ご家族しかいらっしゃらない。
玄関で迎えてくださった奥様。
すでに玄関先で号泣してしまう。
最期にお別れをさせていただきたい。
そんなワガママを聞き入れてくださった。

痩せてすっきりした、きれいなお顔だった。47kgくらいになってしまったという。
なつかしいお顔。
やはり、お話のできるうちに会いにくるべきだった。
涙が後から後から溢れてくる。
こんな日が来るなんて。

恥ずかしながら、みそパンを奥様にお渡しし、供物としていただきました。
「おめさん、相変わらず、おもしれえな」
なんていう声が聞こえてきそう…。


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お腹に息子がいるときの写真。
今から22年前…。
やまびこドームにて。
産休育休をいただき、仕事に復帰した女性社員第一号となりました。
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原田泰治先生と。
信州博覧会や、美術館オープンのお仕事などをしていた頃。
やりがいのある仕事を、いくつも任せていただきました。
私の中の可能性を、真っ先に信じてくださった方だったと、改めて感謝の気持ちが溢れています。

H社長、
今まで、本当にありがとうございました。
私の中で、社長と呼べるのは、あなただけです。
沢山のことを教えてくださり、感謝しています。
どうぞ、安らかにお休みください。
また、お会いできるその日まで、私たちを見守ってくださいね。
合掌