アニメ「昭和元禄落語心中」をきっかけに始まった、声優落語天狗連。
 
その2020年のお祭り、唯一チケットが取れた1月10日の会に行ってきました!
 
 
10日の出演者は山口勝平さん、阿座上洋平さん、ゲストは立川志ら乃師匠。

山口さんは落語心中では“落語をやらない”アマケン役。
ですがアニメをきっかけに落語を始められ、今では志ら乃師匠とともに全国をまわられており「声優の方が副業では?」と言われているとかいないとか…。
 
どなたがどんな噺をしてくださるのか?
とっても楽しみでした!
 
司会は吉田尚記さん、コーディネーターはサンキュータツオさん
このお二人がオープニングから飛ばす飛ばす…(笑)。
落研出身でアニメ好きというお二人。
 
「今日は落語もアニメもどっちもいけるお客さんだと思う」ということで、アニメに絡めて最初から大爆笑させていただきました(笑)。
 
出演者のお一人、阿座上さんは『新サクラ大戦』の主人公・神山誠十郎を担当されている方。
吉田さんの「今の2.5次元はサクラ大戦がなければない!」という熱い一言や、サンキューさんの「主人公ってことはつまり俺!俺をお前に託せるのか?!」という言葉には個人的に大爆笑でした(笑)。
 
そんな阿座上さんの高座名は【有楽亭声座】。
そう、このイベントでは【落語心中の有楽亭一門】ということで皆【有楽亭】でお名前を付けるのだそうです。なんて素敵な!

声優ということでの【声】、阿座上さんの【座】で【声座(せいざ)】。良い響きですね。
 
演目は『紙入れ』
ある旦那に世話になっている若者が、旦那の奥さんと不倫をした後忘れ物をしてしまうお話です。
 
このおかみさんが色っぽいのなんの!誘惑する様やしたたかさがなんとも小憎ったらしく、最後に堂々としつつも若者に合図を送っている様まで目に浮かぶようでおかしかったです。
 
序盤でポンと噺をド忘れしてしまい最初からやり直しされておりましたが、後半のリズムや畳みかける感じがとてもよかったです。

ご本人とても悔しがってリベンジしたいと仰られておりました。旦那、若者、おかみさんのそれぞれの変化が楽しくてまたぜひお聞きしてみたいと思いました(^^)。
 
 
次に山口勝平さん。
勝平さんの演目は最初に発表されていましたが、落語心中ファンには馴染み深い『死神』。
 
劇場全体が「うわぁぁっ」と歓喜の声で溢れました。
勝平さんというと、ご本人はもちろん、役のイメージから明るい噺をされるんだろうなと勝手に想像していたので、『死神』と聞いたときは驚きました。
 
高座名は【有楽亭感謝】。今日までのすべてに感謝、という想いでつけられたそうです。
 
直前には稽古の様子が流れ、志ら乃師匠に稽古をつけてもらっている様子が。その中で
 
勝「あんまり影のある役をやったことがない」
志「犬夜叉っぽい」
 
なんてやりとりがあったり…。
 
勝「死とは、生きるとは、について考える(といったニュアンス)」
 
があったり。
 
『死神』は噺家さんによって明るく笑う話にも、重く哀しい話にも、不気味で怖い話にも変貌する話ですが、果たして今宵はどんな『死神』になるんだろう。劇場中が勝平さんに集中します。
 
枕無し、男が女房に「金を持ってこないなら敷居は跨がせない」と、見捨てられてしまうところから。
もうこのシーンでシリアス。明るく「しょうがないな」なんて笑いながらも「じゃあ死んじゃえばいっか」と言う男の悲哀をバシバシ感じました。
 
勝平さんの『死神』は、編集の天才と言われる師匠の志ら乃さんのもの。
【有楽亭八雲】とは違う切り取り方・アプローチで、男の生き方が変化していきます。
 
最後の局面で男が見たのは、かつての女房の長い蝋燭、その隣ではかつての女房が生んだ自分の子ではない赤子の蝋燭が太く赤々と燃えている様子。

哀愁。

そして今にも消えそうな自分の蝋燭を見つけた男は慌て、死神から長い蝋燭を貰い火をうつそうと躍起になります。
でも全然つかない。
 
死神は言うのです。
「お前が本当に生きようとは思っていないからだ」と。
 
その時の男の「本当に生きるってなんだ」という叫び、火が付いた時の「ざまあみろ」という叫び。
 
「生死に向き合った」勝平さんの姿勢や想いが集約されている気がして、また「人が生きる」とはどんなことを指すのか問われているようで、ずしんと重く突き刺さりました。
そして死神は「二本付いていたらおかしい」と男の消え入りそうな元々の蝋燭をふーっと消し、「今日からお前も死神だ」と終わります。
 
これが本当に凄かった。
劇場中がシーンと静まり、そして拍手喝采。
 
『死神』は下げ(オチ・完成形)が定まっていない噺ということですが、今宵一つの形をみた気がしました。
 

 

 

 

 

本当に、独自の極みだと思います。凄いものを見てしまった…。
演技のようにやりすぎるとクサくなると言われるという落語ですが、演技をされてきた声優さんだからこその見せ方・聴かせ方というか…。
全員が固唾を呑んで男の行く末を見守り、勝平さんの世界に引き込まれた、素晴らしい“空間”でした。
 
サンキューさんや吉田さんがその後のトークでおっしゃられておりましたが、
ご本人が明るさの塊!みたいな方だからこそ、笑顔であっても怖い、ぞくっとする感じがある。
得体の知れなさもあり、笑顔に隠している哀しみ・空虚さもあり…という、“凄み”でした。
 
 
そして最後のトリは立川志ら乃師匠!
演目は落語心中がアニメ化される少し前、原作を読んで作られたという『雲八』です。

この雲八、師匠が弟子に「まずは私になりなさい」というセリフがキーになっているのですが…。
 
今日初めて聞いたので解釈が違うかもしれないのですが、落語心中の世界では叶わなかった七代目有楽亭八雲とその弟子の二人、助六と菊比古の“もう一つ”の世界に感じられて、面白おかしくもあたたかい、師匠から弟子への継承、そのまた弟子が次の弟子へ継承…という優しい世界を想像して、嬉しく優しい気持ちになりました。

 
最後にはなんと今回特別!というお写真タイム!
 
 
目線もありがとうございます☆
2枚目は志ら乃師匠と勝平さんで「死神」のポーズです。
 
また、物販では出演者のお名前が入った手拭いが!これ、なんと有楽亭の家紋入り!
テンション上がります!
 
 
私が落語を聴きに寄席に行き始めたりしたのはまさに落語心中にハマったのがきっかけです。
作品を通して日本の文化に触れたり、新しい世界を見られたり、双方のファンが垣根を越えていく。本当に素敵な出会いだなあと思います。
 
また、「笑い飛ばすこと」「面白おかしいこと」がどれだけ日々に力をくれ毎日を楽しく過ごせる活力になるか、年齢を重ねていくたびに「笑い」の大切さを感じます。
 
寄席にもふらっと行きたいですし、落語心中から始まった“声優さんが落語をする”というものが、まだまだ、もっともっと広がっていくととても面白いし楽しいなと思いました。
何かが“きっかけ”になりその世界・業界が広がっていく。いいですね!