赤堀先生、人間世界は生き辛くないですか?

「水底の棘 法医昆虫学捜査官」 川瀬七緒著

内容

水死体からも「虫の声」は聞こえるのか?第一発見者は、
法医昆虫学者の赤堀涼子本人。
東京湾の荒川河口で彼女が見つけた遺体は、虫や動物による
損傷が激しく、身元特定は困難を極めた。
絞殺後に川に捨てられたものと、解剖医と鑑識は推定。
が、赤堀はまったく別の見解を打ち出した。
岩楯警部補はじめ捜査本部は被害者の所持品から、赤堀はウジと
微物から、それぞれの捜査が開始された!

本当に赤堀先生の虫達を見る目は優しい。
どんな虫も「この子」と我が子のように呼びかける、その優しさは
関わる人達に対しても同じ。

ここまで優しく、自分の仕事に自信と誇りを持つ気高い女性って
ちょっとお見かけしない。
三作目やけど、そのまっすぐさに段々心配になってきてる。

そんな熱血暴走気味な赤堀先生のブレーキになってるのか、
身を楯にして守ってるのかもはや判らなくなってきた、
岩楯&ワニさんの刑事コンビ。

血液O型は虫に近いから、虫に刺されやすいとの説明になんか納得
したり(私もO型でめちゃくちゃ虫に刺される)

乾燥〇〇の香りの中毒性に至ってはほとんどギャグ。

所々くすくすと笑える文面に引き込まれてどんどん読み進んで
いくと、純粋な虫の世界では起こらない人間の欲深さが産みだした
ドロドロとした感情が事件の真相と判って愕然。

物語のほとんどを「被害者は誰だ」という部分に割かれてて、
後半被害者が判明しだしてから、畳み込むように暗い世界に沈んでいく。

水底の棘とはそんな人間の暗い感情の棘の事なのかもしれない。