皆さん、こんにちは。ゆなです。
先日の不穏な空気が流れての続きから↓
桜さんは下をうつむいたまま、ずっと苦しい表情をしていた。
鬱が原因で会えないことはわかった。
それをわかったうえで、一緒に頑張ろうと言った私を断った桜さんの気持ちは、
私にとって理解しがたいものだった。
私の脳裏に、友達から言われた結婚の話を聞かなくちゃという気持ちばかりが焦った。
私「桜さん…結婚は?結婚しようって…」
桜「今は…ごめん。できない」
全てが終わったと思った。
長い長い沈黙が流れて。
私「桜さんは…本当にそうしたいの?」
桜「そのほうが僕は…楽になる」
目をつむって、苦しそうにしている桜さんを見て、私はもうこれ以上桜さんを苦しめたくなかった。
私「…わかった。」
桜「友達…友達になりたい」
小さな声で、桜さんはそう言った。
私「私は、桜さんが好きなのに、友達になんてなれないよ…」
そう言って、私は桜さんをその場に残し、店を出た。
その後は、どうやって家に戻ったか覚えていない。
帰り道の交差点で、男友達が立っていた。
友「お帰り。大丈夫?」
私は彼の顔を見るなり、夜中のアスファルトに向かって子供のように大声で泣いた。
帰りの電車の中で、「デートは上手くいった?」とLINEが入っていて、
私は「お別れした」と返信したら、帰りを待っていてくれた。
待ち伏せして待っててくれるこんなやつ…そうそういない。
友「まずは、飲みなおそう。」
そう言って、彼は居酒屋さんで散々私の話を聞いてくれた。
彼の名前はY。
私が引越ししてから出会った友達で、果物屋を経営している。
私がよく果物を買いに行くので顔見知りになり、近くの居酒屋でばったり会ってから飲み友達になった。
この友達とは絶対身体の関係にはならない人だけど、こんな時、コイツの優しさが身に染みる。
私はビールを飲みながら、Yに桜さんとのことを延々と話した。
すると彼は意外な事を口にした。
Y「桜さん、ゆなの事本当に好きだったんだな」
私「は!?どうして?私は一緒に頑張ろうって言ったけど、受け入れてもらえなかったんだよ!?やっぱり他に女の人がいたんだってば!」
Y「ああ、それね、たぶん勘違い」
…?
Y「わかりやすく言うと、責めたい症候群だな」
…責めたい症候群???
Y「桜さんて、きっとすっげー真面目だろ?完璧主義者。だから、ゆなを大事に出来ない自分は何てダメなやつなんだって自分で自分を責めるわけ。」
私「私は一緒に頑張ろうって言ったよ!?」
Y「好きだから負担かけたくないし、ダメな自分を許せないわけ。彼氏らしいことが出来ない自分は愛されるにふさわしくない、罰せられるべき人間だって。それに…」
私「それに?」
Y「完璧主義者だから、お姉さんの事とかもホントは言いたくなかったと思うな。桜さんにとっては家族の汚点だからな。でも、そんな事まで詳しくゆなに言うんだし、本気だったと思うよ。」
そんな事…考えたこともなかった…。
Y「お姉さん、まだ良くなってないんだろ?いつ良くなるかわかんないお姉さんと同じ病気になって、ゆなを待たせる責任なんて負えねんだわ。ゆな、若くないんだからさ」
ちょっとディスられた。…でも、事実。
Y「それに、最後に友達になりたいって言ったんだろ?」
私「でもそれは、やりたいだけだからでしょ」
Y「お前…バカ?」
Yは、ため息交じりに言った。
Y「マジでわかってねぇのな。やりたいだけなら何で食事代出して何もしないで帰んなきゃいけないんだよ。ヤルだけだったら毎週会ってヤルだろうに。好きだからせめて友達でいたいんだよ。嫌いとか面倒だったら連絡なんてしねーし。それくらいわかれや」
…。
普段、コイツに突っ込みを入れているのは私の方なのに、この時ばかりは圧倒された。
私「…何か、今日のY、妙に説得力ある」
Y「オレ、一応、大学心理学専攻だったから」
…え
Yが心理学専攻だったなんて、…初めて知ったよ
この時ばかりは、Yに感謝しかなかった。
と、同時に。
Yの言うように、本当に桜さんがそんな気持ちで言ったんだとしたら…
私…何てことしたんだろう…
とんでもない事しでかしたのでは…
鬱で苦しんでいる桜さんに、私はあろうことか結婚を迫ったのだ…。
私「私…何てことしちゃったんだろう…どうしよう」
Y「しかも、レストランに一人置いてきたんだろ?」
ああああああああああ
Y「似たもの同士だな。お互い自分を責めるとこ。それ、すれ違いになるから気をつけろよ。」
私はすっかり泣き止んで、桜さんの事を何も知ろうとしなかった自分を恥じた。
会えない事に不安になって、自分の事しか考えてなかった。
付き合ってるならもっと頻繁に会うべき。
好きならもっと連絡くれるべき。
将来を本気で考えているなら、もっとたくさんかまってくれるべき…。
そう思い込んで、私は愛されていないのだと勝手に悲しくなっていた。
どうして、もっと信じてあげられなかったんだろう。
…私は、間違いなく愛されていたんだ。
自分が、愛されることを疑ってたんだ。