※注意!妄想です!BLです!苦手な方はお戻りください。
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Side:N
――二か月前。
住宅地が並ぶ早朝の路地。
公園前のマンションに新聞を配り終え、次の場所へ向かうために自転車に乗ろうとしていた。
「おい、おまえ大丈夫か?」
N「……」
「ちょ、無視すんな。お前だよ!お・ま・え!」
ぐいっ!
自分に話しかけられているってことをようやく認識したときには、肩を掴まれていた。
N「わっ…」
「おっと」
「おっと」
突然のことに驚き、片手で支えていた自転車のバランスが崩れる。
荷台に積んでいる新聞のことが頭によぎり、元より血色の良くなかった顔色がさらに青くなる。
荷台に積んでいる新聞のことが頭によぎり、元より血色の良くなかった顔色がさらに青くなる。
目をつぶり、新聞をぶちまける覚悟をした。
N「……?」
だけど、ボクがイメージした最悪の事態にはならなかった。
ボクに声を掛けた人が、どういう反射神経してるのって疑問に思うくらいの素早さで自転車を掴んでいた。
ボクに声を掛けた人が、どういう反射神経してるのって疑問に思うくらいの素早さで自転車を掴んでいた。
「あっぶね。驚かして悪かった」
N「え、あ…はい。ボクの方こそ、売り物の新聞を守ってもらってありがとうございます」
N「え、あ…はい。ボクの方こそ、売り物の新聞を守ってもらってありがとうございます」
訳が分からないままぺこりと頭を下げ、「それでは……」と言って、そそくさと自転車に跨ろうとした。
「おいっ!だから待てって」
N「……何か?」
今度は自転車の前に回り、両手でハンドルを掴んで阻止される。
なるべく早くノルマを終わらせたいボクは、焦りからちょっと冷たい声になる。
なるべく早くノルマを終わらせたいボクは、焦りからちょっと冷たい声になる。
でも、そんなことは全くといって気にしない目の前の人。
「おまえ、ふらついてんだろ。それに顔色悪いし、ほっそいし、ちゃんと食ってんのか?」
N「……食べてます」
改めてちゃんと見ると、その人はボクとあんまり身長は変わらないけど、明らかにイケメンの部類に入るお兄さん。
……大よそ、他人に声を掛けるタイプには思えない。
……大よそ、他人に声を掛けるタイプには思えない。
少し、身構える。
見ず知らずの人間に心底心配げな眼差しを向けるこの人は、いったい何が目的なんだろう。
「嘘だ!かけてもいいが、ぜってー食ってねえだろ!」
N「……食べてます」
ごそごそとポケットからバランス栄養食を取り出し、目の前につきだした。
N「食べて、ます」
若干ムッとして、言い切った。
「……はあ」
N「……」
「そんなのは食ったって言わねえんだよ」
N「食べてるもん」
その時のボクは、目まぐるしく変わる環境についていくのがやっとで、ちょっと意固地になっていた。
いや、違う。
本当は、虚勢を張っていないと、1人で立つことさえままならなかった。
心配してくれてるのに、かわいげのないボク。
目の前の人も、すぐに立ち去るだろう。
そんな風に高をくくっていた。
なのに、その人がとった行動は、思いがけないものだった。
N「!?」
伸ばされた手にビクッとなったボクに構わず、少し乱雑にボクの頭をよしよしと撫でる大きくてキレイな手。
"心配"って感情をのせたままのまっすぐな眼差しが、ボクの肩越しに荷台へと移る。
"心配"って感情をのせたままのまっすぐな眼差しが、ボクの肩越しに荷台へと移る。
「それ、もうちょいで配り終わるよな」
N「あ……はい」
「終わったら、またここ通るよな?」
N「ええ」
「んじゃ、帰りにそこの公園に来い」
N「……え?」
「待ってっから、絶対に来いよ」
N「ちょっ……」
ボクの返事も聞かず、言うだけ言ったその人はボクの進行方向とは逆の方へ歩いていった。
残されたボクは、今度こそ自転車に跨って漕ぎ始める。
すぐにスピードに乗った自転車。
さっきまではあんなに重いと感じていたペダルが、ほんの少し軽い。
さっきまではあんなに重いと感じていたペダルが、ほんの少し軽い。
N「いったい……、なんだったんだろう」
呟いた言葉はすぐに風にかき消された。