※注意!妄想です!BLです!苦手な方はお戻りください。
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Side:N

 

 
 
 どのくらいそうしていただろう、ふいにノックの音が聞こえた。
 
 
 
 「ニノ!いるんだろ、入るぞっ」
 
 

 許可を与えていないのに、ズカズカと楽屋に人が入ってきた。
 さっきまでスタジオにいた空気の読めない人だ。
 
 嫌な予感しかしない。
 
 

 その人はすぐにオレたちに気づき、一瞬ギョッとした。
 まあ、それは仕方がない。
 だってオレ、リーダーにぴったりとくっついて、リーダーの右腕の中にすっぽりと納まっている状態だからね ///
 
 でも、その男は軽蔑の眼差しではなく、下卑た視線を送ってきた。
 
 危険なシグナルを感じ、咄嗟に離れようとしたら、力をいれたリーダーの右腕に阻まれた。
 思わず視線をあげると、リーダーは揺るぎの無い目をしていた。
 
 
 

 「う~わ~、やっぱキミたちができてるって噂、本当なんだ」
O「ただのスキンシップ。昔っからこうだから、なんの違和感もない」
 「へ?……ま、まあ、そんなことはいい。ニノ、これから飲みに行こう」
 
 
 なんの動揺も見せないリーダーに興味を失った男は、本来の目的を口にした。
 言外に『もちろん行くよな』という含みが感じられた。
 
 

 舌なめずりしそうな顔をして、オレを見ている。
 爬虫類を思わせるその目に、体中が震えた。
 

 飲むだけでは終わらせてくれないというのは、火を見るよりも明らか。
 即座に、断るための口を開こうとするけど、ピクリとも動いてくれない。
 その事態に焦れば焦るほど、体も心も怯えが広がって思い通りにならなくなった。
 
 このままじゃ、無理やり連れていかれてしまう。
 パニックに陥った――。 
 
 
 
 
 ヤダ
 コナイデ
 クルナ
 
 オレニ、チカヅカナイデ――
 
 
 

 緊張が極限に達した時、胸の前で握りしめていた両手の拳に温かい手が触れてきた。
 
 安心できる、キレイな手。
 その手が励ますようにオレの両手の甲を撫でた。
 
 
 
 

O「……だいじょうぶ」
 
 
 オレだけに聞こえるように、耳元で囁かれる。
 瞬間、一気に震えが止まった。
 
 見上げた先にあるリーダーが、優しく笑ってくれた。
 リーダーの全身でオレの心ごと包まれてるような気がした。
 
 

O「今日はダメです。……いや、違うな。これから先もずっとダメです。カズをあなたと飲みには行かせません」
 「なっ、おまえ!なんのつもりだ!?」
 
 
 ほけっとしていると、リーダーが直球を放った。
 慌ててフォローしようとしたが、リーダーの返答の方が早かった。
 
 
O「なんのつもりって、おれが嫌だからです」
 「……嫌?」
O「ええ、嫌なんです」
 
 
 ……はい?
 リーダーの思ってもみなかった発言に、どうフォローすればよいのかわからない。
 
 
 

 「ハッ!傑作、傑作!」
O「だって、事実だし」
 「バカも休み休み言え。ニノ、行くぞっ」
 
 
 鼻で笑った男がオレの腕を掴もうとした。
 
 
 
 バシッ!
 
 
 「てめっ!なにしやが……」
 
 
 リーダーが、オレに伸ばされた男の手を容赦なく払った。
 カッとなった男がリーダーを睨む。
 
 
 
 だけど、目の前の男の顔が、みるみるうちに青ざめていく。
 室内の気温が一気に下がったような気さえした。
 
 
 

O「触んじゃねえ」
 
 
 地の底から響いてくるような声だった。
 決して大きいわけじゃないけど、ヒシヒシと伝わってくるのは怒り。
 
 例え声がなくても、リーダーから噴出されるそのオーラは人を怯ませるのに十分だった。
 
 
 

 男は震えていた。
 空気は読めないけど、リーダーが発している狂気に近い怒気には反応したみたいだ。
 
 

 バタバタバタッ!
 
 
 足をもつれさせながら、男が必死に出ていった。