※注意!妄想です!BLです!苦手な方はお戻りください。
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Side:O

 

 

 

O「ふうぅぅぅーーっ……」
 
 
 白い煙を長い息とともに吐きだす。
 それを何度も、何度も、繰り返す。
 
 

 思えば、カズを振った時から煙草を吸う頻度が増えたような気がする。
 イライラする回数が増えたんだろうな……。
 
 

 イライラの回数が増えた?
 どうして?
 
 
 おれに対する態度の中に、遠慮が見え始めたから?
 おれを、見ないようにしているから?
 
 

 ――ダメだ、何も考えないようにしているのに、気づけばまたカズのことを考えている。
 こんなんじゃ、気分を変えれない。
 
 おれの内側から追い出すように、頭をぶんぶんとワックスでガチガチに固めている髪の毛が揺れるくらいに振った。
 
 
 
 
 
 
 ガチャッ
 
 
 ドアの開く音とともに、人の気配がした。
 誰かが喫煙室に入ってきたらしい。
 
 
 

M「何してんの?」
 
 
 耳慣れた声がした方を向けば、怪訝そうな顔をした松潤が立っていた。
 
 
O「……別に」
M「なんだなんだ。機嫌わりいな」
O「そんなんじゃねえ」
M「ふうん」
 
 
 言葉を交わしながら、1人分の空間をあけて座った。
 これが松潤とのいつもの距離間。
 
 優雅に足を組んだ彼は、映画のワンシーンのように洗練された所作で煙草に火をつけた。
 
 
 
M「うめえ、やっぱ仕事の後の一服は最高だよな」
O「……」
 
 
 無言のおれを気にしたりしない。
 いつものことだからな。
 

 けど、視線をおれに投げてきた。
 
 
M「……なあ、俺が結婚するって言ったらどう思う?」
 
 
 2回ほど大きな煙を吐き出したあと、一般的には爆弾発言ともとれる内容をぶっこんできた。
 
 態度には出してないけど、正直少し……驚いた。
 松潤の目をじっと見て、この問いには答えをもらうという意志がバシバシと伝わってきた。
 
 
O「……どうって、おめでとうって思うよ」
M「ふうん。じゃあ、ニノが結婚するって言ったら?」
O「……ぇえ?……そんなの……そんなのカズが言うワケないだろ!?」
 
 
 なんとか答えたが、答えにはなっていない。
 だって、頭の中が真っ白になった。
 
 アイツが、永遠に手に入らない存在になるということが、おれに考えることを拒否させる。
 心臓も、変な風に脈打っている。
 
 
 

M「リーダー、いい加減認めな」
O「何をだよ」
M「ニノが好きだってこと」
O「……何、言ってんだ、おれもカズも男だぞ!」
 
 
 ちょと怒ったように言った。
 だけど、松潤の目を見ることができない。
 
 見たら、おれが考えないようにしてきたこと、全部無駄になる。
 これは予感じゃなくて、確証だ。
 
 けど、無情にも、松潤はことばを……やめてくんなかった。
 
 

M「人を好きになるってさ、理屈じゃないんじゃない?」
O「……っ!」
M「ニノが、誰かのモノになるのをあんたは見てられるのか?」
 
 
 
 カズの隣に
 
 『……………………』
 
 俺じゃない誰かがいて、
 
 『………………ノダ…』
 
 俺じゃない誰かの手を握り、
 
 『……ハ、……ノダ…』
 
 俺じゃない誰かに微笑みかける。
 
 『カズハ、……ノダ…』
 
 
 
O「カズは、おれのだ!……あっ」
 
 
 

 ずっと、ずっと、こころのなかに閉じ込めてきた想いが、声になってた。
 

 我に返る。
 
 おれは、松潤の襟を両手で締め上げながら叫んでいた。
 カズを取り上げる言葉を発したコイツが……許せないとさえ、思った。
 
 急いで松潤を解放する。
 彼は結構な勢いでおれの腕を叩いて、必死に「やめろ!」と叫んでいたらしい。
 
 ……が全くといっていいほど聞こえてなかった。
 
 

M「ゴホゴホッ!」
O「わりい、大丈夫か?」
M「大丈夫じゃねえよ!……ゴホッ」
O「……だよな」
 
 
 ガコッ!
 
 拳で思いっきし、頭を殴られた。
 
 
O「……ってーな!なにすんだよ!」
M「こんの、馬鹿たれが!大丈夫じゃねえって言ってんのは、オマエのその鈍すぎる心の事だ!」
 
 
 ズキズキと痛むのは、頭よりも鈍いと言われた心の方だった。
 ……イタイ。
 
 
O「鈍すぎるおれでも痛いって思った。心が痛いって……。カズも痛かったのかな」
M「リーダー……」
 
 
 おれに振られて、痛かったり、苦しかったりしたのかな。
 おまえ、イタイのキライなのに……がまん、したのか?
 
 なんでもない顔をするのが得意なおまえが、そんなのを気づかせるハズがないよな……。
 だとしたら――。
 
 
O「ひとりで……痛いの、耐えたのかな……」
M「耐えたんじゃねえの?」
 
 

 目をつぶる。
 
 カズの辛そうな顔を思い出そうとするが、思い出せない。
 そんな表情、アイツは見せないんだと、改めて思い知らされた。
 
 でも、おれだってやっとカズを好きなんだって認めたんだ。
 何もしないなら今までと変わらない。
 指をくわえて誰かに盗られるのを見てるだけなんで、死んでもごめんだ!
 
 だったら、行動あるのみ。
 

 覚悟を決めて目を開けたら、目に映るものすべてがさっきと違うように思えた。
 松潤がニヤニヤしながらおれを見てる。
 
 
M「行くのか?」
O「おう、カズを捕まえに行ってくる」
 
 
 扉を開けると、後ろから「リーダー最高♪」とかなんとか聞こえてきた。
 それを聞きながら、カズへと続く廊下を進んだ。