※注意!妄想です!BLです!苦手な方はお戻りください。
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Side:N

 

 

S「おっ、ニノおはよ」
N「おはよ」
 
 
 
 連れてこられたのは、都内の某スタジオ。
 雑誌の仕事だ。
 
 現場のスタッフの誘導で控室に通されると、そこにはすでに翔ちゃんがいた。
 
 

S「今日は先に俺たち2人だって、よろしくぅ」
N「そうなんだ、こちらこそよろしくお願いします」
 
 
 思いっきり笑いながら、丁寧な言葉遣いをする。
 翔ちゃんと一緒だと、どうしてもやり取りがコントっぽくなってしまうんだよね。
 パッと見、すげえ真面目そうなのに(いや、実際真面目なんだけどね)、普段は少々チャラい。
 
 
 

S「ニノ!これ見てみろよ!超懐かしい♪」
N「なになに?」
 
 
 部屋の一角に雑誌が積み上げられていた。
 その中の一冊をめくった翔ちゃんが手招きしている。
 
 斜め掛けしていたカバンを頭から抜きながら雑誌をのぞき込んだ。
 
 
S「なっ、懐かしいだろ」
N「……うん、そうだね。オレたち若いね」
 
 
 そこには、若かりし頃のオレたちが写っていた。
 よりによって、あの人に失恋した頃のものだ。
 
 なんてタイミングだよと思いながら、どうしてもあの人に目がいってしまう。
 せっかく持ち直した気持ちがまた当時に引きずられそうになった。
 
 
 意識的に目を逸らす。
 ……その先に、自分がいた。
 
 
 オレ……ちゃんと笑えてたんだな。
 
 仕事に支障をきたしていなかった自分を確認して、少し気分が浮上した。
 
 あの人にも、他のメンバーにも迷惑をかけていなかった。
 その事実がオレに自信をくれる。
 

 あの人はオレが想いを告げることを許してくれた。
 真剣な気持ちを否定することなく、「ありがとう」とさえ言ってくれた。
 
 ちゃんと失恋させてくれた上に、それからも何も変わることなくメンバーの一員として接してくれる。
 それは現在進行形だ。
 
 そんな風に、大きな心でオレという存在を受け入れてくれた。
 
 それなのに、ちょっとのことであの人に揺れてしまう自分自身が嫌になる。
 あの人はオレのことを信頼しているからこそ、気軽に触ったり、触らせてくれたりしてくれるというのに……。
 

 オレ、どうしようもねえな。
 

 こんなオレでも、別の人を好きになろうと努力した事もあった。
 だけどさ、どうしても頭の中からあの人は出ていってくれなかった。
 
 それから何人もの女の子との別れを繰り返して、ようやく悟ったんだ。
 オレの中での1番は変わらない。
 もはや不動だ。
 
 だから、2番目に好きな人を見つけることにしたんだ。
 相手に2番目に好きだということを言いさえしなければ、分かるはずはないからね。
 
 それに、1番好きな人とは結ばれないってよく聞くし、オレの運命はあの人とはつながってなかったんだ。
 悲しいけど、そういうことなんだと無理やり納得する。
 
 
 
 
 
 ――ふと、視線を感じて顔を上げる。
 翔ちゃんが黙ったままオレを見ていた。
 
 どうやら物思いにふけりすぎたようだ。
 心配そうに眉が下がってる。
 
 
 
S「……ニノ」
N「ん?なあに?」
 
 
 詮索されたくなくて、努めて明るい声をだした。
 ……だけど翔ちゃんは騙されてはくれなかった。
 
 
 
S「自分でわかってんだろ?」
N「何の事?」
S「智君の前ではダメかも知んないけど、せめて俺の前でくらいは強がんなよっ!」
N「どうしたの、そんな大きな声だしたら、みんなビックリしちゃうでしょ」
 
 
 ハッとしたように翔ちゃんが周囲を見渡した。
 けど、控室に居るのはオレたち2人だけだ。
 
 ため息をついた翔ちゃんがなおも続ける。
 
 
 
S「ここに智君はいない。弱音を吐いていいんだ」
N「……だめだよ」
S「どうして」
N「一つ自分を許しちゃうと、きっと歯止めが利かなくなっちゃうから」
 
 
 翔ちゃんが心配しているのはわかったけど、微かな笑顔を向けることが精一杯。
 
 
 

 オレは弱いから、自分を許すことが怖い――。