※注意!妄想です!BLです!苦手な方はお戻りください。
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Side:S

 


 いつもの楽屋。
 いつもの現場。
 いつもの移動車。
 
 
 すべてが変わらないハズなのに、少しずつ歯車が狂っていく。
 
 
 
 
 
 智君から距離をとり始めたニノは、気が付いたらキッカリ一人分のスペースを空けるようになっていた。
 智君自身はどうしてそうなったのかがわからず、不思議そうな顔をしている。
 
 収録現場でも、ニノは智君との間に誰かを挟んで座る。
 
 
 
 だけどニノは笑顔だ。
 
 
 
 
 
 
 そんな日がしばらく続いたある日、ニノが収録の合間の休憩中に俺に聞いてきた。
 
 
N「ねえ、翔ちゃん」
S「なんだ?」
N「オレ、いまどんな顔してる?」
S「どんなって……笑ってるだろ」
N「そ……よかった」
 
 
 安堵の言葉とは裏腹に、ニノの顔が笑顔のまま動かない。
 言葉と表情がかみ合って……ない?
 
 
 
 ゾッとした。
 ニノが……自分の感情を捨て始めたんだ。
 
 このままじゃ、ニノが壊れるのは時間の問題だ。
 
 
 
 
 
 
 

S「智君、今日時間ある?」
O「……ある」
 
 
 何かを察した智君は、無駄なことを一切聞かずに俺の申し入れを承諾してくれた――。
 
 
 
 

 仕事が終わり、みんなが帰ってしまった楽屋で俺が知り得たニノのすべてを話した。
 それを静かに聞き終えた智君は、深く頭を下げる。
 
 
 
 
O「ありがとう」
S「俺、何にもできなかった」
O「それは違うよ。おれに、教えてくれただろ」
S「ごめん、ニノの想いを受け入れられないかもしれないけど、それでもニノを助けてやって。このままじゃ、ニノが壊れてしまうから」
O「みんな、なんでおれがカズを好きじゃないって前提なんだよ……」
S「えっ?」
O「おれ……もうずっと、カズだけが好きだよ」
 
 
 
 当たり前のことのように告白してくれた智君は、凄く強い目をしていた。
 だけど、ひどく優しい表情。
 
 
O「カズが決めたんなら、それに従おうと思ってた」
 
 
 その表情からは、ニノへの深い愛情が感じられた。
 
 
O「だけど、カズが自分を捨てるって言うんだったら、おれがもらう。ぜんぶもらう」
 
 
 晴れやかな顔で宣言した智君は、立ち上がった。
 そのまま楽屋を出て行こうとする。
 
 
S「どこ行くの?」
O「事務所。話つけてくる」
 
 
 振り返った顔は、逆光でよく見えなかったけど、力強さが伝わってきた。