※注意!妄想です!BLです!苦手な方はお戻りください。
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Side:O
――2008年。
舞台出演が決まり、個展開催が決まりと仕事自体は途切れることなく続いていき、それをありがたいと思いながらも、淡々とこなす毎日。
連続ドラマの初主演が決まり、オレは正直憂鬱だった。
役の難解さに加えて、長期間束縛されることに対して、自由を求めていたオレには苦痛でさえあった。
そんな中、第一話のゲストとしてカズが参加することになった。
クランクインの日にカズと一緒にいれることに、言いようない安心が広がる。
O「……しんじちゅはひとつしかないのでしゅから」
N「もぅ、噛むなよ」
いつものカズのツッこみに、自然と柔らかい笑顔になる。
初顔合わせの時から、よそよそしく硬い表情のままだったオレを見てた周りのスタッフから、安堵の声が漏れた。
メイキング映像用のカメラが常に回っているのも気にならない。
ツーショットを撮りますと言われて、カズがすかさず恋人つなぎをしてきた。
オレの方を向いてニコっとした後、つないだ手を見せつけるように掲げた。
周りのスタッフなんかは、カズのサービスに喜んでいるが、オレはつないだ手から、「頑張れ」と言われているのが分かり嬉しかった。
本番が始まる。
オレの後ろにカズの気配がある。
その気配が熊田正義になるのを感じて、オレも成瀬領になる。
「アクション」の掛声とともに歩きだした――。
熊田はそのワンシーンで、このドラマに爪痕を残した。
一発OKとなった後、カズはオレと手をつないだ。
そして、柔らかい、優しい目でオレを見て、ゆっくりと周りのスタッフを見回した。
N「初めての連ドラ主演で、うちの大野がご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
カズが深々と頭を下げた。
オレも慌ててそれに倣う。
拍手が聞こえてきた。
握られた手に力が入るのを感じて、オレも握り返した。
自然と同じタイミングで頭を上げる。
さっきまでギクシャクしていたスタッフとの距離が近づいたような気がした。
連ドラが決まってから、憂鬱でしかなかったが、頑張ろうと思えた。
やっぱり、カズはすごい。