浅間牧場で夏休みの自由研究
浅間牧場 で8月9日から13日まで、夏休みの自由研究のお手伝いを大学生がしています。小学生のお子さまといっしょにおでかけください。中軽井沢から国道146号を北上して30分ほどです。
弁当パックで浅間山の立体模型をつくる。200円。
教員免許更新講習の実施報告
草津セミナーハウスを利用した3日間の教員免許更新講習を、きのう無事終えました。
4月27日6時からオンライン受付開始だったそうです。開始時刻は大混雑したようです。なかなかつながらなかったらしい。私の講習は、初日の午前中に半数の席が埋まったらしい。ただし最終的に満席(40)になったのは5月14日だったようです。そのあとキャンセルはなかったと思われます。キャンセル待ちで参加した人を確認できませんでした。当日は、全員出席しました。
志望動機は、座学で3日間はたまらない。野外で連続3日間で選択講座を済ますことができるので申し込んだ、というかたが多数だったようです。同じ職場や、友達同士で誘い合って申し込んだグループが複数ありました。ご夫婦での参加もひと組ありました。
参加者は33歳、43歳、53歳です。マクロにみると、33歳の方たちがもっとも元気で生き生きしていて才能が感じられました。また学習意欲も感じられました。彼らには講習のしがいがありました。しかし(私と同年の)53歳の方々には学力とセンスと意欲の衰えがみられました。これは、この集団が20年前から劣っていたのか、この20年間に下降したのかどちらかわかりませんでした。いずれにしろ、53歳のかたがたは、職場に戻って若い方々のじゃまにならないよう、お荷物にならないよう、これから定年退職までの時間を過ごしてほしいと私は希望します。
じつは工業高校からまとまった数の参加申込みがあって、このひとたちは「遊びのつもりで参加かな」と私は警戒していました。講習テーマである火山や地学は、工業高校のカリキュラムからもっとも遠いところにあります。しかし終わってみて、今回の講習をもっともエンジョイしたのは彼らだったと思います。講習が終わるやいなや温泉につかり、夜は遅くまで歓談、そして早朝から自転車にのって草津の温泉街を探索。今回の講習の内容を2学期からの授業に直接生かそうと「まじめに」勉強した義務教育の教諭たちよりずっと豊かな経験をしてお帰りになったようでした。
ことしの夏は天候不順ですが、幸いにも3日間ともよい天気に恵まれました。予定していた観察ポイントを悪天のためにキャンセルすることを強いられることなくほぼ完全実施することができました。
参加者40人は、私ひとりで案内するには大きすぎる団体です。40人だと3万円ですが、もし25人にするとひとりあたりのバス代負担が増えて3万5000円になります。ことしの参加者に聞くと、5000円増えてもよいから25人のほうがいいという意見が多数のようでした。
実施時期は、この8月3-5日は理想的だとのことでしたので、来年は同じ曜日で8月2-4日にしたいと思っています。来年の該当者のかたは、上記を参考にしてお申込みください。お待ちしています。
▼8月4日
0830 草津セミナーハウス
0910-0950 応桑(1)
1005-1110 峰の茶屋(67)
1115-1143 六里ヶ原休憩所
1148-1230 火山博物館の芝生でランチ
1230-1500 鬼押出しDコース(55)
1505-1525 浅間園で吾妻火砕流
1530-1545 鎌原湖入口の黒岩(32)
1550-1622 鎌原観音堂(11)
1654 草津セミナーハウス
▼8月5日
0825-0845 草津セミナーハウスで森林限界と雪線と氷期の説明
0855-0920 殺生河原
0925-1000 青葉山
1007-1137 湯釜
1207 草津セミナーハウス
野外観察会の作法
▼聞く
野外観察会で参加者がとる知的行為は、聞く、見る、考えるである。このうち、どれがもっとも重要だろうか。
初心者は、しばしば専門家である案内者の説明を「聞く」ことに神経を集中する。案内者の言うことをすべてノートに書き留めようとするひとまでいる。案内者にビデオカメラを向ける行為はこれの究極の姿だ。しかし「聞く」を最優先する行為は、せっかく現地に足を運んだのに、実物を見ずに帰って来てしまう結果をもたらす。案内者も説明時間をあまり長くとるべきでない。「聞く」に重きを置くなら、現地に行かずに室内で講義を受けたほうがよほど効率がよい。
▼見る
野外観察会のときに最も優先されるべき参加者の知的行為は、「見る」である。現地に行って、自然の中に身を置いて、風景の中に特定の観察点を求め、対象を大スケールから極小スケールまで自在に変化させて観察することに時間を使う。見る以外にも、触って、たたいて、なめて、においをかぐ。見たものの名前や属性を知るためには案内者の説明を「聞く」のがてっとり早い。自分が見たものを世界のなかに的確に位置づけることができる。
写真をとるのは、観察したことを記録にとどめるために有効な手段である。試料を持ち帰ることも有効である。ただし、そのどちらも、観察を先送りするための行為であってはならない。観察は、その場でして、仮の結論を出してから、次の観察点に向かうべきである。
▼考える
さて、野外観察会で「考える」行為はどうだろうか。見たら、自動的に考える。この特徴をもたらした自然の営みはどういうものだったのだろうか、この地層をつくった流れはどれくらいの規模で、どれくらいの速度だったのだろうか、などと考える。その場で考えることは必要だし、推奨されることだ。考えようとしない参加者には、考えるよう案内者が促すのがよい。しかし考えるべき問題は、現場でその時間を使うことが有効な問題だけに限る。家に帰ってから考えて間に合う問題(たとえば弾道軌道の力学計算など)は、その場では考えない。その解決に時間を使うくらいなら、「見る」時間を増やすべきだ。
せっかく野外観察に行ったのに、自然を見ることなく案内者がいうことを聞いてばかりいる参加者は、愚かだ。せっかく野外観察に行ったのに、物理の計算に熱中して目の前の自然を見る時間を逃す参加者は、愚かだ。
▼案内者には戦略が必要
初心者は野外観察の作法になれていないから、「見る」よう彼らを仕向けるのは簡単ではない。いまの学校教育は、その効率化のために、情報は与えられるものだと生徒たちに勘違いさせている気配がある。情報は自分から取りに行くものであることをまだ知らない参加者に、複雑な自然を見てそのなかから有益な情報を選び出して掴み取らせるには工夫がいる。案内者に戦略が必要である。
▼自然への畏敬を忘れるな
自然は、教科書に書いてあるとおりにつくられていると純朴に信じている初心者が少なくない。自然は複雑であり、時々刻々変化することを知らず、些細なことが教科書に書いてあったとおりでないとか、自分の思いと違うとかを指摘して、あたかも自然が誤っているかのように思い込む初心者がいる。自分が自然の上に君臨しているかのような意識をもっているようだ。自然に対する畏敬の念を欠いたこのような参加者には、自然はひとよりもはるかに大きな存在であり、ひとは自然のなかで生かされている小さな存在であることをよく教える必要がある。自然の圧倒的なちからは受け入れざるをえないものだと気づかせる。
▼美しいものに感動する
美しいものを見て感動するこころの豊かさを参加者がもっているかどうかもも、野外観察会が成功するかどうかの鍵のひとつだ。子どもは素直だから感動できる。知的に成熟したおとなも感動できる。俗世間に染まったおとなは感動するこころを忘れてしまっているから、彼ら主体の見学会を成功させるのはむずかしい。
切り立った岩壁、縞模様を描いた火山灰の積み重なり、新緑のどんぐりの森、澄んだ水の流れ。こういうものに美しさを感じ、感動して、それを自然にことばにすることができる参加者を得た観察会は成功する。
美しいものの背後には解読されるべき自然の営みが隠されている。それは神のしわざだ。
浅間山2日バス見学の標準時刻(2009年7月)
27人のり中型バス利用。18人+引率2人。
7月30日(木)
1005-1045 中軽井沢駅
1110-1216 峰の茶屋、軽石
1222-1305 六里ヶ原休憩所、展望とランチ
1310-1550 鬼押出しDコース、溶岩
1555-1625 黒岩ロータリー
1700 草津セミナーハウス
7月31日(金)
0848 草津セミナーハウス
0920-1136 鎌原観音堂(雨天)
1145-1335 サンランド管理事務所、黒岩、ランチ、鎌原の分布限界探し
1342-1428 赤川の鎌原分布限界、「飛んだ」
1505 中軽井沢駅
第20回明るく楽しい火山学習会
第20回明るく楽しい火山学習会は、8月9日から13日まで浅間牧場でおこないます。大学生が、夏休みの自由研究のお手伝いをします。小学生のお子さまといっしょにおでかけください。
(1)コーラ噴火の研究。
(2)弁当パックで浅間山の立体模型をつくる。200円。
(3)浅間山の噴火しらべ。地質図500円。小学生用の特製手引きつき(下記)。
印刷用ファイル
(2.3MB)
浅間山の野外クエスチョン
峰の茶屋
・1783年8月の噴火で山頂火口から噴き出した軽石が2メートル近く降り積もっています。もしそのときここにいたら、人間はどうなったでしょうか。もし車の中にいたらどうだったでしょうか。
・軽石は泡だったマグマがl空中で冷えて固まったものです。大きな軽石には、赤い部分がみつかります。これは何を意味しているでしょうか。
・積み重なった軽石の中に、軽石以外の異物がみつかります。異物を分類してみましょう。分類したあと、ひとつ一つがどこから来たのか、どうやってできたか、噴火とどう関係するか、考えてみましょう。
・1783年軽石の下半分は細かい粒子からなっていて縞模様がみえますが、上半分は粗い軽石からなっていてはっきりとした縞模様はありません。下半分は約50時間、上半分は約10時間で降り積もったことがわかっています。合計60時間の噴火がどう進んだか、この軽石の積み重なりから想像してみましょう。
六里ヶ原
・小浅間山、前掛山、四阿山、草津白根山、浅間隠山がどれか確認しなさい。それぞれの山ができた年代を案内者に尋ねましょう。それぞれの山頂の高さを、地図で自分で調べなさい。
・鬼押出し溶岩をみつけなさい。
・ここが見晴らしがよいのは森がないからです。ここに森がないのはなぜか、よく考えましょう。
鬼押し出し
・山頂火口の縁にある千トン岩は、1950年9月23日のブルカノ式爆発でそこにうまくのったものです。千トン岩のある場所が、山頂火口縁一周のなかでもっとも低いところにあたります。この地形の特徴には重要な意味があります。それは何でしょうか。
・鬼押出し溶岩が山腹斜面を流れ下ったとき、昼間はどのように見えたでしょうか。夜間はどう見えたでしょうか。
・鬼押出し溶岩の表面はブロックに割れています。こんな角張ったブロックが流れてきたのでしょうか。いいえ、こんなものは流れません。では、溶岩の流れは実際にはどうだったのでしょうか。いまみえるこのブロックの積み重なりは、いつどうやってできたのでしょうか。
鎌原観音堂
・記録によると、観音堂にかけあがった93人は助かったと言います。鎌原を襲った流れがもし土石なだれではなくて火砕流だったら、93人はどうなったでしょうか。
・土石なだれに埋まった階段から、二人の女性の遺体が1979年の発掘でみつかりました。若い女の人が年配の女の人をおぶって階段を駆け上がろうとしたようにみえます。1783年8月5日の鎌原村住民が、噴火する浅間山の危険をどう感じていただろうか想像してみましょう。
浅間山の基本クエスチョン
(1) 浅間山をつくっている岩石の名前は何ですか。
(2) 浅間山の地下にあるマグマの温度はだいたいどのくらいですか。
(3) 江戸時代1783年の噴火による死者は何人ですか。
(4) その噴火によって流れ出した溶岩の名前は何ですか。
(5) その噴火によって8月5日に埋没した村の名前は何ですか?また、その流れはどのような性質のものでしたか。何と呼ばれますか。
(6) 火砕流とはどんな現象ですか。どのくらい危険ですか。その危険を避けるためにはどうすればよいですか。
(7) 浅間山は20世紀に頻繁に爆発しました。最近では2004年にも爆発しました。火山弾をたくさん放出するこのような爆発を何と呼びますか。
(8) 浅間山の火山弾は、山頂火口から何キロくらい遠くまで到達しますか。
(9) 浅間山は2万4300年前に大崩壊しました。大量の土砂が山麓に展開しました。長野原町応桑や佐久市塚原に展開した土砂の表面には小さな丘がたくさんみつけられます。このような地形を何と呼びますか。
(10) 1万5800年前の噴火は浅間山最大のものでした。このときの噴火で発生した火砕流の厚い堆積物が小諸市懐古園や万座鹿沢口駅裏の崖をつくっています。噴出したマグマの総量はどれくらいでしたか。
解答はコメント欄にあります。
第18回明るく楽しい火山学習会 浅間山9月11日
嬬恋村インタープリター会主催で、第18回明るく楽しい火山学習会を浅間山で9月11日開きます。お申し込みは、嬬恋村インタープリター会 へどうぞ。参加費は2000円です。北麓地質図つき。
9月11日(木)
0900-0930 浅間園(火山博物館)駐車場、受付ほか
0930-1140 浅間園Dコース、鬼押出し溶岩
1145-1245 各自車で浅間牧場へ移動。昼食後、数台に分乗
1250-1340 地蔵川(地点69)、追分火砕流
1350-1440 赤川土取場(地点23)、鎌原土石なだれと嬬恋軽石
1445-1515 サンランド管理事務所(地点7)、黒岩
1530 浅間牧場、解散