糸島薬局の古賀です。
10月も終わりに近づき、インフルエンザも少しずつ発生があるようです。
さて、近年、漢方薬も認知度が高まり、最近では麻黄湯もインフルエンザに効果があるとして注目を集めました。今回はその麻黄湯について。

インフルエンザへの麻黄湯の使い方は?
麻黄湯は「傷寒論」および「金匱要略」という古典書で紹介されている処方です。
さて、漢方薬には西洋医学の薬と同様に適応となる証というものがあります。この証というのは患者さんの病態・病状を判断したものです。
麻黄湯の適応証は、「表寒実証」となります。
「表」とは体の表面のこと、病邪侵された部位が皮膚でとどまっている状態の事です。「寒」とは冷えていること、寒気を感じる状態です。すなわち「表寒」は皮膚が冷えていることを意味します。
風邪を引いて熱が上がってくる過程で悪寒が走る、熱を測るとすでに38℃の高熱があるけれど、皮膚を触ってみると冷たく、自身は寒気を感じている状態が「表寒」です。
そして「実証」とは体力が充実している状態を示します。「実証」の反対は「虚証」で体力がない状態。たとえば胃腸が丈夫で、鎮痛剤で胃が荒れない人は「実証」。生理痛などで鎮痛剤を飲んで胃をやられて胃薬が手放せない、という方は「虚証」です。
麻黄湯を飲むと皮膚が温まり体温が上がります。人は感染症に罹った時の生体反応として、自分で体温を上げて、侵入してきた病原体(ウイルスや細菌)を追い出そうとします。
麻黄湯はその生体反応を手伝い、体温を上げることで効果を発揮するのです。
そのため、麻黄湯を解熱剤と一緒に使用すると、せっかく上げようとしている熱を押さえ込んでしまうことになり、麻黄湯の効果が半減します。どうしようもなく高熱できついとき以外はなるべく解熱剤は併用しないようにしましょう。
そして、麻黄湯は適応証の逆の証、すなわち「裏証」(病気が進み身体の裏に行った状態、慢性期)、「虚証」(体力がなく虚弱の状態)には原則禁忌、言いかえるなら病状が長引き衰弱している人に用いるべきではありません。
インフルエンザは麻黄湯!とブームに乗って視野を狭めずに、漢方や中医学の経験のある病院、薬局でご相談し自分の体質に合ったものを使用するようにしましょう。