吉野杉、桧の木材産地を巡る旅の合間に斑鳩の里を散策しました。
宿泊が斑鳩の里の伝統的な民家を利用した民宿ということもあり
石舞台、飛鳥寺などのんびりとした風景に癒されます。
民宿の窓から向かいの家が見えますが、黒漆喰と
虫篭窓(むしこまど)のデザインが綺麗です。
瓦屋根と共に最近改装したと思われます。
1階部の木の格子と二階の黒漆喰と白い普通の漆喰の三つの色が
自然素材で出来ているところが落ち着い風情です。
斑鳩の里地域は新たな開発が規制され
それゆえ田園風景の中に昔ながらの民家や集落が残っています。
来訪者には日常を忘れさせてくれるたたずまいが魅力ですが
民宿のおかみさんは活力がないとも言っていました。
変わらないことの良さの一面です。
近くには飛鳥寺が静かに建っています。
大仏を収納するためにやや縦長のプロポーションです。
間延びしないように水平の梁の間に蟇股(かえるまた)
と呼ばれる上からの力を受ける装飾的な構造部材が
三つあることで、正面の姿を引き締めています。
抽象化されていく大きな大仏とは違って
何処と無く親近感が沸いてくる大仏様。
京都から奈良へ向かう電車の路線沿いに沢山の文化財があります。
唐招提寺金堂はシンプルなデザインにより、何時見ても新鮮です。
屋根の最上段に水平の棟があり、四方に瓦屋根が葺き下げられた
寄棟(よせむね)屋根の美しさは類を見ません。
丸い瓦の線が綺麗に揃い、水平の棟と四方に下がる隅棟の輪郭は
全体のシルエットを引き締めています。
その屋根を支える8本の柱によって
7つの柱の間が作られていますが、その柱間(はしらま)が
中央の間から両側に行くにしたがって少しずつ狭くなっています。
それにより内部空間の中央部分の中心性が高くなり
展示される仏像の位置づけと符合しているようです。
正面から見たときに両側に広がるような水平性が強調されます。
屋根が両側に葺き下りながら反りあがり、さらに効果が高くなります。
両側の木々が無ければ、その水平性はよりわかりやすくなります。
平成の大修理を終えて、これからも受け継いでいく貴重な遺産です。
境内には高床、校倉造の経堂もあります。
日本最古の校倉造で、米蔵を改造したとも言われています。
やはり、屋根が寄棟屋根です。
近くには有名な薬師寺があり、その金堂です。
唐招提寺が鑑真和上の私寺的な佇まいであるのに対して
こちらはまさに仏教の最先端の大学といった堂々とした
入母屋(いりもや)屋根です。
寄棟屋根と三角屋根の切り妻屋根を組み合わせた屋根です。
4層の屋根、金のしゃちほこ、木部の朱色、緑色など豪華です。
東塔が大修理中でしたので、西塔を見上げながらその豪華さと共に
両手を広げて上の梁を支えるように見える組み物(升組み)
欄干、屋根を支える二重になった垂木(たるき)など
見ているだけで頭が混乱するほどの建築要素です。
当日はあいにくの雨でしたが、観光客も少なく
落ち着いてみることが出来ました。
こうした木造建築が身近にある奈良、京都は
東京が染みついた心身を開放してくれます。
どことなく、空気感が違います。
木の家づくりには欠かせない心の故郷のようです。