散り際の桜が風に舞う頃、夫は珍しい感染症にかかり、外出禁止を余儀なくされた。楽しみにしていた大学にも行けず、無邪気な笑顔が消えた。

「大丈夫だよ」

そう言って微笑む夫は、そっとアバターくんを起動した。それは彼が開発に携わったコミュニケーションロボット。大学での講義や友人との会話は、アバターくんを通して行われることになった。

画面越しに映るアバターくんは、まるで夫自身のよう。冗談を言って笑わせたり、真剣な表情で議論を交わしたり。姿は違えど、確かにそこに夫がいるのを感じた。

感染症は、愛する人を奪う残酷な病。だけど、彼の情熱と技術が生み出したアバターくんは、希望の光となって未来を照らす。たとえどんな困難が待ち受けていようとも、私たちはきっと乗り越えられる。

いつかまた、満開の桜の下で、アバターくんではなく、夫自身の手を握れる日が来ることを信じて。

野原サクラ

旦那が病気