夫の日記
今日はコロラド。全米一大きな温泉施設へ。
で、でかい。駐車場から中を見ると、縦に150メートル以上はある巨大な屋外温泉が。
日本と違って当然水着を着て入る訳で、男性更衣室でいそいそと着替える。
尤も、私はホテルで水着に着替えていたので、シャツを脱ぐだけ。
両隣ではアメリカ人のおじ様がパンツを脱いで水着に着替えている。
で、でかい、、何がとは言えないが、でかい、、
第一次日米大戦に大敗し、意気消沈しながら温泉に浸かるとそこは硫黄の匂いが立ち込め、まるで愛する草津温泉のよう。
アメリカ人が至福の顔で温泉に入っている。
ほぅ、君たちにも温泉の良さが分かるかね、
と日本代表としての誇りを取り戻した頃、キャイキャイ言いながら
アメリカ人の男女グループが横切る。
な、ながい、、足が長すぎる。骨格が違う。神様は俺の腰から下の付け方を間違えたんじゃなかろうかというくらい、こちとら足が短い。
しかし良く見てみると俺のは腰パン気味になっていた。
慌てて水着をキュッと引き上げてみるもすぐに股間に到達する。
すると、先ほど横切ったアメリカ人男性がこちらに背を向けてベンチにタオルを置いている。半ケツ状態だ。圧倒的な腰パンである。
第二次日米大戦にも大敗し、占領下に置かれた私の心であったが、
時間が経つに連れ温泉の気持ち良さに敗戦の気持ちも癒えていく。
そういえば、Mr.Childrenの桜井も、心配ないさ、時は無情な程に全てを洗い流してくれる、と歌っていた。
戦後復興への道はここからだ。2時間程温泉に入っているとお腹が減ってきたので
メインストリートに立ち並ぶレストラン街へ。
ところがどこも長蛇の列。かろうじて空きテーブルの見えたレストランに向かい、
「2人分空いてますか?」
と尋ねると、どう見ても高校生のバイトのような兄ちゃんが、
「もちろん、入りたい?」
とほざきやがった。
入りたいだぁ?配給じゃあるまいし、金払って入るんだからてめぇに入りたいかなんて言われる筋合いはねぇんだよ!レストランの入り口に立って空いてるか聞いてるんだから入る以外ねぇだろうが!
と一般の方なら憤るだろうが、こちら戦後復興の途上にあり何しろ腹が減っているため、そんな気持ちを微塵も感じさせない笑顔で、Sureと応える。
席に着くと、待てど暮らせどドリンクオーダーを取りに来ない。
テーブル毎にサービス係も決まっているため、フードオーダーを決めながら我々のテーブル担当者が来るのを待つ。
後ろの席に座っている老夫婦への対応を終え、ようやくテーブル係がやってきた。こちらも高校生に毛が生えたような兄ちゃんである。
「ドリンクオーダー良いかい?」
と聞くと、
「ごめんなさい、僕はドリンクオーダー取れないんです。あの女性担当者が来るのを待ってください。」
とほざきやがった。指差した女性担当者は1人で10テーブル以上は対応しているのであろう。こちらのやり取りに気付きもせず走り回っている。テーブル毎の担当者のみならず、メニュー毎にサービス担当者が分かれている経験は初めてである。
「じゃあフードメニュー注文しても良い?」
「すいません、それも出来ないんです」
ほぅ、中々おもしろいことを言う青年である。タキシードの正装でどう見てもテーブル係であり、その証拠に我々のテーブルに呼びもしないのにやって来たにも関わらず、ドリンクもフードの注文も取れない?
「えーと、、じゃあ君は何が出来るの?」
と尋ねると、
「僕はパンを持ってくることが出来ます」
ときた。それも圧倒的に自信を持った口振りである。
アメリカ人は何気ない一言にも圧倒的なConfidenceを持って答えるが、
これではまるで中1の英語の教科書の例文である。
「出来ます」と助動詞が入るため、主語を彼にした場合でも3単元のSは不要である。
パ、パン、、あまりに突然の空襲に防空壕に入り忘れた我々夫婦は
されるがままにしばし呆然とその青年が颯爽とパンと水を持ってくる様子を眺めていた。
その後、パンと水だけが置かれたテーブルを前にして
何分待てども、女性担当者はドリンクオーダーを取りに来ない。
気付けば後ろの席の老夫婦も同じ状況に置かれ、キョロキョロと女性担当者を探していたが、とうとう諦めパンを水と共にガツガツ食べ始めた。
おい、プライドは無いのか!?ビールさえ頼んでいない状態で
パンを水で流し込んで、、これじゃまるで捕虜じゃないか!
俺はいくら腹が減っていてもこんなパンには断じて手を付けない。
俺はサムライだ。ディナーという大戦に敗戦は許されない。
あと5分待って来なかったら店を出よう。
心に決めた私であったが、となりの席の美味しそうなポークチョップに心揺らぎ、心無しかゆっくり目に5分数える。しかし、来ない、、
とうとう席を立ち上がり帰ろうとすると、サービス係の女性がそれに気付き
「もう少しだけ待ってね!」
と上目遣いで話しかけてくる。
「これ以上待ったら日が暮れちゃうね」
と咄嗟にアメリカっぽい皮肉を言ったものの、時既に8時30分。
とうに日は暮れていた。
店を出ると路地に一軒のレストラン。大好物のカキがある。
しかもニューオリンズ発祥の店である。
「2人分空いてますか?」
「もちろんよ!すぐに準備するわ!ドリンクは何が良い??」
第三次日米大戦は引分けとしておこう。
