先日、息子との「引き継ぎ会議」がありました。
会議と言っても、私はただ座って、彼が淡々と進める説明を聞いているだけ。
彼が手にしているのは、超一流のコンサルタントが作った、非の打ちどころのない事業計画書です。
数字も、リスクも、市場予測も、完璧でした。私が30年かけて積み上げてきたものを、彼はわずか数十分で「効率化」という言葉で整理していく。
その間、彼は一度も私の目を見ませんでした。
視線は常にパソコンの画面か、手元の資料。
私は目の前に座っているのに、まるでそこに「引退した老人」という名の置き物が置いてあるかのような、そんな扱いでした。
「父さん、このやり方なら、あと10年は安泰だよ」
そう言った彼の声は、どこか遠く、冷たく響きました。
私が欲しかったのは、10年の安泰ではなく、「父さん、この会社を作った時の話、もっと聞かせてくれよ」という、たった一言だったのかもしれません。
株も、役職も、すべて譲りました。
でも、私たちは以前よりもずっと遠い存在になってしまった気がします。
一人でそんな虚しさに耐えきれず、ネットの海を彷徨っていました。
そこで、ある短い文章に出会いました。
特に宣伝されているわけでもない、地味なレポートです。
そこには、「創業者が本当に渡したいのは、数値化できない哲学や想いである」といったことが、静かなトーンで書かれていました。
それを読んだとき、私は自分の間違いに気づかされました。
私は「会社」という器を渡すことには必死でしたが、自分がこの30年、どんな想いでこの席に座ってきたかという「心」を渡す努力を、一つもしていなかったのです。
このレポートを書いた人は、私のような人間の孤独を、驚くほどよく知っている。
「完璧な環境を渡すことだけが親心ではない」という一節を読んだとき、不覚にも、パソコンの前で少しだけ鼻の奥が熱くなりました。
もし、あなたが私と同じように、完璧な計画書を前にして「何かが決定的に足りない」と感じているのなら。
このレポートを一度、読んでみてください。答えが書いてあるわけではありません。
ただ、「あなたの悩みは、あなたのせいだけではない」と、そっと肩に手を置いてくれるような、そんな内容でした。
私が、暗闇の中で見つけたものです。
同じ境遇の方に届けばいいなと思っています。
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