伊藤とカラオケに行こうという話です


コレはYahooのファン登録者のみに公開したいと思います。



「おい高昇・・・。昨日どこへ行ってたんだよ。」
昨日の悲惨な思いを高昇にぶつけながら質問した。

「いや、昨日はドコへも行ってないけど?」
高昇は少し困り気味の顔で答えた。
だいぶきつく聞いたから無理もないが
俺が電話しても「高昇は今不在です」と高昇の母親から返答されたぞ?

俺は昨日の午後2時、和泉中学校の校門付近から携帯電話で高昇宅に電話したと
不要な詳細までをも付け加え再び高昇に詰め寄った。

「あっ!」
おい・・・・。
どうした?・・・。
お前は昨日ドコへも行ってないのじゃないのか?

高昇はうつむき気味で悲しそうに黙々と話し始めた。
「えっとね、田中からの電話がしつこいの知ってるでしょ?
 会話が30分にも40分にもなるんだ。だからもう嫌で・・・。
 親に俺は居ないと答えるように頼んだんだ・・・・。」
高昇は一息入れたところで
「ホントゴメン・・・」と頭を下げてきた。

お・・・怒れねえ・・・。
理由がとんでもないことだったらマジ怒る予定だったのに・・・。
本当に申し訳なさそうに謝りながら頭を下げてくるんですもん。

「じゃあ今後女子からの電話を拒否するように親に頼んでね。」
とアドバイスしてやり、退散していきました。
「ハァー」と大きなため息をするばかりです。


高昇は田中と付き合うようになってどんよりとした性格になってしまいました。
暗いオーラが漂ってます・・・。
一度、龍二と日娑と響に高昇のことで相談してみたが
「ダメだ」と3人とも首を横に振り「そっとしておいてあげよう」と言うだけです。
高昇に元気付けさせようと話しかけても会話の途中に「死にたい」とか「生きるのに疲れた」
などと自殺願望まで達しています。

コレはヤバイ

俺は意を決して田中に話しかけることにした。
もちろんお題は高昇に付きまとわないようにということ。
「ねぇ、田中さん。高昇、最近暗いよね・・・。」
と、まず起承転結の起を持ち出した。
ココからが肝心だ。
俺は気合入れのように深く息を吸い込み、
田中のおデブは「ナニイッテンダコイツ」という表情で俺を見ています。
この表情は痛い・・・。
てっきり、「そうだね・・・。」と深刻な顔つきになると思ったのになぁ・・。
「高昇を元通りにするのにちょっと考えがあるんだけど」
「・・・」
このデブは「ほっといてくれ」という表情をしていたものの黙って俺の話を聞いていた。
「高昇をしばらくそっとしておいてあげない?」
「なんで?」
う、うーん・・・。
もちろん高昇はあなたが好きじゃないから迷惑という理由なんだけれども
ストレートに言うと流石にダメだしなぁ・・・・。
でもココは高昇のためにもストレートに言うべきなのか?
いやもう少し様子見してからにしよう。
俺は2秒ぐらいの速さで頭の中の意見を整理し、再び話し始めた。
「高昇ってさ、こんなの初めてだからあんまり慣れてないというか、
 電話も親の機嫌を損ねるようなんだ。」
「高昇が言ってるの?」
相変わらず目を見るのが恐ろしい顔で俺を見ています。
早く終わらしてぇ・・。
「う・・・うん・・・。」
そう言うと田中はとんでもない行動に出た。
「本人に聞く。」
そうぼそっと言った後勢い良く立ち上がり、
自分の巨体を苦ともせずダッシュで高昇のほうへ向かっていった。

あぁヤバイ・・・。
高昇がヤバイ・・・。
棘だらけの女だ・・・。
薔薇のようにきれいで棘があるのは許せるが
例のデブはサボテン?いや棘だらけのラフレシア?
まぁそのぐらいの最悪レベルだろう。
顔もダメだし性格はもっとダメだ。

このまま居てもどうしようもないし高昇のほうへと向かった。
田中と高昇の2人を見つけると俺は2人に見つからないように物陰からのぞき見していた。
決してストーカーなどではありませんよ?
だが第三者から見れば俺は怪しい人物意外何者でもないだろうな。

しばらく話して、田中は高昇に「じゃあね」と言い手を振りながら嬉しそうに走っていった。
高昇は小さく手を振りながら田中を見送った。
田中が見えなくなると高昇はガクッとひざをつき絶望感漂わせていた。
高昇の行動からして俺はとんでもないことをしてしまったと後悔した。
だがもう遅い。俺は謝るべく高昇のほうへと向かった。

真夏のコンクリートの熱さも気にせず高昇はまだひざをついていた。
「高昇・・・。」
高昇は顔を上げ、俺を見た。
その顔は少しやつれているのを感じそれよりも怒りが込められていた。
高昇はゆっくりと立ち上がり
「なんでこんなことしてくれたんだよ」
と怒りの感情むき出しで俺を睨みつけている。
本気で殺意を感じたね。
殺されるかと思ったよ・・・。
「俺は・・・高昇を助けたくて・・・。」

「余計なお世話だ!!!」
高昇は俺の言葉に反射的にそう怒鳴り拳を振り上げた。
「え、ちょ・・・」
何とか高昇を止めようとしたが遅く、高昇の右ストレートが俺の顔面にクリティカルヒットした。
「おおお」
と、俺は意味不明は発音をしドタッとその場に大の字のように倒れた。
倒れてから視界に入ったのは物陰から田中がこっちをぞのき見している姿だった。




もう知らねぇ

高昇にも愛想が尽いた。

仲良く恋人ごっこでもしてろ。

中学校の校門前で待っている伊藤は夏らしい薄手の格好でなんとも可愛らしい姿で待っていました。
出会ったばかりのときのガキのイメージから段々大人へと進化してるのがよくわかる。
だが、口紅つけてきたのは正直驚きを隠せなかったぞ。
なんて考えは俺がガキなだけかな?


あ、そうそう。かなりのビッグニュース。
なんと高昇に彼女が出来た。
相手はクラスのとあるデブ(名前は田中由美子)
口うるさくて見てるだけでイライラしてくる人です。
まぁ、当然おデブちゃんの田中のほうから高昇にアタック。
高昇は断るのが何と無く悪いと思うからという理由でOKしてしまった。

「うらやましいよ・・・。両思いのカップルは・・・。」
と絶望の表情を浮かべながら語ってきた。
決して両思いなどではありません。あっちが勝手に勘違いしてるだけなのです、と言っても信じてもらえず、絶望のオーラを漂わせながらどこかへ行ってしまった。

その高昇の姿を見てると、伊藤でまだ良かったと思えてくるよ。
毎日のように電話がかかり、親からも冷たい視線を送られる毎日を過ごしてると相談を受け
「じゃあ別れれば?」と親切に応えてやったのだが「なんか悪いし・・・」などと余計な優しさに縛られる高昇君でした。

決して悪くない。
あんなおデブちゃんと付き合ったって高昇の株が下がる一方だ。
現にクラスの皆からは冷たいエールが届いているだろう。

自分の気持ちを素直にいえないって哀れだよな――・・・。

うむ?
今の俺も高昇と一緒なのでは?

まぁいい。
いや、いいのか?

ひとまずそれはそっちに置いといて、
高昇が登校拒否もしくわ自殺などならないように祈るばかりです・・。



「ねぇ、今日どこ行く?」
と俺の顔を覗き込みながら質問する伊藤。
ああ、近い。この暑苦しい中で近づくんじゃない。
俺は右手で伊藤の顔をぐいっと遠のけた。
まぁとりあえず天気も良すぎるし、暑くない施設内に入りたいな。
「じゃぁさ、カラオケ行こ」
イヤだ。俺は心を許した仲間としかカラオケに行かない主義でな。
たとえ100点満点を取れる歌唱力でもお前となんか絶対ヤダネ。
「友達呼ぶから、しーちゃんも誰か呼んで」
俺の気持ちはあっさりと投げ捨てられ、自分のやりたいことだけを押し通す伊藤。
こいつ結婚とか出来るのか?
「高昇とかで良いか?」
と聞くと伊藤は携帯電話をいじりながら「それでいい」とぶっきらぼうな返事を返す。
俺の友達を「それ」ともの扱いするな。

俺も祖父から買ってもらった携帯をポケットから取り出しアドレス帳から高昇を引っ張り出し
高昇に電話をかけた。


「出てくれよぉ・・・。」

高昇はなかなかでない・・・・・。

10回ほどコールし、やっと電話がつながってくれた。

「もしもし、高昇君いますか?!」