上野の科学博物館が行なったクラウドファンディングが

目標の1億円まで9時間で到達したというニュースが有りました。

 

返礼品が科学博物館ならではのユニークなものがあったことも、

話題を呼んだ要因の一つのようです。

 

まずはめでたいというのが、率直な感想です。


 

しかし、なぜ国の施設がクラウドファンディングをするのか。

科学博物館は、日本最古の国立博物館であり、

国内外から多くの来館者を集める重要な文化施設です。

 

その科学博物館が、廊下にまであふれている収蔵物のために、

増築工事の費用を捻出する目的で一般市民からお金を集めたのです。

 

寄付とクラウドファンディングの違いは、寄付は無償であるのに対して、

クラウドファンディングは対価を得ることができるという点です。

その対価は金銭的なものや、返礼品や感謝状などの象徴的なものや、

ふるさと納税タイプのものなどがあります。


 

つまり、クラウドファンディングは、

寄付者が支援するプロジェクトに共感や関心を持ち、

その成功を願って参加するという性質を持っています。


 

科学博物館のクラウドファンディングは、

その性質を見事に活かしたものです。


 

返礼品は、科学博物館が所蔵する標本や模型などのレプリカや、

科学者やキュレーターと交流できる機会など、

科学博物館ならではのユニークなものが有りました。

 

それほど熱心なファンでもない私でも欲しくなるような返礼品です。



 

しかし、一方で、このような取り組みが必要だった背景に

国が基礎的なものを軽視しているという問題があるのでは。

 

 

科学博物館は、科学の一番根っこの部分を受け持つ博物館です。

展示するものは、自然界に存在する事象や現象や生命や物質などです。

これらは、さらに上位の研究や技術の基盤となるものです。

 

 

科学博物館がこれらを分かりやすく解説し、

体験できるようにすることは、

科学教育や科学文化の発展にとって非常に重要なことです。

 

 

科学博物館の増築費用のうち、国からの補助金は約3割。

残りの約7割は、科学博物館が自ら調達でした。

そのために企業や団体からの寄付やスポンサー契約を求め、

それでも足りない分をクラウドファウンディングで募ることになったとのこと。


 

これは、国が基礎的なものを軽視しているということなのでは。

基礎的なことがこれでは、さらに上の研究にもお金をケチっているように思われます。

科学技術立国として、その根幹を支えるものが揺らいでいるとしたら、

大丈夫かニッポンと心配になります。


 

もう一つ感じるのは、博物館が持っている隠れた魅力が、

必要に迫られてではあるけれど現れたということです。

科学博物館は、普段はあまり目立たない存在ですが、

多くの人に影響を与えています。

 

 

私自身も、子どもの頃に親に連れてきてもらいましたし、

自分の子供たちも連れてゆきました。

残念ながら誰も理系には進みませんでしたが、今でも刺激を求めて時々訪れています。

 

 

科学博物館は、私たちに科学への興味や好奇心を刺激し、

知識や感性を豊かにしてくれる場所だと感じています。

 

 

そのような場所が、自らの存在意義や価値をアピールすることで、

多くの人から支持や共感を得たということは、素晴らしいことだと思います。

 

 

ひょっとしたら、資金不足に悩むその他の施設や団体も、

同じようなことが出来るのではないかと思います。

もちろん、資金不足に陥ること自体は望ましくありませんが、

それをきっかけに自分たちの役割や貢献を見直し、

社会に発信することで、

新たな支援者やパートナーを見つける可能性を感じました。