建築関係の友人に誘われ江之浦測候所に行ってまいりました。

神奈川県は小田原市にある相模湾を一望出来る小高い丘にありました。

 そもそも測候所という名前を聞いて、なんで3000円も払って、

気象庁の一施設をわざわざ見学にでかけるんだと思っていました。

よく聞くと、写真家、杉浦博司さんが手掛けた美術館だというはなし。

お名前くらいはかすかに聞いたことがあるような気がいたしましたが、

今一つピンと来ません。

 

 午前の部の予約をとったということで、

狭く曲がりくねった旧道を車で上ってゆきます。

駐車場から坂道を登りつめても、モダンな建物が見えるわけでもなく、

どこからか移築したような古い門が見えるばかり。

 

 最初に施設の説明を聞くというのでレセプションの建物に向かいます。

そのときにやっと気づきました。

異様に長い壁が海に向かって伸びていることを。

平屋で、屋根はほぼ平坦、海に向かって右が大谷石の壁、

左側は柱が全く見えないガラスの壁

こういう建物が異様な長さで海に向かって伸びているのです。

友人などはしきりに構造的な関心を示していました。

 

 レセプションハウス(待合棟というらしい)でいただいた資料によると、

海抜百メートルの敷地に、長さ百メートルの細長い建物を

夏至の日の出方向に向けて建ててあるとのこと。

 

 そしてこの建物の下中央部あたりに、

交差する形でむき出しの厚い鉄板でできた、

幅1m×高さ2mほどのまさに筒が、

これまた冬至の日の出方向に向けて設置されています。

こうなると建物なのかただのパイプなのかわからなくなります。

 

                 配置図

 

 

 夏至日の出の方向に向かう大谷石とガラスの建物

(「夏至光揺拝100メートルギャラリー」と名前があります)

に入り、百メートルの廊下を海に向かって歩きます。

 大谷石の壁には杉浦博司さんの海の写真が展示されています。

突き当りのハンドルもないスチール製の大きなドアの外は

海が一望できるバルコニーとなっています。

 

 建物は四隅に柱があるものだという頭では理解出来ません。

片方の壁で屋根を支えられるのはわかりますが、

ここは海に面した斜面、風通しが良いのは誰でもわかります。

下から風に吹き上げられたらどうするのだ、

という声が他の見学者から上がっていました。

 左側には床から、天井までガラスしかなく、

押したり引いたりの力には対抗できないと思います。

多分ガラスの継ぎ目の部分にワイヤーがはいっていて、

吹き上げに抵抗するのではなど話す声が聞こえました。

 

 100メートルを戻り、外に出て斜面を下ると、

古美術商の顔を持つ杉浦さんが収集したと思われる、

水鉢、灯籠、鳥居、石塔、茶室などが道に沿って配置されています。

 

 先に進むと、先ほどの100メートルギャラリーの先端のテラスの下に出ます。

あのギャラリー、なんと先端が十二メートル以上も斜面から突き出ていました。

 

 鉄の箱パイプの先端付近には、

古代ローマの円形劇場を実測して再現した観客席。

その前には部厚いガラス板で床ができた舞台。

茶室の躙り口には同じくガラスの塊である沓脱ぎ石。

 

 彫刻なのか建築なのかよくわからない物を

目にしましたが、心のどこかが刺激される感じが残り、

うまく言葉には表現できませんが、

折に触れ、不思議な感じがフラッシュバックしてきそうな予感があります。

 

※スマホなしカメラも忘れましたので写真はありません「江之浦測候所」で検索するとすばらしい写真が多数アップされています。