ずいぶん以前に読んだ、東京農大の小泉武夫さんの著書に、

「煎酒」というものが紹介されていました。

 

刺身といえば今は醤油一辺倒ですが、

江戸時代初期の料理本「料理物語」には、

刺身として魚のほかに、雉、雁、鴨などの鳥類や、

タケノコ、キノコなどの刺身が紹介され、

これを醤油だけでなく、いくつかのタレを、

使い分けて食べていたそうです。

 

酢味噌、辛子酢、生姜酢、山葵酢、

などと並んでその中に「煎酒」がありました。

その作り方は、「煎酒は、鰹(削節)一升に梅干十五個二十入れ、

古酒二升、水少し、たまり入れ、

一升に煎じ漉し、冷やしてよし。」とのこと。

 

 酒にたっぷりの鰹節と梅干を入れ煮詰めて冷ます、

ということなので、そんなには難しくはなさそうです。

それでも、大量に作ってまずかったら処理に困るな、

という気がして、気にはなっていましたが、

チャレンジすることなく、今まで来てしまいました。

 

ところが最近リニューアルしたデパ地下の一角で、

瓶詰めされた煎酒を見つけました。

300mlで700円です。迷わず買い求めました。

作り方から見ればなんとなく、少し酸味のあるトロっとした

薄口しょうゆ的なイメージがありました。

 

                               (銀座 三河屋HPより)

持ち帰って、早速開けてみたところ、

質感と見た目はさらさらの薄口醤油です。

この時は刺身がなかったのですが、

ラベルの案内のとおりサラダに

ドレッシング替わりで使ってみました。

 

 口にしてみると、醤油より塩分が強くなく、

わずかな酸味があり、まろやかなうまみが

上品さを出しています。

 

これはいいや、ということで、

その後あれこれ使ってみました。

 

 他には餃子のタレとして使ってみたり、

油揚げのグリル焼き刻み葱乗せにも

使用しましたがいずれもグッドです。

 

ラベルに書かれたおすすめのイカや

白身魚の刺身にはまだ試していませんが、

淡白なものの味を邪魔しない感じですので、

きっとおいしくいただけると思います。

 

 刺身には濃い味のたまり醤油か

醤油に味醂だの油だのを加えた、

プラスアルファの濃いめのタレが

定番と思っていましたが、

まろやか路線もあることに気づかされました。

 

 ほかにもメーカーがあるかもしれないので、

あれこれ試して、我が家の新しい調味料にしたいと思っています。