京都の相国寺(しょうこくじ)に行ってきました。相国寺といってもいまいちピンときませんが、京都観光の定番金閣寺、銀閣寺はこの相国寺の山外塔頭(たっちゅう)寺院の一つなのです。

(註:本寺の境内にある末寺院。塔中とも書く。塔は墓の意で、もとは高僧が寂すると、弟子がその塔の頭(ほとり)に小庵(しょうあん)を建て、墓を守ったことに始まるー日本大百科全書より)

 地下鉄の今出川駅を降りて同志社大学の塀に沿って歩き、今出川御門の信号で左折すると正面に総門が見えます。境内を進み法堂に入ります。もちろん拝観料を払い靴を脱いでですよ。

 ここは大勢の人に法話を聞かせる場所ということで、体育館のように大きな空間が広がっており、天井にはこれまた巨大な龍が描かれています。これは幡龍図と呼ばれ中央がわずかにへこんだ直径9mほどの円形の中に描かれた龍です。堂内のどこから見ても龍と目が合い、高い天井にあるにもかかわらず、迫力を持って迫ってきます。

 

  この絵は鳴き龍とも呼ばれ所定のところで手を打つと反響音が聞こえる。(らしい)自分の時は手のたたき方が悪かったのか、反響はなしでした。これを描いたのは狩野光信という方だそうで、高いやぐらを天井近くまで組んでそのうえで作業をしたのだとかってに想像しています。当然何人かで手分けをして描いたのだと思われますが、ずっと上向きで長期間作業をしたのだと思うとほんとうにめまいがしてくるような気がします。

 これと対照的なものが、方丈室中の間にかかっている軸の観音菩薩です。大きさ畳一畳程度の大きさでしょうか、部屋の奥にかかっているのを、廊下から見るので、細かいところまでは見えず、最初はふーん程度に見ていました。

   見学廊下には拡大写真として絵の一部がありました。それでもよくわからずいたのですが、隣の人が眼鏡を上げ、顔を近づけてしげしげ眺めていましたので、なんだと思いよく見て驚愕しました。

   顔の輪郭線が妙に凸凹していると思ったら。すべて漢字の集合でした。線だけではなく面の濃淡も文字の重なりの多少によって表現され、絵全体が文字の集合体でした。その文字は観音経の経文の文字だそうで、その大きさは拡大写真で見てさえ文字通り米粒大で、一体この絵全体では何文字描かれているのかとこれまためまいがしてきます。

   これを描いたのは加藤信清という江戸時代の方だそうで、おそらく毎日毎日観音経を唱えながら作業を続けたのでしょう。とこれまた勝手に想像して、観音様にも、作者にも思わず手を合わせました。