休日の横浜中華街は混雑がひどい。人気店や有名店は外に人があふれている反面、メインの通りから一歩入ると意外と人の入っていない店、すいた店もある。

 

待つのはキライ、行列なんかとんでもないと思っている吾輩は当然空いた店に入る。どんな店に入っても大方はハズレということがなく、ごく普通のレストランでおいしく食事ができる。

たまに、なるほど暇な店のわけだと思うこともあるが、意外やいいお店にあたったときのうれしさのほうが勝るので、やはり並んでまで食事をしようとは思わない。ハズレの店も当たりの店もそうはないので、安心して空いた店に入る。入れば外から見える席に着くようにしている。なぜなら吾輩は「招き猫」だからである。

 

「客が客を呼ぶ」というのはよく言われることで。新規開店のなどの場合は、目玉商品を用意したり、先着100名様半額のようなことをやって人を集めている。中にはオペレーションをコントロールして、計画的に行列を演出している店もあるらしい。人がいれば安心して別の人が来るからだ。

 

というわけで、吾輩が通りから見えるところに座っていると、一人二人と客が入ってくる。吾輩は置物のように左手(前脚)をあげて手招きをしているわけではないが、客が次々と入ってくる。

 

 ここまでは中が見え、先にまあまともに見える客がいるから安心して次の客が入ってくると心理作用で説明がつく。だが同じようなことが、中の様子が見えないスナックのようなところでも起こるのである。

 

 水商売というくらいで、なんで今日は給料日なのに人がいないのというようなことがある。一人で飲みに行くことはないので必ず誰かと一緒であるが、今日は吾輩たちだけかなどと思っていると、ぽつりぽつりと客が現れいつの間にか、程よい込み具合になってしまう、ということがかなりある。

 

 飲んでいて次の客が来ないと出られないと聞いたことがあるが、今までそういう貸し切り状態になった経験はない。

 であるから、招き猫の置物を置くより、ハイボール一杯タダをエサに吾輩を店に呼ぶほうが安いぞ。という話を仲間内でしたら、いつも皆が来る時間よりちょっと早い時間に店に行っているだけだろうという反論があった。

 

 なるほどもっともなご意見なので、「吾輩は招き猫である」を証明するために、これからは条件を変えあれこれ検証の「実験」のためにいろいろな店に通わねばならなくなった。