産後うつになるまで⑪番外編~NIPT~
※今回は、NIPT(新型出生前診断)についてです。非常にセンシティブな検査であり、ここに書くのはきなこの個人的な考えと思いですので、そもそもNIPTについて反対の方(そのご意見も、ごもっともだと思います)は読まないでくださいませ。マイ・超絶プリティーボーイ「ゆ」を妊娠した時、きなこは37歳。高齢出産になる年齢だし、妊娠が分かってすぐ漫画「コウノドリ」を読破していたこともあって、NIPTについては早くから考えていた。これ、「考える」という時点で、お腹に来てくれた赤ちゃんを「何があっても受け入れる」ということではないのかもしれませんね。そういう覚悟がある人は、最初からNIPTなんて考えないでしょうから。きなこの産院は、NIPTの認可施設だったこともあって、受けるのはお金さえ払えば簡単(受ける前のカウンセリングもお金かかるけど)。血液検査だけでお腹の赤ちゃんのことが分かるなんて、すごい時代になったんだなあ。NIPTを受けたのは、まだ胎動が感じられなくて、つわり以外、お腹に赤ちゃんが存在しているんだという自覚があまり持てない時期。でも妊婦健診ではいつも「元気ですね~、よく動いていますね」と言われる赤ちゃん。私に母性らしい母性はまだ芽生えていなかったけれど、それでもSちゃんときなこの遺伝子が組み合わさった、何やら未知なる神秘的な生物として、私のお腹でウニョウニョとうごめいている赤ちゃん。もし……、もしこの子に何かあったら、この子を諦めて「はい次の子」って、できるのか?妊娠が分かってすぐ、胎児ネームを付けて毎日呼びかけている、この子の命。NIPTで分かる障害は3つだけ。そのうち、障害の重い13トリソミーと18トリソミーの赤ちゃんは、妊娠中に亡くなることも多いから、NIPT検査を受ける妊婦さんの多くが21トリソミー(ダウン症)の有無を念頭に置いているんじゃなかろうか。ダウン症の子どもって、小学校の時も支援クラスにいたし、身近でもお店とかで見ることがある。確かにお顔に特徴はあるけど、可愛らしくて天真爛漫で、でも生活に生涯お手伝いがいるんだよね。きなことSちゃんは今、37歳。この子が成人する頃には還暦で、そこから先も、ずーっとお世話をすることができる?そもそもきなこは、体力がある方じゃない。これから先も共働き確定で、多分それだけでヘロヘロだろうな。つわりで廃人になりかけているけど、出産後元気になったとして、障害のある子のお世話が死ぬまでできる?調べたところ、ダウン症の方の寿命は医療の発達で年々伸びて、今は60歳くらいになっているみたい。私のお腹の赤ちゃんが60歳になる頃、私たち夫婦は97歳。……うん、無理やな。もしこの子がダウン症だったら、私たちと一緒に仲良く天国に行くことはできない。どう考えても私たちの方が先にあの世に行く。そうしたら、この子は誰が助けてくれるの?少子高齢化が加速する日本で、福祉が縮小するしかないこの日本に、この子を置いて死ねる?でも、NIPTを受けたところで分かる障害は四分の一くらいで、生まれるまで分からない障害の方が多いんだよ?生まれてからも、事故や病気で障害を持つことになるかもしれない。なのに、せっかく授かった赤ちゃんを諦めることを考えていいの?(ぐるぐるぐるぐる)。考えても考えても結論は出ないので、とりあえずつわりでオエオエしている最中、カウンセリングを受けに行きました。きなこの産院は、人気のある産院で(妊娠8週くらいまでに分娩予約をしないと埋まる)、NIPTのカウンセリング体制も非常にしっかりしていた。必ず夫婦で、というのもとてもいいと思った。漫画「コウノドリ」でも描写があったけど、自分の身体に何の変化もない男性は、いまいち父親としても自覚が芽生えにくい時期でもあるもんね。そんな時期に「NIPIで、もしお腹の赤ちゃんに障害があることが分かったらどうする?」なんて、お医者さんに本気で説明されないと、「ん~、キミの考えを尊重するよ」て逃げる人も少なくないだろうから。産院では、優しい女性医師が、それはそれは丁寧に説明してくれて、カウンセリングを受ける前は「5,000円かあ。高いなあ」と思っていたのだけれど、説明が終わった時には「受けてよかった」と心底思っていた。NIPTについて考えることそのものが、赤ちゃんに失礼なんじゃないかとか考えていた私に、先生は「それは違います」と仰った。「毎回きちんと妊婦健診に来てくださって、その上で、NIPTで赤ちゃんの障害について知りたい、と考えるのは本当に赤ちゃんのことを想っているからですよ。真剣に考えれば考えるほど、悩むのは当然です」なるほどなあ、と私は深く納得しました。いや、医師が説明してくれることって、ネットで調べればほとんど全部分かることなんですよ。でも、やっぱり「お医者さん」が、私たちだけのために時間を使って、親身になって、一生懸命してくれるお話には、ネットの無機質な言葉の何倍も力がある。金額は、この事前カウンセリングと併せて16万円くらいだったかな。今、認可施設より格安で「性別も分かります!簡単!」を謳い文句にしている無認可施設もあるけど、本気でNIPTを考えている妊婦さんは、絶対に認可施設で受けた方がいいと思います。不安気な私たちに、「もし、万が一陽性だった時も、しっかりこちらでバックアップします」と伝えてくれた先生に、私は本当に感謝しているから。……で、悩みに悩んだ末、私たちは「NIPTを受ける。もし陽性だったら、諦める」という結論を出しました。最初に書いたけど、このNIPTは、どこまで行っても正解はないと思う。「命の選別」と非難する人も多いし、それはそれで本当にごもっともだと思うけど、そもそも「子どもをつくる」こと自体が親のエゴだということも言える訳で(こんな大変な時代に、君を誕生させてごめんよ、「ゆ」!でも、私とSちゃんはどうしても君に会いたかったんです)。NIPTを受けたのが、妊娠13週の時。それこそ胸が張り裂けそうな緊張感の中、私たち夫婦は産院に結果を聞きに行きました(電話連絡は不可だった)。待ち時間の間中、きなこの全身はぶるぶる震えていた。どうしよう……どうしよう、陽性だったら。諦めるって決めたけど、本当に諦められるの!?あ、呼ばれた。Sちゃんの手を握り締める。入った瞬間の先生の表情で、答えはすぐ分かった。穏やかで優しそうな初老の医師が、笑顔で微笑んでいる。「うん、問題ありませんでしたよ」検査結果「all negative(全て陰性)」の文字を見た時、ほっとして両目から涙が零れました。この結果を「良かった」と思ってしまうこと自体がエゴなのかもしれないけれど……。でも、この後の妊娠期間を、このNIPTの「陰性」をお守りにして過ごせたのは、とてもとても大きかったです。NIPTを受けようかどうか、悩んでいる妊婦さんが、もしこのブログを見てくださっていたら、私は是非お伝えしたい。受けるかどうかに答えはないし、受けた後の判断も、正解はありません。きっと赤ちゃんの数だけ、妊婦さんの数だけ悩みがある。でも、もし受けるなら、認可施設で受けるのをおすすめします。お金とは引換えにならないものが、きっとあるはずだから。