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それでは昨日の続き第三章です。
第三章「ウツゴロウと不愉快な仲間たち?」
唯達は最初の対戦相手が待つコースへ着いた。ティグランドには、
すでに対戦相手と思しき中年男が立っていた。
「おじさんが最初の対戦相手ってわけね」
「いやーよく分かりましたねー!かなり賢い動物ですねー」
「はあ?何言ってのー?」
「そうーだ!挨拶しなきゃいけませんねー!」
中年男はそう言うと唯を羽交い絞めにして顔中をベロベロと
舐め回した。
「ちょっ!やめろー!!」
唯はグーパンチで中年男を殴り飛ばした。
「何すんだ!この変態セクハラおやじー!!」
「おかしーですねー!動物はスキンシップが大好きなんです
けどねー!」
中年男は唯に殴り飛ばされた事にもめげずに自分の世界に
入り込んでいた。
「さっきから何訳わかんない事言ってんのよ!うげぇー顔中が
ベトベトでマジきもーい!もう!ムカつくぅ!」
「そうーか、分かりましたねー!この動物はしつけが出来て
いないんですねー。だからこんなに乱暴なんですねー!
いけませんねー私がーしつけてあげましょう。」
「もうーマジで頭にきたー!!かかって来なさい!
あんたなんか叩きのめしてやる!」
「そうですかー。でもーあなたの相手は、私じゃーないんですねー!」
「じゃあ、誰よ!?」
「それはー彼ですねー!」
中年男が指差す方向には、横縞のボロTシャツと短パンを
着ているやけに毛深い小柄な少年が、すでにティアップして
立っていた。
「なるほど、やる気まんまんって事ね!面白いじゃない!」
唯はそう言うと少年に近づいていった。
「でもティアップは、まだ早いんじゃない。まだオナーが・・・えっ!?」
唯は少年を見てあまりの驚きに言葉を失った。
「ウキキキ・・・」
「え!?猿じゃん!こいつ!!」
なんと少年の正体は猿だった。
「ウキッ!ウキキキーッ!ウキ!」
「彼は猿じゃないと言っていますねー」
「猿じゃないって、どー見ても猿じゃない!こいつ!」
「ウキキッウキキ!ウキキッキーウキウキッ!」
「彼は『ワイは猿や!バトルゴルファー猿や!』と言って
いますねー」
「もういい・・・。もう分かったから・・・はふー・・・やっぱ
バラエティ番組よねーこんなもんよねー・・・もう、あんたの
オナーでいいから始めましょ」
唯はあきれ果てて、怒る気力も失せていた。
「そーですか。じゃあ猿竹、お前の力を見せてやりなさい」
「ウキッ!」
バトルゴルファー猿こと猿竹は、中年男の指示を受けて
第1打のアドレスに入った。
キーン!ボールの真芯をとらえたチタンドライバーの
ショット音が響く。
「えっ!?」
とても猿が打ったとは思えないその弾道に唯は驚愕した。
そして猿竹のボールは見事にフェアウェイのベストポジションを
キープした。
「なるほど・・・。ただのお猿さんじゃないって訳ね・・・」
「ウキキキキーッウキウキウキキキーッ!」
「彼は『お前がバトルゴルファーの恐ろしさを知るのはこれからや!』
と言ってますねー」
「言ってくれるじゃない。あんたこそ後悔するわよ。
黒い炎で焦がしてあげる!」
唯は無意識にこの言葉をはっしていた。
唯にとって敵は猿竹だけではなかった。コース自体が
常識というものから逸脱していたのだ。
そのあまりにも複雑怪奇なコースが唯を苦しめた。
さらに猿竹はこの常識外れのコースを攻略するスーパーショットを
身に付けていた事により、唯は1ホール目のポイントを失った。
「ウキキキッ!!」
「彼は『口ほどにもない奴や!』と言っていますねー」
「くっ!インチキよ!こんなコース攻略できる訳無いじゃない!」
「おーやー?言いがかりですかー?でもですねー猿竹は
パーで上がってますよー」
「うっ・・・」
「どーしましたー?ギブアップして私のしつけを受けますかー?」
「冗談じゃない!次のホールは絶対に勝つわ!」
「うーん。まだ勝つ気でいるとは生意気ですねー。
いいでしょう。次のホールで決着を付けてあげましょうー」
唯は次のホールは死守する決意を固めた。
唯の予想通り、次のホールも無茶苦茶なコース設計となっていた。
「まったく!こういうコースを設計した人の頭ってどーなってるの?
ねえ奥井さん、いったい何なのこれって?」
「前のコースも、このコースも、そしてこれから挑まれるコースも
全てバトルゴルファー専用コースとなっております」
「ああ!それ聞こうと思ってたんだけど、バトルゴルファーって
何なの?」
「申し訳ありませんが、そのご質問にはお答え出来ません。
椎名様が勝ち進んで行かれましたら、自然とお分かりになる
事と思われますが」
「はあん!内緒なんだ。まっ!いいけどね。とにかくこのホールは
絶対に落とせないわ!アドバイスよろしくね奥井さん!」
「かしこまりました」
唯達がコース攻略を相談している間に、猿竹が第1打の
準備を始めた。
「よーし猿竹、このホールで決めてやりなさい」
「ウキッ!」
キーン!またしてもボールの真芯をとらえたチタンドライバーの
ショット音が響く。
猿竹の打ったボールは鋭い弾道でベストポジションをキープした。
「キキキキキッ!」
ボールの着地位置を確認した猿竹は、どうだと言わんばかりに
奇声を上げた。
唯はそんな猿竹の挑発に目もくれず、第1打のアドレスに入った。
目を閉じて精神を集中する。その時、唯の体の奥から不思議な
感覚が湧き上がってきた。
やがてそれは、鮮明なビジョンとなって唯の脳裏に映し出された。
スーパーショットの映像である。
同時に今まで感じた事が無いほどの力が全身に漲った。
「いける!」
唯は確信した。今見ている映像は、現実となってこれから
起こる事であると。
ピキーーーーン!空気を切り裂くようなショット音を発してボールは
グリーンを目指した。
ポン!という音をたててボールは2段グリーンの下方に着地した。
「ここから・・・行けぇ!!」
唯の叫びに呼応するかのように、ボールはグリーンの坂を
カップを目指して駆け上った。
「そっ、そんな!バカな・・・!?」
唯のボールの動きを見た中年男は愕然とした。
ボールはまるで意志を持っているかのように
グリーンを登りきると、今度はピンを目指してカーブしたのだ。
止まる事を知らないボールは、やがてカコン!
という音と共にカップに吸い込まれるとその動きを止めた。
「おっしゃあァ!」
唯は見事なエースで、このホールのポイントをGETした。
「これでイーブンね」
「キーッ!ウキキキキッキーーーーッ!」
「彼は『やるやないか!でも次のホールで本当の地獄を
見せたる!』と言って・・・」
「ストップ!あのさー本当に、その猿そう言ってんのー?
何か猿よか、おじさんのセリフの方が長いんだけど?」
「失礼ですねーあなた。私はー猿の事なら何でもー・・・」
「あーもういいや!うざいから、さっさと次のホール行こう。」
「くーうー!私をバカにしましたねー!絶対にしつけをして
やりますからねー!」
「はいはい。それじゃ奥井さん次のホールへ行きましょう」
「はい椎名様」
「あのさー奥井さん。その椎名様って言うのやめてくれないかな。
唯でいいよそう呼んで」
「かしこまりました。では唯様まいりましょう」
「あははははっ・・・今度は唯様ね・・・。まあいいけど・・・」
決着を付ける舞台となる最終ホールはティグランドとグリーン
以外が全て森で構成されていた。それはまるでジャングルの
中にポツンと整地された場所があるかのようであった。
「ウキキキキキキーーーーッ!!」
猿竹はこのホールに着いた頃から、異常なほどテンションが
上がり出し、奇声を発して踊り狂うような動作をした。
それを見た唯は猿竹が猿なのだという事を再認識した。
何故なら唯は今までのラウンドで、猿竹は本当は人間が
着ぐるみを着ているのではないかと考えていたからである。
本当は人間だからあんなスーパーショットが打てるのだと。
「よーしよし!猿竹そんなに嬉しいのかー!そうだな、ここは
お前のステータスコースだからなー!よーしここで、あいつに
止めを刺してやりなさい」
「ウキッ!」
「ステータスコース?ねえ奥井さんステータスコースって何なの?」
「彼らバトルゴルファー達は全員、自分の能力を最大限に
発揮する事が出来るコースを持っています。それが
ステータスコースです」
「という事はつまり・・・」
「はい。バトルゴルファー猿こと猿竹の能力は、このコースで
最大限に発揮されます。つまり今まで以上の強敵になる
という事です。」
「今まで以上の・・・」
「キキキキキキーーーーーッ!」
猿竹は唯に明らかな敵意の視線を向けると挑発の奇声を発した。
それを聞いた唯は一瞬戦慄のような感覚を受けたが、すぐに
強い闘志がそれを打ち消した。
最初はTV番組として嫌々ながらプレイしていた唯であったが、
今はゴルファーとして目の前にいる敵を倒したいという強い
意思を持って望んでいた。最早唯には同行ディレクターの
存在さえ感じなくなっていた。
「唯様、このホールは森の中に野生の猿達が生息しています。
さらに森の木々はかなり高い上に密度も濃く生えています。
ですから森にボールを打ち込んだ場合はロストする危険性が
あります。したがって、ここでの落とし場所は直接グリーンに
乗せるか、あるいはグリーンがある崖の真下という事になります。
ですがグリーンのある崖は高さが15メートルありますので、
そこからのアプローチは困難かと。」
「ありがとう。つまりワンオン以外の道は無いって事ね」
「はい」
「じゃあ方法はひとつね。でもその方が分かりやすくていいじゃん!」
唯は奥井にそう答えるとティアップして精神を集中した。
第三章は、というかプロトシナリオはこれで終わりです。
ここまで書いたところでボツ確定との報告があったのでじゃあ
もういいや!と書くの止めて18年間放置してました。
正確に言うと存在自体忘れてましたw
外付けHDDの整理していてこれと企画草案書を発見した時に
「ああ!こんなのあったねえ!懐かしい!」
って思いましたからねえ。
この続きを書く事は無いと思いますが...さきほど少しだけ続きを
書いていたら長くなるので途中まで書いて削除しました。
まあ一応ワードファイルにコピペして保存はしてあるのでいつか
気が向いたら続きをUPするかも?しれません...
という訳で「バトルゴルファー唯Ⅱ未完」です。
って少年ジャンプの打ち切りか?w