キム・ナムギルが チョン・ドヨン、オ・ウンスク、ハン・ジェドクと交わした会話(feat. 無頼漢)②



───── 続き ─────



カンヌ国際映画祭 現場


PM 06:30  これらの話に夢中になったあげく時計を見ることも忘れていた私は、「6時が過ぎたましたね?」という誰かの声を聞いてようやく時間が夕方になっていることを知った。そろそろ空腹の時間、彼らは近くの食堂に移動し夕食を食べた後。再びサナイピクチャーズオフィスに戻って、杯を傾け、押し寄せてくる対話に数々の冗談とエールと真心が行き交った夜。


ハン・ジェドク: (オフィスの照明の明るさを落として)ちょっとナムギル、「真実の部屋」として。現在、最も呼吸を合わせたい俳優は誰だ?


キム・ナムギル: 嘘じゃなく、ドヨンヌナ(姉)と他のジャンルで会いたいです。


ハン・ジェドク: 今は、映画か、恋愛か?


キム・ナムギル: 映画で~す!


ハン・ジェドク: 恋愛願望よりも、映画への欲望が上だって? それなら、質問。自分のすべてをかけるだけの女性が現れ、その女性と旅行に行くことにしたが、同じ日にチョン会長との映画のクランクインだ。映画を撮るの?(一同(笑))


キム・ナムギル: 後ろも顧みず、ドヨンヌナとクランクインしに行きます。


ハン・ジェドク: (グラスを持ち上げて)さぁ、みんなで、乾杯~!


キム・ナムギル: 女性の心は私が何とかして解きほぐすことができますが、ドヨンヌナとのクランクインは、また、いつ来るかわからないじゃないですか。


ハン・ジェドク: 生まれ変わったら、サッカー選手?映画俳優?


キム・ナムギル: サッカー選手!(一同(笑))


チョン・ドヨン: (ハン・ジェドク代表に直接に) この次に生まれたら、映画製作者?サッカー選手?


ハン・ジェドク: サッカー選手!(大爆笑)


チョン・ドヨン: やぁねぇ~ ホントに(記者に)こんなものです、ナムギルは?昨日、長いインタビューしたと聞きましたが。私はナムギルを知る前は「思慮分別がない何かとカッコつけた子」だとおもっていました。ところが、そうではないんです。むしろ考えがとても深い子なのです。恋愛もせず、変なヤツです。


キム・ナムギル: 恋愛には興味がなくなりました、ちょっともういいです。今は、演技に惹かれてたりもして。そして若い時は「愛」と「ロマンス」を混同したりしてたようです。


一同:(ポッか~ん)「愛」と「ロマンス」って、何が違うんだよ?


キム・ナムギル: う~ん … 「ロマンス」は好奇心と関連された部分であるようですが。


オ・スンウク: そうなのか?「ロマンス」は、一方的自我から始まるもので、「愛」は、他者がいる関係で成り立っている?


チョン・ドヨン: (曖昧)片想いの人?


キム・ナムギル: それとは違いますよ。


ハン・ジェドク: おい、お前、今日はずいぶんと小難しいことをぶってるが、普段通りに話せよ!(笑)


オ・スンウク:(ひらめいて、わかったというように)あぁ!ロマンスは、だから砂漠にラクダに乗って行って… 


チョン・ドヨン:(遮るように)何、今度は砂漠~  (一同(笑))


キム・ナムギル: だから...相手の単純な好奇心を愛だと勘違いする場合がありますが、これはロマンスに近いと思います。一方、「愛」は、好奇心を超える、より内密な感情という考えです。


チョン・ドヨン: そのように簡単に説明すればいいのに、なぜ、ラクダまでぇ~!(大爆笑)


キム・ナムギル: 監督、申し訳ないですが、私もラクダは、ちょっと...


オ・スンウク: わたしのロマンスはランボーなのに。ヴェルレーヌとのひどい恋が終わり、ランボーは満たされない思いを抱いて生きていくんだけど。ラクダに乗って砂漠を横断しながら孤独とも対立して。私はそれが何かロマンスのような気がする (笑)


一同: おい、何か話してるよ~


チョン・ドヨン: ナムギル、あなたは何が知りたいの?あなた自身のことよ。たとえば、占いをするとすれば、何を聞いてみたい?


キム・ナムギル: ふむ、「いつになったら、私は安らぐのでしょうか?」


チョン・ドヨン: 安らぐことは心情でしょ?それは占い師が見ることじゃないわよ


キム・ナムギル: 「いつお金をたくさん稼ぎますか?」「いつうまくいきますか?」ということを聞いてみたいかな。そんなことは私の心が楽になった後のことで。成功をしても心が貧しくて不幸な人が多いでしょ。


オ・スンウク: 占いをするとすれば、これを聞くよ。「私はいつ死にますか?」


チョン・ドヨン: (心配そうに) なぜなの、監督。


オ・スンウク: 死ぬ前まで映画もたくさん見て、漫画もたくさん読みたいからね。


チョン・ドヨン: あぁ、あのニュース見ました?自分の人生が不幸だというオーストラリアの科学者(デビッド・グドール)が安楽死を決意して、スイスに行って「ベートーベン交響曲第9番合唱」 を聴きながら目を閉じたそうです。家族や友人に「これまでありがとうございました!」別れの挨拶をして、自分が希望する音楽を聴きながら生涯を終えたのです。それを見ながら「有意義に人生を終えることもできる」と思いました。


オ・スンウク: 私もその記事を見て「私は死ぬときどんな音楽を聞くかな? 」と思ったよ。セルジオ・レオーネという私が本当に好きな監督がいたが、このかたは死ぬときウエスタンムービーを見ながら死んじゃったよ。私は自分の好きな漫画や映画を見て死にたいね。だから、いつ死ぬのかを知りたいんだよ。


AM 00:00  いつも信じて従う先輩たちの前にあって、キム・ナムギルはこの日、自分の感情をわざと隠そうとしていなかった。他人の視線から限りなく自由でいたい欲望と大衆にもっと良い人に見せたい願望との間の衝突、人の本能的な好奇心とその好奇心のために傷を与えたり、受けることになる状況に対する恐怖、演技に対する強迫欲となおさら孤独になる日常の悩みを取り出し先輩たちと交わした。人生の重要な時期を渡っているキム・ナムギルにチョン・ドヨンは、「ナムギル、私はあなたは絶えず自分の心に様々な刺激を与えて欲しい。演技の他にもね。そして考えを少し単純化する必要があると思うの。あなたの選択を信じて行かなければならないのに、考えが多くて混乱するときがあるでしょ」とあたたかいアドバイスを、オ・スンウク監督は「私はナムギルのように、過去と現在を悩んでいることは本当に良いことだと思う。アーティスト/俳優にそんなものがなければ、活力も発展もないようなものだよ」とエールを送った。ハン・ジェドク代表は何より強い無言のジェスチャーで彼の行く道に力を与えてくれた。「存在するだけで力になる先輩がいる」キム・ナムギルの言葉の実体を目の前で確認する瞬間だった。そして、その温かい姿を見守りながらキム・ナムギルという人はとても恵まれていて、彼が今抱えた悩みが、最終的に彼をとても健やかにするだろうという確信を得た。


AM 03:00  真夜中を越えて夜明けに向かう時間。パク・ソンウンが一歩遅れて合流し<無頼漢>チームは完全体になっていた。映画が公開されてから3年が経ったが、彼らのチームワークは新作封切りを控えたチームかのように熱かった。夜は深く、会話は熟し、気分は酔しれ … オフィスはしばらくカラオケに変貌したが、キム・ナムギルは、携帯電話から流れる音楽の伴奏に合わせてTOY(トイ)の <僕が君のそばにしばらくいたということを>と、ユン・ドヒョンの <道> を熱唱した。そぶりにも見せなかったが、彼の優秀な歌の実力に何度も感嘆し、<道>に込められた歌詞の一部がなんとなく彼が歩いて行く「道」に対する決意を語っているようで、何か感動的だった。これは5月のある日、午後3時から午前3時までの記録の一部である。キム・ナムギルとの12時間である。


 おぉ~ 行くべき道はまだ遠く
 辛い時間の中でも行かなければならなくて  
 
― ユン・ドヒョン <道> から 




チョン・シウ / 映画ジャーナリスト





───── おわり ─────