キム・ナムギルが チョン・ドヨン、オ・ウンスク、ハン・ジェドクと交わした会話(feat. 無頼漢)②

シネプレー
2018.6.21


<無頼漢>ポスターの下に <海賊:海に行った山賊> DVD. サナイピクチャーズオフィスに置かれた、唯一、ハジェドク代表が参加していない映画の物品である


#2 <無頼漢> 製作会社、サナイピクチャーズオフィス
PM 03:00 漢南洞(ハンナムドン)に位置するサナイピクチャーズ社オフィスは <新世界> <大虎(隻眼の虎)> <無頼漢> <検査外伝(華麗なるリベンジ)> <阿修羅>など骨太な「サナイ」映画が誕生する震源地だ。<不当取引(生き残るための3つの取引)> <犯罪との戦争:悪い奴らの全盛時代(悪い奴ら)> <ベルリン(ベルリンファイル)>プロデューサーとしても活躍したハン・ジェドク代表が、ここのオーナー。強豪の義理が以前のようではないという映画界で、ハン・ジェドク代表と彼の映画仲間たちは「サナイファミリー」という名前で集い、お互いの悩みに耳を傾けて気兼ねなく肩を寄せる。「ファミリー」が出入りするオフィスは、そのような歴史が刻まれた映画的な現場であるということだ。映画 <無頼漢>に対する愛情が格別なキム・ナムギルがここを自分の居場所として挙げたのは得てして当然のことだ。オフィスに訪問するとハン・ジェドク代表とキム・ナムギルがひそひそと話を交わしていた。ハン・ジェドク代表を「ヒョン(兄)」と呼んでいるキム・ナムギルの言葉に妙な安堵感が混ざっている。この日もキム・ナムギルは「フィット」したブラックのトレーニングウエアを着て「ジャージ聖愛者」の面目を誇った。

キム・ナムギル: 外に出ると来るところがここジェドク兄のオフィスです。私の居場所を語る際には欠かせないところです。そこにまたあの<無頼漢> ポスターが一番大きく ピタッ ‼! 

ハン・ジェドク: その下に<海賊:海に行った山賊> も小さくあるじゃん。(サナイピクチャーズオフィスに置かれた、唯一ハン・ジェドク代表が参加していない映画の物品である。)おまえがくれただろ。捨てるわけにもいかず、ホントに(笑)

キム・ナムギル: ホント いろんなことが起こる場所です。大きな仕事 <無頼漢> に出たあとジェドク兄のおかげで (チョン)ウソン兄、(ファン)ジョンミン兄らと近づけるきっかけになりました。<阿修羅>で (チュ)ジフンが入ってくる前までは、私はサナイの末っ子でしたが、うるさい末っ子が入ってきたましたよ~(笑)


遠くから聞き慣れた若々しい声が聞こえる。チョン・ドヨンである。チョン・ドヨンの登場とともに二人の男、「チョン会長の御成り!」と叫んで起立する。<無頼漢> チームの中でチョン・ドヨンは「会長」として通っている。<新世界> イ・ジュング会長に次ぐ存在という意味でつけられた、だから「愛と情熱と尊敬」を一杯込めて製作長がチョン・ドヨンに捧げた呼称である。チョン・ドヨンが <無頼漢> 出演を決めたとき、ハン・ジェドク代表とオ・スンウク監督は島山(トサン)の交差点で「万歳!」を叫んだという、彼らのチョン・ドヨン愛はどのくらい格別なのか推し量っても有り余るほどだ。


チョン・ドヨン: <無頼漢> 出演を決定し、ここサナイピクチャーズのオフィスにきましたが、エレベーターを降りてすぐの廊下の両側に、スタッフが一列にずらっと立って90度のお辞儀をしたじゃないですか、もう(あぅ)、決まり悪くて本当に(笑) そのときからずっと「チョン会長」と呼ばれています。

ハン・ジェドク: いったん会長になれば永久に会長です!

チョン・シウ: なんだかんだで時期的に<無頼漢> 3周年の集いのようですね。3年前の今頃<無頼漢>で一緒にカンヌ国際映画祭にいました。

チョン・ドヨン: あら、そうなの 3年にしかならないのね。

キム・ナムギル: (カンヌの女王)ドヨンヌナ(姉)と一緒に行ったら確かに映画祭の待遇が違ってた。競争部門ではないのに、執行委員長が直接出てきて紹介していったじゃないですか。

ハン・ジェドク: 私たちの映画に神経をうんと使ってくれた。

キム・ナムギル: <無頼漢> は私の演技人生の転機になった作品です。商業的にうまくいかなかったが、この映画に参加したスタッフも、そう、俳優たちも、そう、みんな誇りがあります。一緒にしたスタッフたちがこのような話をします。どこに行っても <無頼漢> をしたと言えば待遇がかわってくると。「俺 <無頼漢>をしたんだぞ!」と言うことがてきて胸がいっぱいです。

オ・ウンスク監督がシナリオを書いて演出した<無頼漢> は観客に会うまでに長い時間陣痛を経験した作品である。感情的に強い演技を消化しなければならない女優のキャスティングが容易でなかった。投資も順調でなかった。座礁の危機にあった <無頼漢> は、しかし作品の価値を認めたハン・ジェドク代表に会って再び息を吹き返し、イ・ジョンジェがチョン・ジェゴン役にキャスティングされ、「ひょっとして」と渡したシナリオをチョン・ドヨンが引き受けてくれたりと、光を見るようになった。しかし、これもイ・ジョンジェが負傷で降板してブレーキがかかった。この時、中心となったのがチョン・ドヨン。緊急対策会議を招集したチョン・ドヨンを中心に <無頼漢> チームは最後のボタンになるチョン・ジェゴンの確保に乗り出した。ご存知のように<無頼漢>の最後のボタンが、まさにキム・ナムギルある。

チョン・ドヨン: ナムギルは通りすがりにちょっと見たことはあったが、まともに会ったのは   <無頼漢> が初めてでした。私にはキム・ナムギルという友人は、芸能人/スター/イケメン俳優というイメージが強くありました。そのような考えを持って会ったんですが...

ハン・ジェドク: こんなおバカなお子ちゃまとは知らなかっただろ!(一同(笑))

チョン・ドヨン: ホント知らなかった。皆がそうではないですが、多くの男優たちは表面上いくつかの男らしさをコンセプト的に持っているんですよ。それが男性の間では「粋」と言うのでしょうが、私はナムギルがそのようなことを <無頼漢> で捨てることができる人なのか、一応気になりました。ジェゴンという人物は、粋とはかけ離れた人物ですから。

チョン・シウ: それで、会ってみてどうでした?

チョン・ドヨン: この子は持ってますよ、粋を!(一座(笑))会ってびっくりしました。カッコつけてる俳優ではないかと心配しましたが、そんなことは感じさせずチョン・ジェゴンになりたい一心の欲が見えてきました。私は本気が見えれば信じてやるスタイルです。「演技こうすればおかしくない?」ではなく、そのまま信じてやるのです。相手の感情を受けとめて、反対に相手が感じられるように自分の感情を明け渡して。それがまた呼吸だからです。ナムギルは、そんなこともよく知っている子なので、悩んで探していく様子を信じて見守っていたようです。

ハン・ジェドク: 私がナムギルに最初に会ったのは飲み屋だったね? オ・スンウク監督とPDがナムギルと先にあっている席でした。雰囲気がよかったら呼ぶように言って一足遅れて行ったところ、ナムギルは既に監督とPDを巻き込んでいます。私にもいきなり、「兄貴(ヒョン)」というので本気で「おまえ、狂ってんのか~」といいました(笑) ナムギルには人をささっと巻き込む能力があります。

チョン・ドヨン: どうせなら「巻き込み」しないで、「奮起して!」(一同(笑))

ハン・ジェドク: 冷静に話すとジェゴンキャラクターにふさわしい外形の奴ではありませんでした。チョン・ジェゴンのイメージはもっと疲れて汚れた刑事の感じでなければなりませんでした。それに対しナムギルは一般的なフィルムノアールの主人公とは違う雰囲気を持っていました。事実、年齢ももう少し「チャムバプ(経験等)」が必要なので迷ったが、周りのみんながそんなに悪くないって、そう言うから「こいつが、なんで?」でした(笑) ところが、実際に会ってみると年齢がわからない感じがあったんですね。ひとまず、頑是無い(幼くてまだものの是非がわからないさま)感じはなかったです。こいつ、どこか病んでそうだけど可愛さがあるから。結果的には難しい役なのに立派によくやりました。似合わない服を着ているとか、大人のまねをしている感じが全然なかったです。カッコよく似合っていました。

キム・ナムギル: だから <無頼漢> 以降に刑事の役がけっこう入ってくるが、私はできなかったんです。ジェゴンを超えることができないような気もしたし、そのイメージを壊したくないですから。

チョン・ドヨン:  共感です似たようなものに安住したくない気持ちが俳優たちにはあります。自分が上手くできること以外への新しい挑戦がしたい気持ち。





───── 続く ─────