キム・ナムギルと彼の「行きつけの漫画喫茶」で語り合った話 ①



───── 続き ─────


‐ あなたは文化芸術NGO団体「ギルストーリー」首長でもあります。「道(road)」道という意味ですね。あなたの名前にも「道」がはいったりもしています。今日は静かにギルストーリーのことを聞きたいのですが、依然としてギルストーリーの活動を積極的に知らせるのは躊躇しますか?関連の仕事については「イベントに見えないように慎重に」ということで話題をそらしたりしました。
= 名前が知られている立場なので、何かひとつをするときでも真正性に対する疑念を受けるおそれがあって控え目です。私一人ですることであれば大丈夫です。ところが、ギルストーリーは意を同じくした人たちが集まった団体です。私によって一緒に働く人々の真正性が損なわれたりイベント的に見えるのではないかと心配することがあります。一部であっても広報をためらうことがあります。


‐ なぜ、「良い影響」があるんじゃないですか?良いことは知られてもよいという意見もありますが。
= いつも言っている話ですが、私は良い人だから意味のある仕事をするのでは、決してないんですよ。どんな人が良い人か悪い人かは相対的なものなのに、私も誰かにとっては悪い人の一人かもしれないでしょう。私の意図と違って傷を与えたのです。ただしそれでも意味のある仕事をしながら努力していたら変わるのが人だと信じているところはあります。


- 人に対する信頼がありますね。
= はい。ギルストーリーも人々の認識を変えるキャンペーンです。事実、とても単純なものです。今、準備しているのは「バス案内放送」です。地方の山村に行くとバス案内放送がないところが時々あります。それで、村のおばあさんおじいさんの声を直接録音して停留所を紹介ししようとしています。そこの人達が村に感じる愛情や、自慢するようなものも盛り込むつもりです。外地から来た旅行者への情報提供の面でもいいんじゃないかと思って準備中のキャンペーンです。


‐ ささいなことなのにとても温かいですね。見逃しやすいことですが、本当に必要なものですね。
= ギルストーリーのスローガンが「小さくても偉大な動き」です。短編映画支援事業も準備しています。どうやら私は俳優なので、こちらに気持ちを持ってきたほうが挫折せずに、着実に夢を持ち続けていく方法だと思うようになりました。制作支援をして有名人と一緒に観客との対話も連携して青年監督を外に引き出す作業ですが、(ハン)ジェドク 兄(サナイピクチャーズ代表)、(チョン)ウソン 兄、(チョン)ドヨン 姉、(ユ)ジテ 兄、(ファン)ジョンミン 兄も意を集めた状況です。兄 - 姉、そちらの方に関心が多いです。私がこんなことを計画しているんですけどと話すと「一緒にするからおまえ一度準備してみろ」といわれましたよ。それが、もう一年たちますが、思ったより難しいですね。いま、関連プログラムを作り直しているところです。


‐ ふと、こんな考えをしてみました。キム・ナムギル没後、映画にないキム・ナムギルのフィルムの一片が発見されて、それが一般に公開されればどう思うかという。嬉しいでしょうか?その編集フィルムは、あなたがこの世に知られたくない演技であることもあるかもですが?
= う~ん、死後に私の非公開映像が公開されてもいいよという考えです。永遠に記憶されたい熱望なんて… インタビューで何度か言っていますが、私には遺作のロマンがあります。狂ったように没入して入魂の作品を撮ったが、事故でも何でも、何らかの理由から、そのように遺作になると、人々は私の話にもう少し深く耳を傾けてくれるかな、と思っていたんです。あっ、心配しないでください。俳優として代替不可能なキャラクターをお見せしたい気持ちの表れと考えていただければと思います。


‐ 遺作のロマンには青年の顔として記憶されたい欲望もあるでしょう。 最も美しい瞬間で止まって不滅になったジェームズ・ディーンのように。
= 若い時は早く年をとって重厚感を表現したいという思いが強かったです。最近では鏡を見て寂しくなるときがありますけど(笑) 少しでも綺麗な時期を記録されたい願望は誰にでもあるのではないですか。しかし、遺作に対する私のロマンは若さよりは演技に対する渇きにもっと近いです。


‐ そのような演技の道が自分の道に相応しいのか、悩んだことはなかったんですか。
= 演劇をしていたとき、鉄板料理専門店で皿洗いのアルバイトを6ヶ月しました。よく入る繁盛店で器が後を絶たず溜まったんです。辛いのでみんな2~3ヶ月を耐えられずやめるのに、私が6ヶ月も持ちこたえたから社長が「おまえ、それせずに料理を勉強するのはどうだ?」と言うんです。その厨房の仕事をしながら料理をかなり学びました。その技術でそのあとカンビョン(江辺)テクノマートの飲食店で補助シェフをしました。演劇では収入がいくらもないから、仕事を着実に並行したのです。そんな「私の夢に向かって行くのは贅沢なのか」という思いをたくさんしたようです。家の責任を負わなければならない義務があったわけではないですが、私がやりたいことをしていくために両親の助けになることができなかったことが心にずっと引っ掛かっていたんです。


アナログ人間だというキム・ナムギルは原稿用紙に鉛筆で濃く書くことを好む. 鉛筆のサクサク感が気持ちいい.トイレットペーパーはペン立ての代用. この男、何かを揃えて生きるスタイルではない。





───── 続く ─────