キム・ナムギルと彼の「行きつけの漫画喫茶」で語り合った話 ①

シネプレー


「A room」とは <Actor's room> つまり、 <俳優の部屋> を意味します。(キャラクターにはまって暮らす)俳優が我に帰る時を聞きたいのが、このインタビュー企画の核心です。俳優の顔の代わりにこの紙面で答えを綴ります。作品の話ではなく、俳優の考えを聞いてみようと思います。

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「自分を象徴できる空間や物がありますか?」の質問を受け取ったキム・ナムギルから回答が帰ってきたのは1週間後であった。サッカー場や漫画喫茶をよく訪れるというキム・ナムギルは自身が直接撮影した日常の痕跡を送ってきたが、よく見て一つの写真で大笑いした。テーブルの上に置かれている「ご飯と海苔」の正体は何だ。一部始終を聞いてみたら彼が最も愛情を注ぐ食事だそうだ。最近ご飯本来の味にはまっている。いつも感じるが、キム・ナムギルは予想できないところに「グイッ」と入ってきて、相手を武装解除させる能力がある。肩に力を入れない特有の親近感。もちろんこれがキム・ナムギルの魅力の神髄でないということはわかっている。ユーモアに包まれた言葉の中にしっかりとした自分の主観と所信を描くのがキム・ナムギルであることを何度かの出会いを通じて確認したからである。ユーモアを知っている人、気ままに軽いふりをしているが慎重な人、気配りが体に染み付いた人、不義をみるとカッとなる人、主流のフレームにひたすら閉じ込められたくない人、誰かを傷つけることを恐れて戦々恐々としたりする人。それがキム・ナムギルなんだと、今回の出会いを通して確認した。


漫画喫茶、お菓子を食べながらコミックに夢中になっているキム・ナムギルの痕跡


#1. キム・ナムギル、行きつけの漫画喫茶

午後2時、龍仁(ヨンイン)にある キム・ナムギル行きつけの漫画喫茶に行く道すがら。「俳優が気楽に出入りできる閉鎖的な構造の洒落た漫画喫茶なのか?」という想像は到着と同時にあっさり壊れた。ドアを開けて入るや否や襲ってくる香ばしいラーメンの匂いと、ああ、懐かしい紙の臭い。びっしり並べられている漫画本から歳月の跡が伺える。最近、流行りのカフェ型漫画喫茶ではなく、思い出を呼びおこす漫画喫茶である。客があまりいない静かな午後。帽子を目深にかぶりジャージを着た男がソファーに体を埋めてお菓子を食べながら「クスクスクス」漫画に夢中になっている。まさか?


‐(おどおど 近づいて)ナムギル 俳優 …?
=(びくっとして)いらっしゃい!


‐ 危うく見逃すところでした (笑)
=(頭をかきながら)ウハハハ. とても楽に寝転がっていましたか、私?


‐ 漫画オタクの内攻が感じられます。
= 昔から漫画喫茶が好きでした。アニメもすきですが、私は演技も漫画とアニメで勉強します。


‐ あぁ!ドラマ<善徳女王> ピダムキャラクターも漫画に触発されたとか?
= 日本の漫画 <バカボンド> と韓国コミック武侠 <熱血江湖> キャラクターをたくさん参考にしました。漫画の持っている哲学が私は本当に好きです。キャラクターたちの滑稽な表情と豊かな表現も気に入ったので。漫画に出てくるカットを見ながらアングルの勉強もします。「このアングル、この呼吸、このフルショット … これを映画でそのまま移して撮ったらどうだろうか」といつも思います。


‐ 独特なアプローチですね。多くの俳優が映画からインスピレーションを得るといいますが。
= それによってできでいるかどうかなど気をつけないといけない部分があります。実際にデビュー当初に声のトーンのため、何度も指摘されたりもしました。アニメ声優たちの声をたくさん聞いていたら、私も知らないうちに声優の発声をしてたんですね。それなのに、私は今でも演技する時、声から感じられる感性を重要視する方です。


‐ 具体的にはどのようなことですか?
=  私の演技が曖昧であると感じられるとき、同時録音技師に助言を求めたりします。同時録音技師は感情の声に集中するじゃないですか?それで、親しくなれば意見を聞いてみるんですよ。もちろん撮影のとき監督の前ではその後、同時録音技師がややもすると越権するものと誤解を招きかねないから、無言のサインで静かに対話をします。「カット」がかかると、同時録音技師の表情を伺うんです。肯定の「うなづき」信号がくれば安堵して、否定の信号を送ってくれば、再び演技のトーンをつかんでみます。撮影、照明、扮装、衣装チームとも意見をよく交わす方です。


- 現場のスタッフがあなたの友人であり師匠ですね。
= そのようです。スタッフ最年少にも意見を聞いてみています。私たちは、同じ志しを持って集まった仲間ですから。初めには大抵「いや、私がどのように…」と言っているが、親しくなれば、本音を率直に見せてくれます。良い話と思えば早く反映します。そして、末っ子の士気をあげ、助けてくれたりもします。事実、そうした意見が正しいことも多いんですよ。


キム・ナムギルが最も愛する漫画本 <スラムダンク>

しばしば取り出して見るという <るろうに剣心> DVD. 彼は漫画で演技の勉強をする.


‐ 大切にしている漫画本はなんですか?
= < スラムダンク >. 本当に名作です。チョンデマン(三井寿)が爺さん(オヤジ)(バスケ部、安西先生)の前で「しく…しく…バスケがしたい …」と嗚咽するのが、まるで「演技がとてもしたい」という感じです。そんな感性がとても好きです。


- チョンデマン キャラクターがすきなんですね。私はユンデヒョプ(仙道彰)ファンですが(笑)
= 好きなキャラクターはカンペコ(桜木花道)です。私は天才的なものよりも発展していくキャラクターに引かれます。負傷者カンペコが出場を引き止める爺さん(オヤジ)に叫んだ言葉もステキでしょ。「爺さんの栄光の時代はいつだったんだよ?国代表だったときか?俺は、今 なんだよ!」と~ あぁ。


‐ それを受けて聞きたいですね。あなたの栄光の時代はいつでありたいですか?
= ハハ。そうですねぇ。個人的には「韜光養晦とうこうようかい (自分を出さず、時を待ちながら実力を育てる)」という故事が好きです。実力であれ人間性であれ、少しずつ積み上げていくといつか良い反応を呼ぶ時があるのではないかと思いたいんです。

龍仁にあるキム・ナムギル行きつけの漫画喫茶


そういえば、キム・ナムギルはカンペコに似ている。おしゃべりで茶目っ気たっぷりで親しみやすい 一晩中つまらない冗談をやり取りすることができる近所の友達のような男。しかし、目標にしたもの(バスケ / 演技)については欲をわざと隠さずに全力を尽くして疾走する勝負師気質を光らせるキャラクター。カンペコの左手のようにキム・ナムギルにとって「ユーモアはただのガード」にすぎない。




──── 続く ────