すっかり秋めいた肌寒い空の下、スタバのコーヒーをすすっていた。

「また、ここに来ちまったなぁ」

などと小さく独り言をもらしつつ、このスタバ店外の同じ席で同じコーヒーを飲んでいた半年前を思い返していた。



場所は京都。ゴールデンウィークを利用したこの小旅行の目的は、着物に出会うため、着物を着るため。誰にも告げずに一人寂しくやってきたのには、それなりの決意の表れでもあった。

3日間を予定したこの「着物と触れ合う旅 in京都」。着物といえば京都だろ!京都へ行けば、着物なんてどこにでもあるべ!と大胆かつ安易な発想そのままに京都に乗り込んだのだった。


初日に早くも挫折を味わうこととなった。

まず、呉服屋というか着物を扱う店自体が思っていたほど多くはなかった。

そして、なにより男物の着物を専門的に売っている店が見当たらない。

てゆーか、下調べをしていない俺が悪いのだけど、それ以上にアテが外れた感を痛切に味わっていた。

「何しに来たんだ。俺は・・・・」

現実を目の前に途方に暮れていた。しょうがないので、学問の神様 北野天満宮にお参りするも気分は晴れない。さすがの菅原道真も着物は専門外だろう。


2日目。とりあえず、雑誌でみつけた呉服屋に入る。片隅にひっそりと設けられた男物の着物を見せてもらうもの、何かイマイチ。だって、なんかこう店内からして勢いを感じられないし、いかにも寂れてますって言わんばかりの品揃え。男の店員もパッとしない。着物ぐらい着てろよ!って心の中でツッコミつつ、足早に店を出た。

歩き疲れたところで見つけたスタバ。初夏を感じさせる空の下、コーヒーを飲んで一服していた。

「あー、着物なんてみんな着ないんだなぁ・・・・」

青空を見上げながら、ため息をついた。なんか自分がとてつもなくおバカさんに思えてきた。

夕飯何食おうかな、餃子の大将はもういやだな~など思いつつ、帰り道を歩いているとかなり巨大な本屋を見つけた。一縷の望みを賭けて、着物の本を探すこと20分。あった!ありましたよ。良い本が。

―キモノatキョウト― ぞんざいな名前ではあるが、痒いとこに手が届いたような嬉しい内容が盛りだくさん。その中で見つけた1件の男の着物専門店。ここっきゃないってな感じで、思わず小躍りをしてしまった。


3日目。今日は最終日。収穫なしで帰るわけには行かない。店に向かう足取りにも心なしか気合が入る。

―準備中―おしゃれな札が目にまぶしい。どうやら午後からの営業らしい。偶然にも近くにあった、昨日のスタバで時間を潰す。暇な人間だと思われていやしないかと、店員の顔を確認する。

そして、午後1時。店に入るとそこには、本で見たおじさんが粋な着物姿で挨拶してくれた。

着物への思いを熱く語る俺。今思えばちょっと恥ずかしいが、おじさんは嬉しそうに聞いてくれた。

いろんな話の中で、着物が本当にすばらしいことを改めて認識させられた。自分は間違ってなかったと勝手に納得しつつ、そして嬉しかった。

2時間ぐらいそこにいただろうか。結局、着物は買わず(すべてオーダーメイド)また来ることを約束し、そのときは必ず採寸して仕立ててくださいとおじさんに言って別れたのだった。



それから半年の月日が流れた・・・つづく

着物を着たい!

そう思ったのはいつだろうか。


たぶん小さいときから。

でも、ここへきてその思いは激しさを増してきた。26歳、男。俺。


着物を着てみたい。そして町にでたい。風になびく袂。感じる羨望の視線。

あー、すてき。


てなわけで、まずは着物を着ることを目標に、なんなら

着物を着るような仕事を夢に定め、つらつらと始めます。