恥ずかしい着物の思い出 | 着物屋さんの中の人

着物屋さんの中の人

埼玉県熊谷市にて今年で創業17年になる着物屋の店主です
毎日着物を着て店頭や街中をウロウロしております

スタッフ阿部がアルバムを作って見せてくれました。それは阿部自身が着物を着始めた時から今までの写真です。これがとても面白いです。たかが2、3年前の着物姿なのにビックリします。今では決して着ない着物やコーディネイトの数々。何故こんなにも自信満々で着ているのか、全て自分の事なのに理解できない写真も含まれています。

 

 

阿部のことを笑ってはいられません。

 

 

着物生活3ヶ月目。着物で走り回ってた頃。これは正しい木綿着物着用例かも。

 

 

私自身6年以上着物を着続けていますがスタートの3年間は木綿の着物がメインで長襦袢を着ない、タートルネックシャツ、綿の角帯に羽織無しの着流しスタイルが多かったです。

 

 

修行先の社長へ挨拶に出かけた時の写真に「小紋(絹100%着物)」「タートルネック」「綿の角帯」「柄足袋」「羽織無し」という姿が写っています。目上の方の挨拶にその格好。恥ずかしい限りです。

 

 

 

 

 

その頃を振り返れば「着物を着ること」だけで精一杯だったと思います。兎にも角にも着物姿で居続けることが重要でした。着続ける為には「楽(らく)」に着たい。楽に着る為には長襦袢なんて必要ない、メンテナンスの掛かる絹の着物なんて着てられない。ポケットが少なくてモノが持てないから大きな肩掛けバックが必須。などなど着物の不便な所を補い、新しい着物スタイルを自分が確立しようと思っていたような気がします。

 

 

その行動や姿は裏返せば「着物は不便で大変なものだよ」と世間にアピールしていたのと同じだったのかもしれません。

 

 

 

 

 

今は長襦袢を着ています。羽織も毎日付けるようになりました。足袋も白系がメインになりました。荷物は極力持たず巾着袋です。沢山の場所に着物で出掛け、沢山の着物姿を見て、何故その場所でその着物なのか、そのコーディネイトなのかを考えてきた結果、自分が「気持ち良くいられる装い」でいたいと思うようになりました。

 

 

楽に着るを突き詰めればそれは世の中の大勢の方が着られている洋服がいいと思います。コストもメンテも機能性もかないません。それでも着物を着る理由は「

気持ちいい」から。洋服姿だった時よりも圧倒的にその姿を褒めてもらえるのが着物です。褒められると気持ちいいです。

 

 

白衿にする、白足袋にする、紋付きを着る。無言でも相手への敬意を表現出来るのも着物の魅力であり気持ちよさです。展示会など大きなイベントは白足袋に紋付きの羽織でお客様をお迎えします。

 

 

季節と場所と相手を考え装い始めた瞬間から着物が楽しくなりました。夏のシルク着物は自分の為に着るものではなく、その装いを見る周りの方へ「涼」を感じてもらうための着物だとも言われます。相手を想う気持ちがその装いを作る。手間も時間も掛かる着物だからこその魅力。素敵です。

 

 

 

 

 

自身の着物姿を綴るアルバムから改めて着物との関わりを考えました。是非みなさんも着物アルバムを作ってみてはいかがですか。きっと楽しいですよ。