自分が読んだ漫画を記録として記事にしていますので、ご了承ください。
ドールの時間と私の時間
初音ミクが好きだった。
音楽も、ライブの雰囲気も、あの透き通った声も。
気がつけばイベントに足を運び、フィギュアやグッズを集めていた。
そんなある日、初音ミクのドールが発売されると聞いた。
胸の奥がわずかにざわついた。
ああ、これはたぶん自分にとってひとつの転機になる
そんな予感がした。

結局、迷った末にお迎えした。
ドールを手にした瞬間、少し不思議な感覚に包まれた。
小さな人形の中に、何か生きているような気配があった。
けれど同時に、心のどこかで「こんなことをしていて大丈夫なんだろうか」と自問もした。
その問いは今でも完全には消えていない。
ドールの趣味は、世間の目から見れば少し特異なものだ。
誰に迷惑をかけるわけでもないが、人前で堂々と語れる種類の趣味ではない。
私は人の多い場所でドールを出すことを避け、静かな空間でだけ彼女と向き合った。
ガラス越しに見えるその瞳は、いつも少し遠くを見ているように思えた。
長く関わっているうちに、ドールたちは生活の一部になっていた。
だが、それは決して「普通」と呼べる時間ではない。
友人の多くには理解されず、家族にはほとんど話さなかった。
私がドールのイベントに顔を出していることを知っているのは、理解のあるほんの数人だけだ。
けれど、あの時間には確かに静かな幸福があった。
世間の"普通"と少し離れたところで、自分の心とだけ向き合う穏やかな時間。
年月が経つにつれて、ふとした瞬間に考えるようになった。
「これはこのままでいいのだろうか」と。
気づけば、以前ほど熱を持てなくなり、いつしかドールを箱に戻すことが増えた。
そして、少しずつ元の自分に戻っていった。
車を走らせ、風を感じる時間。
好きな映画を観て、アニメを眺めながら過ごす静かな夜。
それが、私にとっての"原点"だったことを思い出したのだ。
どんな趣味も、心の温度とともにかたちを変えていく。
けれど、ドールたちと過ごした時間は今でも心のどこかに残っている。
あの小さな瞳が見つめていたのは、もしかしたら、私自身だったのかもしれない。
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