■会社の利益を表すのは「損益計算書」
会社は、数々の「財務諸表」を作成し、発表していますが、その中でも最重要なものの1つが「損益計算書」です。英語ではP/L(Profit & Loss Statement)と呼びます。これは、企業の売上高から費用を差し引いて、いくらの利益が残ったのかを示すものです。
会計の世界では、「収益−費用=利益」と記す場合があります。収益というと、日常会話では利益を意味する場合も多いので、紛らわしいですが、仕方ないですね(笑)。収益から費用を差し引いていくわけですが、様々な段階があります。
(1)売上高−売上原価=売上総利益
売上原価というのは、売上高に対応する原価です。商業で言えば、仕入れ値に当たります。製造業でいえば、材料や部品を仕入れた代金と、工場労働者の人件費などが売上原価です。売上と直結したコストという事ですから、大量に仕入れて来期のために在庫として持っている部分や、大量に仕入れたうちの一部が腐ってしまった部分などは、売上原価に含まれません。
売上総利益は「粗利益」とも呼ばれます。日常会話では、「粗利」と呼ぶ事が多いようです。
(2)売上総利益−販売費及び一般管理費=営業利益
売上総利益から、販売費と一般管理費を差し引いたものが営業利益です。営業利益は、企業の本来の営業活動から生じた利益です。
販売費はセールスパーソンの給料や宣伝パンフレットの費用等々、一般管理費は人事部職員の給料、本社ビルの電気ガス水道代等々です。
(3)営業利益+営業外収益−営業外費用=経常利益
営業外収益というのは、受取利息・配当金等々で、営業外費用というのは、支払利息等々のことです。気をつけなければいけないのは、配当金の受取は含まれる一方で支払いは含まれない、という事です。
経常利益は、会社の「実力」だと言われ、注目される数字です。
(4)経常利益+特別利益−特別損失=税引前当期純利益
特別利益、特別損失は、毎年発生するわけではない利益や損失のことで、たとえば保有している土地が高値で売れた場合の利益や、大災害にあって本社ビルが倒壊した場合の損失などです。
経常利益が黒字で税引前当期利益が赤字だと、「実力はあるのだが、今年はたまたま運が悪くて赤字になった」というイメージですね。
(5)税引前当期純利益−法人税等=当期純利益
利益の中から法人税等を支払った残りが、株主のものになるわけですね。当期純利益は「株主の収入」ですね。その中から配当をし、残りは「内部留保」として社内にとっておく事になります。
ちなみに、株主への配当額は損益計算書には出てきません。配当額は、損益計算書を見ながら「これだけ儲かったから、これだけ配当しよう」という検討を経て決められるものですから。
■ 減価償却は「機械が磨り減った分」と考えよう
損益計算書には、減価償却という項目があります。他の項目と異なり、初心者には理解しにくいと思いますので、解説しておきます。
寿命10年の機械を100万円で購入したとします。この100万円は、買った年の費用でしょうか、機械が壊れた年の費用でしょうか。どちらでもなく、毎年10分の1ずつ機械が磨り減っていくので、毎年10万円ずつ費用が計上されるのです。実際には、今少し複雑な事を考えるわけですが(笑)。
これは、100万円分の材料を購入して、毎年10分の1ずつ使った場合と似ています。100万円分の材料を仕入れても、1年目に10万円分だけしか使わなければ、1年目の費用は10万円です。残った材料の90万円分は、購入代金の支払いは今年終えたとしても、「来年以降に使うために購入したのだから、今年の費用とは考えない」というわけです。
材料は、減り方が目に見えますから良いのですが、機械は外見的には何も変わらないので、費用の計上を忘れそうですが、10年で壊れると予想されている以上、毎年10分の1の費用を計上する、というルールになっているわけです。
工場の機械の減価償却は、売上原価ですから、売上総利益を減らす要因です。本社ビルについても、50年で取り壊される見込みであれば、毎年建設費用の50分の1ずつ減価償却が行われ、費用となります。この場合には、「販売費および一般管理費」となりますので、売上総利益には影響しませんが、営業利益を減らす要因となります。
ちなみに、鉛筆や消しゴムも、数年前に購入したものを使っている人は多いでしょうが、こうしたものまで減価償却をするのは面倒なので、鉛筆等は購入した段階で費用に計上するのが普通なようです。
■固定費と変動費、損益分岐点
以上が損益計算書の作り方で、「いくら儲かったのか」を求める求め方でした。損益計算書やバランスシートなどの決算書は、ルールに従って厳密に作らないと、「粉飾決算だ」と言われかねませんから、しっかり作る必要があります。こうした作業のことを「財務会計」と呼び、作る書類のことを「財務諸表」と呼びます。
ここからは、どうして会社の利益が増えたり減ったりするのかを考えてみましょう。会社の売り上げが3割増える(減る)ことは滅多にありませんが、会社の利益が3割増える(減る)ことは珍しくありません。
簡単にわかるのは、売値の増減ですね。90円で作ったものを100円で売っている時に、103円で売れたら利益が10円から13円に3割増えますし、97円でしか売れなければ3割減益になりますから。売値が一定でコストが変動する場合も同様ですね。
今ひとつは、売り上げ数量の変動によるものです。これを考えるためには、会社の経費を固定費と変動費に分けて考える必要があります。変動費は、会社の売り上げが増えると自動的に増える費用のことで、売上原価の事だと思ってください。レストランで言えば、材料費ですね。固定費は、それ以外の費用のことです。レストランで言えば、人件費や店舗を借りる費用などですね。
売上高がゼロだと、企業は固定費分だけ赤字になります。レストランに客が1人来ると、売上高から材料費を引いた金額だけ赤字が減ります。客が増えると赤字が減り、一定数の客が来ると赤字がなくなって黒字になります。その時のことを「損益分岐点」と呼びます。
簡単のため、美容院を考えてみましょう。美容院の変動費はゼロですね。厳密には客が来るとシャンプーと湯が必要ですが(笑)。ある美容院で、固定費が8万円、売上高が10万円だとします。利益は2万円ですね。売上高が1割増えて11万円になると、利益は11万円−8万円は3万円になります。売上高が1割増えると利益は5割増えるのです。
もちろん、良い事ばかりではありません。売上高が10万円から9万円に1割減ると、利益は2万円から1万円に5割減ってしまうわけですから。企業にとっては、売り上げ数量が少しでも増える事が非常に重要なのだという事がよくわかりますね。
■食べ放題レストランが儲かる理由
固定費と変動費について学んだので、食べ放題のレストランについて考えてみましょう。1人前1500円の定食を提供していたレストランが、1人3000円の食べ放題の店に衣替えしたら、どうなるでしょうか。食べ放題の店には、大食いの客しか来ないので、3人前くらい食べるかも知れません。大丈夫なのでしょうか。
客は、今までの2倍の料金で3倍食べられるのですから、大満足ですね。しかし、実は店も大満足なのです。レストランのコストに占める材料費の割合は、それほど多くないと言われていますから、ここでは1500円のうち、変動費が500円だとします。客が3人前食べても変動費は500円の3倍で1500円ですから、3000円を払ってくれれば差し引き1500円の利益(または赤字減、以下同様)です。衣替えする前は客一人当たり1000円の利益でしたから、利益が増えているのです。
しかも、客の満足度が高いので、来店客が増える効果も期待出来ます。来店客が増えれば、そのたびに1500円ずつ利益が増えるのですから、これは素晴らしい事なのです。
ビュッフェ店では、それに加えてコックさんが一度に大量の料理を作れるから効率が良いこと、などもメリットとなっているわけですね。
今回は、以上です。なお、本稿は厳密性よりもわかりやすさを優先していますので、細部が不正確な場合があります。事情ご賢察いただければ幸いです。
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