(要旨)

■経済は難しくない。日経を読み続けていれば、次第にわかるようになる。

■わからない事は、検索する癖をつけよう

■新聞は、世の中の全体像を示しているわけではないので、要注意

■自分と違う意見を積極的に見聞きしよう

 

(本文)

経済初心者が勉強する際に役にたつものを書きたいと思い、COMEMOが稼働し始めた事もありますので、僭越ではありますが、日経初心者へのアドバイスを記してみました。少しでもお役に立てれば幸いです。

 

■経済は難しくない。日経を読み続けていれば、次第にわかるようになる。

「経済学」は、難しいです。難解な理論を理解するのは大変です。しかし、実際の経済は、私達の日常生活の積み重ね等々ですから、基本的な仕組みさえ把握しておけば、ある程度の事はわかります。まずは、怖がらずに経済記事と向き合ってみましょう。

 

もちろん、最初は日経を読んでも、ほとんどわからないでしょう。しかし、野球やサッカーのルールも知らず、セリーグやJリーグにどんなチームがあり、優勝がどう決まるのか、何もしらなければ、スポーツ新聞も日経新聞と同じくらい難しく感じるはずです。

 

そうなのです。新聞というのは、読者に基礎知識がある事を前提に書かれているのです。だから、基礎知識が無い人には、理解できないのです。しかし、わからないと言いながらもスポーツ新聞を毎日読んでいれば、自然とわかるようになるでしょう。日経も、同じです。スポーツ新聞よりは、少し手強いかも知れませんが(笑)。

 

■わからない事は、検索する癖をつけよう

幸い、今はインターネットの時代です。わからない事は、調べれば大体わかります。Jリーグの概要、サッカーのルール、といった事項を少しずつ調べて覚えていけば良いのです。もっとも、経済はスポーツよりも範囲が広いので、わからない事を調べて覚えるのが大変です。これは、頑張るしか無いでしょう。何事も、努力が肝心ですから。毎日一つでも、週末に2時間でも、ペースを決めて、日経に出てきた単語を調べて覚える習慣をつけましょう。

 

まずは、単純な知識を増やしましょう。トヨタという会社は、誰でも知っていますが、日産やホンダと比べて、どちらがどれくらい大きく、どちらが儲かっているのでしょうか?今の株価の動きは日経電子版で時々刻々とわかりますが、過去の株価はどのように上下して来たのでしょう?「株価が昨日より上がった」として、史上最高値なのでしょうか?昨日が市場最安値だったので今日は史上2番目の安値なのでしょうか?

 

次に、経済関係のルールや仕組みを学びましょう。経常利益って何でしょう?経常収支って何でしょう?株式会社って何でしょう?企業の倒産って何でしょう?日経平均株価って何でしょう?これは、単なる事実よりは少し難しいですね。でも、検索すれば、ある程度の事はわかるでしょう。

 

難しいのは、どうすれば会社は儲かるのか?どういう時に株価は上がるのか?どういう時に景気は良くなるのか?といった経済が動く仕組みです。色々な人が色々な事を言っているので、検索しても混乱するだけかも知れませんが、色々な意見を聞いて、自分なりの理解をしていく事が必要でしょう。筆者も、様々な機会に経済が動く仕組みを解説して行きますので、参考にしていただければ幸いです。

 

■新聞は、世の中の全体像を示しているわけではないので、要注意

日経新聞の内容が何となく理解出来るようになってきたら、今度は日経新聞から何を学べるのかを考えてみましょう。重要なことは、世の中の出来事で、日経に載っているのは、ごく一部の切り取られた情報だ、という事です。どのように切り取られているのかを理解しておかないと、世の中の全体像を想像する事が出来ませんから、気をつけましょう。

 

まず、新聞には珍しい事しか載りません。「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛んだらニュース」なのです。たとえば、頑張って農産物を輸出する事に成功した農家の話は、ニュースになりやすい題材です。それは、珍しいからです。「日本の農業は競争力が弱い」という事を皆が知っているので、話題性があるのです。しかし、経済初心者は「日本の農業は競争力が強い」と誤った理解をしてしまう可能性があります。しばらく日経を読み続ければ、「常識」が身について来ますが、それまでは、気をつけましょう。

 

新聞は、社会の公器であると同時に、株式会社の金儲けの手段でもありますから、やはり売れなければ困ります。そこで、読者が興味を持ちそうなニュースが大きく取り扱われる事になります。今年前半の経済ニュースは、東芝関係が圧倒的な存在感でしたが、それは東芝が粉飾をしていて倒産しそうだからです。東芝が仮に倒産すれば、従業員や株主はもちろん、取引先等にも多大な影響がありますから、当事者の関心は高いはずです。従って、東芝関係のニュースを採り上げれば新聞が売れます(電子版が読まれます)。

 

しかし、気をつけましょう。東芝は有名な大企業ですが、それでも日本経済に占めるウエイトは、従業員数で見ても売上高で見ても、僅かなものです。日本経済全体としては、比較的好調で、企業収益も決して悪く無いのですが、そうしたニュースは東芝の陰に隠れてしまっているので、見えにくいのです。時々「上場企業の決算は・・・」「政府が景気判断を・・・」と言った記事が出た時に、「そうなんだ。東芝以外は悪くないんだ」という事に気付きましょう。本当は、東芝の記事を読んだ時に、「東芝以外の会社はどうなのだろう?」と考えてみる事が理想なのですが、言うは易く行うは難し、ですね。

 

また、困っている人のニュースは、興味を持たれやすいので、頻繁に登場します。「農産物の輸入自由化反対」というデモが行なわれると、ニュースになります。たしかに、農家にとっては死活問題ですから、デモをするのはわかります。しかし、それだけ読んでいると、日本経済に大打撃が加わるように(誤って)感じるかも知れません。実は輸入農産物を安く食べられる一般国民の利益の事も考えると、日本経済にはプラスかも知れないのです。

 

■自分と違う意見を積極的に見聞きしよう

日経は、比較的中立ですから、あまり気にする事はありませんが、マスコミによっては会社の考え方が比較的明確で、その方向に読者を誘導しようという意図が感じられる事もあります。読者として、これを見抜くのは困難ですが、慣れてきたら、普段読んでいない新聞にも時々目を通す事は有益かも知れません。

 

日経にも、癖が全く無いわけではありません。今回始まった「COMEMO」は、記事に対する様々な人のコメントが読めるので、日経とは違う考え方もあるのだ、という事に気づく良いチャンスかも知れません。その上で、読者がどちらを支持するのか、ゆっくり考えれば良いでしょう。

 

気をつけたいのが、読者自身の考え方が固まってしまう可能性です。自分と似たような考え方をする人のコメントには目を通すが、自分と異なる(あるいは自分の支持している考え方を攻撃するような)コメントは読まない、という人も多いのですが、そうなると右の人は一層右に、左の人は一層左に傾いていき、中立的な物の見方が出来なくなってしまいます。そうならないように、両方の意見を公平に聞くように心がけたいものです。

 

以上、いろいろ書きましたが、日経初心者の皆様には、記事を数多く読む事はもちろん、それ以外にも色々な物を読んで学んでいただければと思います。手始めに、読むべきは、もちろん拙稿「経済情報の捉え方」です(笑)。

http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12149245775.html

 

(おまけ)

直感は重要です。膨大なデータの中から瞬時に「正しい確率が高そうな情報」を選び出すのですから。しかし、直感に頼ると時として間違えますから、慎重さも重要です。冒頭のグラフは、Aが1から2に100%増え、Bが10から19に90%増え、Cが10から18に80%増えているので、増加率はAが一番高いのですが、そうは見えませんよね(笑)。

 

P.S.

最後に宣伝です(笑)