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大学の就職責任者として、というよりは、元サラリーマンとして、就活を終えた学生へのアドバイスです。若手サラリーマンにもお読みいただければ幸いです。

■終身雇用は、未だに日本企業の大原則
まずは、就活お疲れさま、そして内定おめでとう。日本企業の大原則は、終身雇用だ。最近は少しずつ変化し始めているようだが、終身雇用が大原則であることは変わりないし、将来も変わらないだろう。

したがって、原則としては、君は定年まで内定先に勤めることになる。御縁を得て入社するのだから、古臭いようだが「会社は家族」だと思って周囲との関係も上手くこなすように心がけよう。

会社が発展するか否か、職場環境が良好か否か、配属先や転勤先がどんな所か、自分では決められない事も多い。自分が努力しても不幸になるサラリーマンは決して少なくない。しかし、大原則としては、就職というのは人生を企業に預ける(捧げる必要はないが)ものだ、と考えておこう。

■転職の可能性も頭の片隅に
昔と比べると、終身雇用が緩んできていることも間違いない。昔から、中小企業では大企業ほど終身雇用が厳格ではなかったが、最近では大企業もリストラがあり、自発的な転職あり、例外が増えている。今後も、傾向としてはリストラも転職も増加していくと考えておいた方が良いであろう。理由は二つ考えられる。

第一は、リストラや転職が珍しくなくなると、リストラや転職に対する心理的なハードルが下がることである。日本の大企業では、高度成長期にはリストラも転職も稀であった。そんな中で、高度成長期に初めてリストラを実施した大企業は、世間からも社員からも非常に叩かれて大変な思いをしたはずであるが、2社目以降は少しずつ叩かれ方が緩くなってきたはずである。

転職も同様である。高度成長期に転職しようとすると、周囲から「何故だ?」「やめておけ」という強い声を受け、大変な思いをしたはずであるが、2人目からは少しずつ楽になっていったはずである。

余談であるが、離婚についても同様のことが言えそうだ。高度成長期には、女性はサラリーマンと結婚すると専業主婦になるのが普通だったので、結婚の事を「永久就職」と呼ぶ人もいたようであるが、今では就職も結婚も永久とは限らなくなっているわけである。

転職が増加していくと考える第二の理由としては、少子高齢化による労働力不足が挙げられる。今まで転職が少なかったのは、会社への忠誠心などと並んで「転職先が見つからない」という理由もあったはずである。すべての大企業が終身雇用制を採用しているならば、大企業は原則として中途採用を行わないはずだからである。

しかし今後は、大企業といえども中途採用をしないと労働力不足が深刻化してしまう。従って、大企業の社員が他の大企業に転職しようと考えた場合、従来よりも容易に見つけることが出来るようになるからである。

そうした事を考えると、君が大企業に就職するとしても、将来転職をする可能性は決してゼロではない。むしろ、ある程度の確率で起こり得ると考えておいた方が良いかもしれない。就職先が中小企業であれば、なおさらだ。

■仕事を真面目にやる事が転職の王道
転職するとなると、即戦力としての採用となる。新卒採用が「ポテンシャル採用(鍛えれば使い物になるか否かで判断)」なのとは異なり、明日から役に立つか否かで判断されるわけである。明日から役に立つか否かを判断する際、最も重要なのは、「今の会社で役に立っているか」である。

つまり、今の会社の経理部なり営業部なりでしっかり働いていれば、そしてそれなりに周囲の評価も得られていれば、他社が欲しがる人材であると言えよう。会社が倒産した場合などは、ライバル会社が人材を拾いにくるのだが、その際に真っ先に拾われるのが社内で「仕事が出来る」と思われていた人なのだ。

転職のために「自分磨き」に励む人は多いが、それは同時に現在の職場で一層輝けるためのものである事が望ましい。現在の仕事を犠牲にしてまで手に職を付けることを重視するのは、あまり賛成できない。仕事に余裕がある場合には、あるいは今の職場で活躍の可能性が無いような場合には、話は別であるが。

■辞表提出は転職先を確保してから
サラリーマンは、辛いことも多い。上司と喧嘩して辞表を叩きつけた、といった話もしばしば耳にする。ただ、一つだけ絶対に覚えておいて欲しいのは、「辞表を叩きつけるのは、転職先が見つかった後にしろ」という事だ。

不思議な事に、日本の大企業は、中途採用をする場合であっても、他社からの転職を受け入れるだけで、無職や非正規労働者の採用は滅多に行わない。従って、一度辞表が受理されて無職あるいは非正規労働者になると、他の大企業に中途採用される可能性が大きく減じるのである。
転職先が中小企業であっても、程度の差こそあれ、他社からの転職の方が非正規労働者を採用するより遥かに優遇される。不思議な事ではあるが、それが現実だ、という事だけは、頭に血が上った時にも忘れないでいて欲しいものである。

【参考記事】
■就活の手を抜くと、過去の自分を恨んで生きる事になる(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48827988-20160614.html
■銀行という職場の体験記(1)(塚崎公義)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12149636451.html
■大学教授が教える、本当に役に立つ就活テクニック(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48796600-20160609.html
■就活は企業との相性だから、落ちる以上に受けるべし(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48827663-20160613.html
■就活生の保護者は、一歩下がって伴走すべき (塚崎公義)
http://sharescafe.net/48838747-20160615.html



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