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黒田日銀総裁が、今朝(2016年6月21日)のテレビ(テレビ東京のNewsモーニングサテライト)で、アマルティア・センの論文について話していたので、読んでみました。
『合理的な愚か者』の第一章「パレート派リベラルの不可能性(1970)」です。
結論は、「皆の希望を聞くと、皆にとって不幸な結果(パレート最適ではない結果)になる」、というものでした。

日本に憧れ、フランスは普通、中国が嫌いなフランス人がいるとする。
フランスに憧れ、中国は普通、日本が嫌いな中国人がいるとする。
二人が結婚する場合、どこに住むべきか。
夫婦は平等であるから、御互いに一回だけ、「どちらに住みたいか」を決める権利がある。
その際、フランスに住むべきか否かは、フランス人に決めさせるべきであろう。
中国に住むべきか否かは、中国人に決めさせるべきであろう。
そこで、二人に「母国に住むか日本に住むか」を聞いてみる。
フランス人に「フランスか日本か」を選ばせると、日本を選ぶ。
中国人に「中国か日本か」を選ばせると、中国を選ぶ。
二人とも「中国よりはフランスがマシ」だと考えているのに、結果として中国に住むことになるのである。

以上です。

ちなみに、パレート最適については、以下をご参照。


学生:パレート効率性、パレート最適とは、どのようなものですか?

教授:どちらも同じものなのだが、それについて考える前に、君が総理大臣だとして、国民の誰かが今よりも幸せになるように、経済を変えてみせなさい。ただし、一人でも今より不幸になる人がいてはダメだぞ。

学生:コンビニが廃棄している売れ残り食品を、貧しい人々に分けてあげました。

教授:よろしい。誰も不幸にならずに、貧しい人々が幸福になったので、合格。

学生:ミカン村からリンゴ村にミカンを運び、リンゴ村のリンゴをミカン村に運びました。ミカン村の人々は、ミカンを食べ飽きていたので、リンゴが食べられて満足しました。リンゴ村の人も同じです。

教授:よろしい。誰も不幸にならずに、人々が幸福になったので、合格。

学生:10万円儲かっている工場が、公害を出して周囲に100万円分の迷惑をかけていたので、操業を止めさせました。

教授:外部経済、外部不経済の時に出て来た事例だな。外部不経済の事例では、工場の操業を停止するのが正解だったな。
  同じ事例を今回も用いることは構わないが、今回は操業停止はダメだ。公害を出していた工場が、操業を止めたら以前より不幸になってしまう。

学生:公害企業の操業を停止してはいけないなんて、ヒドいですね。でも教授の命令ですから、工夫してみました。公害の被害者たちがお金を20万円出し合って、公害企業に操業を止めてもらいました。

教授:よろしい。被害者たちは、金を出しても公害が無くって以前よりは幸せ(不幸が少ない)になったのだな。工場は、金をもらったので操業を停止しても以前より幸せになったのだな。それならば、皆が以前より幸せになったので、合格。

学生:公害企業が罰金を払うのではなくて金を受け取るなんて、正義ではないのに、良いのですか?

教授:たしかに正義の考え方からは疑問に思うかもしれないが、私の要求には従っているから、それで良いのだ。

学生:金持ちから税金をとって貧乏人に分けてあげたいのですが、金持ちが不幸になるからダメなのですよね?

教授:そうだ。金持ちが1万円失って貧乏人が1万円受け取ると、両者の合計の幸せ度合いが上がると考える人が多いようだが、そんな事を証明もせずに勝手に決めてはいけない。
  「人間は、1万円失う悲しみの方が1万円儲かる喜びより大きい」という心理学者もいるらしいぞ。
  「そもそも金持ちは、金への執着が強いから金持ちになったので、金持ちにとっては1万円を失うことは非常に辛いことだ」という人もいる(かもしれない)ぞ。

学生:そうだとしたら、もう出来ることはありません。

教授:素晴らしい。君はパレート効率性(または最適)を作り出したのだ。「誰かを不幸にすることなく、誰かを幸せに出来るなら、そうしなさい。それが出来ないなら、その状態をパレート効率性(または最適)と呼びなさい」というのがパレート先生の教えだから、よく覚えておきなさい。

学生:有難うございました。よくわかりました。





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