日米間で、「円相場が無秩序だから介入もあり得る」という日本と「円相場は無秩序とは言えないから介入は認められない」という米国の対立があるようです。もっとも、それほど真剣な議論があったとは報道されていないので、日米ともに選挙を控えているタイミングなので、「一応発言しておこう」ことなのだと思います。

そもそも、年初来の為替レートの動きは、無秩序と言えるでしょうか?変動相場制に移行してからの円相場のグラフを見ると、とても大幅かつ急激な変動が何度も起きています。そもそも変動相場制下の為替レートというものは、大幅かつ急激な変動が起こりやすいものなのです。それは、市場参加者の思惑(および投機家たちによる増幅)があるからです。
変動相場制とはそういう物だと思いながら年初来の為替レートを見ると、別に無秩序だとは感じられません。

今ひとつ、円高で何が困るのかを考えてみましょう。貿易収支は概ね均衡していますから、円高で輸出企業が損する金額と円安で輸入企業が儲かる金額は概ね同額です。
円高で輸出企業の競争力が低下して輸出数量が減るのであれば、それは景気にマイナスですから、円高を阻止するインセンティブになり得るでしょう。しかし、アベノミクスによる円安(80円から120円)で輸出数量が増えなかったところを見ると、多少の円高(120円から110円)では輸出数量は減らないでしょう。

株式市場は、為替レートの変動に敏感に反応する場合も多いですから、円高になると株安になることは充分に考えられます。しかし、「円高だと、実体経済には影響が無いが、株価が暴落すると困るので、為替介入したい」という事では、到底諸外国を説得することは出来ないでしょう。

1ドルが100円を割り込むような事は避けるとしても、そうでなければ介入は考えにくいと思います。せいぜい、口先介入で急激な円高のスピードを抑える、といった程度ではないでしょうか。

P.S.
ちなみに、300円が290円になったのと120円が110円になったのでは、「10円の円高」の意味が違いますから、グラフを見る時には注意して見る必要があります。本当は、対数目盛りのグラフを見るべきなのですが、そうでない場合には、何%の円高か、考えながらグラフを見る必要があるのです。

P.S.
私は、為替レートを投機の対象にしないような仕組みが必要だと考えていますが、国際的には為替レートは自由に動けることが重要だと考える人が多いようなので、仕方ないですね。

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