葬儀には多くの友人たちが集まってくれた。


ユン先生は、ジスとアナを連れだって。


ソンへさんの娘さん家族、

アオイさん、ホスピスのスタッフ。

海上タクシーの運転手さんも。

帽子の女の子の両親も。



最後に聞いていた終いの彼女のお願い。


『ドレスと、タキシードはずっと飾っていてほしい。

私はきっとそこにいるから』


見送りが終わって、火葬もした。

あの部屋に飾っていた全部の絵と写真とハガキも全部一緒に。


「魔除け?

それどういう意味です?」


「……この絵は魔除けになるって、祈里が言ったんだよ。」


「は?」

ナムジュナの中ではあの絵は最高傑作?らしい。

燃やしてしまうことに躊躇した。


「……でも、祈里さんがそうしたいなら。

また書けばいいですしね。」


「ㅋㅋㅋㅋㅋㅋ」


「なんで、そんなに笑うんですか?」

わかってないところが、また笑える。



……すべてが終わって、やっと、結んでいたネクタイを緩めた。


広間に行って、ドレスとタキシードの前に胡坐をかいて座る。


両手を後ろに下して、少し見上げるように飾られているそれを眺めた。


『……私はきっとそこにいるから。』


「……フッ」

少し酔っていたせいもあって、何故か笑いが漏れた。






『何が可笑しいんです?』

彼女の声が聞こえた気がした。


「……一人に、なってしまったなと思って。」


『……一人じゃないじゃないですか?』


「……」


『……村雨さんも、先生も、ユナさんも、ナナさん、ソナさん、ミヨンさんに、オードリー、ユン先生、ジス君、アナちゃん、アオイさん、みんな傍にいてくれているじゃないですか?』


「……君がいない」


『……ここにいますよ』


「俺の幻聴と幻想だよ。」


『……ちゃんと、見てください。前。』


視線をドレスに移す。

幻聴と幻想。


ぼやーっとそこに君がいるように見えた。


『見えませんか?』


「見えてるよ。」


『……言いましたでしょ?

私はきっと、ここにいるからって』


「……そうだな。」


両頬にひんやりと何かが触れている。

靄のようなぼやーっと見えていた君が両手で俺の頬を包んでいた。


『……大丈夫。

私はいつもここで、あなたを。

皆さんを見てますから。


寂しくなったら、ここに来てください。』

そう言って、笑っている顔が見える。


視界が歪んで見えてきたのは、涙が溜まってきていたから。

ポトンと一粒、涙が落ちた時、見えていた君は消えて行った。


「…………」