……来ないでと言われた。


翌日。

来ないでと言われたことに、少なからずショックを受けていた。

近づけたと思ったことに浮かれすぎて、勇み足になった。


……ソンへさんからの手紙。

ツギハギの手紙を何度も読み返していた。

宿の床にただただ、ゴロゴロとして過ごす。


今日の船で、帰らなくちゃ行けない。

手紙を書いた。

一緒に海に行けて良かったと。

……女の子のことは、残念だったけど、とか……


それでも、病気の痛みや辛さから解放されたことは、良かったんじゃないかとか……


まとまりのない、文言や絵を並べた。

封筒に便箋をしまって、自然とため息が漏れた。


彼女の傍にいたい。

居させて欲しい。


この本心はまだ書けないでいる。

手紙じゃなくて、昨日直接伝えて置けば良かった。


……手紙だけでも、置いて行こうとアオイさんのところに向かった。


丁度お昼間近、ホスピスでは庭の一角で入居者と家族で、食事を取り亡くなった女の子を弔うところだった。

見渡すもそこに祈里の姿がない。


「……ご一緒にどうですか?」

アオイさんにそう言われたものの、祈里の姿がないことが気になった。


「……海に行かれてるんですよ。」


「……?」


「亡くなったあの子、祈里さんによく懐いていて、

二人で一緒にあの海に行くことが多かったんです。


……どちらかが先に行くかもしれないから、

その時が来た時のために、お手紙を二人とも遺されていて、


多分、おひとりでそれを読みたかったんだと思います。」


「…………」


「それと。」


「それと?」


「船のお時間がまもなくでしょう?


顔を見たくない、会いたくないと言っていても、

毎回あそこに行かれていましたよ。


船の行き来がよく見えるんです。


……お手紙は直接お渡しになったらいいんじゃないですか?」