ペンを手に取って、窓の外に視線を向ける。


過去を振り返って、詠む君は、いつも笑顔だった。




…あれから、毎日のように島に足を運んだ。

会ってはくれなくても、何通も何通も手紙と絵は送り続けた。



悪いのは君じゃない。

間違ったのは、俺自身。

それを許して欲しいとは言わない。

…ただ、どうか最後は1人で逝って欲しくない。





あの日、担当医から聞かされた、彼女のこと。


もう、どちらかを取る、そんな選択肢を迫られている状況だと、ユナは聞かされて、それを話にきた。


もう、放っては置けないからと。


彼女はきっと、自分よりもお腹の子供のことを優先するに決まっている。


その意志を尊重するのか、どうするのか、

本人も含めて、決めなくてはならなかった。


彼女は、思った通り…

自分よりもお腹の子供を優先して欲しいと言った。

その場は、それを受け入れた。


けれども、いざその時が来た時…


選択に躊躇した。

瀕死の我が子、まだ助かる見込みのあった彼女。


…俺は、彼女の意志を尊重するつもりだったのに、助かる見込みのある方を取った。


ユナは言った。

…これで良かったんだと。


珍しく、俺の答えに納得して、手術に挑んでくれた。


彼女はしきりに、『自分のところに来たせいで、生まれられないなんてことはしたくない。この子は、命に変えても、守りたい。

私はどうなってもいい。』

そう言って、涙ながらに笑っていたのに…

ソンへさんの話から、自分がいなくなったとしても、家族や友人がいる。頼れる人たちがいるからとそう思っていたのに。


術後の説明時に、手術に出頭したユナはこと細かく彼女を納得させようと説明を繰り返した。


けれども、彼女は受け入れなかった。

可能性が0でなかったのなら、自分の意志をなぜ聞き入れてくれなかったのか、なぜ約束を破ったのか…


そのうちに、彼女は自虐行為に走るようになった。

手首や喉元、至る所に傷が増えて行った。

薬も、手に取れれば口にすることも増えて行った。


……動けないように、落ち着くまで、ベッドに拘束することも増えて行った。


そんな中、ナムジュナが『これでは彼女が可哀想で。…もう解放してあげたかった』と、あの夜、拘束を解いた。


そして、多分その時ホスピスのことを話したんだと思う。


…家を出る前に、俺を殺していくつもりだった。


でも、それを俺が受け入れようとした時、彼女は締め付けていた手の力を抜いた。

殺せなかった…

憎くて、憎くてしょうがないはずの俺を…